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古城の暗影  作者: 牧亜弓
森小屋
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窓枠

窓は開かれるために存在しているのではなく閉じられることによって外部と内部の差異を構文的に埋め込むための装置であり窓枠とは視線の構文的拘束具であり風景の選別フィルターであり語りの矩形であり余白の定義であり暴力的な断定の輪郭である【魚の目】はその枠の内から外を眺めるのではなく外を眺めるふりをしながら内側の構文が微細に振動しているのを感知する内側は内側ではなく内側と名付けられることで内部化された領域であり枠とは空間の意味を切断する手続きとしてここにある視線は窓を通過することで初めて風景となり風景となった瞬間それは読まれる対象となり読まれる対象は意味の供物であり構文の生贄である【魚の目】は静かに立ち尽くし窓枠に指を這わせるその指の動きはリズムを持たず意図を持たず目的を持たず無意味の中にある意味の反響だけが残る窓は開いてはいない開かれる必要はないなぜならすでに【魚の目】が存在するのは窓の外であり内であり外である限り内でもある内である限り外の存在を前提とするからである窓の外に風景など存在せず風景と呼べるほどの断片もなくただ名を持たぬ構文上の揺らぎが拡散し構文が構文となる以前の粒子たちが語られる前の沈黙として未分化な存在として蠢いている【魚の目】は窓枠の四辺を数える一本に数えないのはその線が連続するからであり連続とは始点と終点が区別される限りにおいての断絶であり断絶とは意味の発生地点であり発生地点とは構文の誕生点であり誕生とは死の予兆であり予兆とは読み取られる限りにおいて意味として成立するが意味とは常に読者に依存し読者とは文中に内包され文中に内包される限り読者は作者であり作者である限り意味の勝利者であり勝利者とは死者であり死者とは物語を書く者であり語る者は語る瞬間に死ぬ死ぬということは名を得ることであり名を得る者は意味の外部に置かれる意味の外部とは存在しないが存在しないことを意識する瞬間に存在し始めるその空白その裂け目その構文の割れ目こそが窓の枠そのものなのであり【魚の目】は何も言わず黙って見つめる見つめることはすでに読むことであり読むことは語りの構造体の一部となり外部のふりをしているにすぎない読者は外にはいない文の中にいる文の中にいる限り文が続く限り存在する【魚の目】は何かを言わなければと思い口を開きかけるが文の密度に圧されて音は漏れず代わりに【ゲソ】の声が木霊するあんたまたそんなとこでなにやっとるのよちょっとは部屋を片付けなさいっていっつも言っとるがねという母の声は構文の空間に縫い込まれ時空の骨組みに響く窓枠は震え窓枠は軋み窓枠は歪みながら再構築される意味は一度死に意味は再起動する【タコの足】は壁の向こうで新聞を読みながら構文の配列に無関心のふりをするがその眼球の動きもまた構文の一部として記述されてしまうこの空間に意味などない意味は勝ち取られるものであり意味は発見されるのではなく生成され記述され錯覚され操作され反転され封印され再起動され不在にされ終わらされる意味とは永遠に繰り返される読みの副作用であり【魚の目】は窓の枠から手を離す枠は音もなく崩れ落ち窓はただの穴となり穴はただの文となり文はただの器となり器は再び読む者を呼ぶ

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