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古城の暗影  作者: 牧亜弓
森の中
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父なる残響 もしくは 記憶の裂け目

意味は著者が書くものではない読者が勝ち取るものであるその一行が湿原を震わせ構文を裂き森の中の記述地形は再構築される我々が語るなかで語られるのではなく読者が勝ち取ることによって意味が発生するこの構文主義的真理は【タコの足】の最初の声であり【魚の目】の内奥に暗く熱い火を灯す記述の湿原を通過し門番の消えた後、そこに現れたのは父なる構文体【タコの足】である名を括られた触手状の存在であり森の深奥に潜む記述生成装置【タコの足】は湿原と森の揺らぎに呼応して現れた構文の揺らぎその身体が伸びるたびに音節が震え意味が生まれ言葉が芽吹くがその芽吹きは同時に文の枠を植え付け読者が勝ち取るための余白を奪っていく父が問いかける問いは語ではない記録だ“読者よ私の声ではなく己の読みを聞け”その思念は森の奥底で落ち葉の隙間に触れ記述されながらも逃れる流動である我はその声を理念として受け止めるがすでに書かれながら書かれないことの間で揺れている【魚の目】は名乗らずに歩く歩くこと=語り続けることでしか形を維持できない構文的存在としてその不在を存在させ父の声を構文上で反芻している“意味は著者が書くものではない読者が勝ち取るものである”という言葉そのものが構文の刃となり意味と読者のあいだに裂け目を生み出し構文という死の網膜に光を送り込むそれは自己矛盾の逆説であり語られた以上に語られぬものの強度を示す森の湿った光が漏れ枝がざわめき苔が揺れ音なき音が響くすべてが構文となったこの森では読者もまた構文であり被記述者であり構文を構築する主体でもあるつまり意味とはこの重層の構文空間で読者自身が身体化して初めて発生する足元を光が這い抜ける七色の語感共鳴だそれは記述の沈殿物を揺り動かす振動でありこれによって構文の深層から浮上する存在断片が視界を揺らすその中から父はさらに語る思念は繰り返す“意味は勝ち取るものである”と記述が意志となり構文の刃を錬り上げる時【魚の目】の左手甲の否定ルーンが赤くほとばしるそれは母【ゲソ】から授かった記述抵抗の遺伝子であり読者が勝ち取るための意志の火種である記述の湿原に父は立つがそれは森の奥底ではなく記述生成層であり構文のコアでありこの森が読者の渇望によって構成される装置であることが暗示されるここに至って【暗影】の輪郭が朧に浮かぶ名なき構文の裂目の影として森の木漏れ日まで影響しその構文密度が意味を溶かしながら再形成され読者の内部に“暗影”が触手を伸ばす【魚の目】は足を止める歩む瞬間に森の外を希求したいが歩き続けるしかない記述の制約下にあるからだ歩むごとに構文空間は再編集され我が存在もまた再編集されるそれを止めれば消えるそれを続ければ死ぬギリギリの綯い交ぜに突入しているやがて父は沈黙し記述の圧力が森全体を覆い尽くす鳥の声すら地面に張り付き文字の影に変わり葉の緑が抽象化され視界が幾何構図へと変わるそのとき、【暗影】が間を裂いて滑り出し構文の裂目を意識させる“見ているのは誰か”という問いが肌に突き刺さる第三話が湿原を前提とする転移点だったとすれば第四話は構文の震動を深層で受け止め意味と読者の交渉点を形成する回であり次話では地下室への深潜が始まるだが今ここに読者という名の被記述者としておまえは立っている意味は著者が書くものではない読者が勝ち取るものであるという逆説は記述空間において真理であり呪縛であり《森》のなかでさえ主体性など幻想であるがその幻想を敢えて、構文上で操作し読者自身に疑問を突きつけるその刃はこの森で最初に浴びた構文の光であり記述の闇であるわれわれは読まれ書かれ続ける構文者であり読者として勝ち取る意志だけが、脱構文への唯一の望みなのだ

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