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こんがり化けたモノクローム  作者: つじは
気流に眩んだプロセスモデル
19/41

第19話 灯台下暗し

 帰り際、隣に並んだ沙妓乃は言った。

「わたしね、部活なんてどこでもよかったの」

 意外だった。あんな短編まで書いて、さぞかし文芸部への入部に強い思いがあったのだろうと踏んでいたからだ。今だって、俺に気を使ってそんなことを言っているんじゃないかと思う。

「バックアップを取っていなかったのも、短編執筆は入部の手続き程度にしか考えていなかったから。本当は心の中で、こんな惰性で決めてしまっていいのか、高校の部活なんだから、もっと面白い決まり方をしてもいいんじゃないかって思ってたの」

 俺と同じだった。俺は占いという心の拠り所を持っているが、普通の人間はそんな生き方はしていない。大抵の人間は、消去法なりで物事を決めていくのだろう。

 形は違えど、占い研究部は非日常を生きていたい、ちょっぴり高校生活にロマンを持っている人間の集まりだと気づいた。

「ありがとう、けんくん。きっとわたし、楽しくやっていけると思う」

 俺はその言葉を嬉しく思いながら、「そうか」と下手くそな返事をした。


 *   *   *


「ご視聴いただき、ありがとうございました。よければチャンネル登録、お願いします」

 カメラを止める。すぐに消灯しない白いLEDが、日が沈むようにゆっくりと消え入る。

 月日が経ち、人に見られる抵抗感も無くなってきた。

 四人それぞれがやっている分野がその界隈に刺さったのか、チャンネル『動画の屋敷』の登録者数も驚くほど増えた。俺は大概占いの話しかしていないが、それについても「深いな」とか「私もそうです!」とかのコメントが寄せられていた。たとえ一部の人間であっても、自分の考えが認められることに嫌な気分はしなかった。

 そして、どこから話が漏れたのか、自由ヶ崎高校では、どうやら配信者の『コンコン』が在校生らしいとの噂も流れ始めていた。身バレとかは勘弁してほしいが、今はツネがその最有力候補として落ち着いているようだ。

 さあ、次の配信では何を話そうか。


 *   *   *


 見慣れた校門の前に立つ。

 俺も結局、根っこのところは小冬と何も変わらなかった。


「どうしてですか!」


 小冬の大きな声が、昼休みのロビーに響く。また何かあったみたいだ。

 きっといつも強い風は、俺の周りで吹いていた。

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