第17話 望んだ達成
「すみません! 俺がやりました!」
文芸部室に戻った俺は、佐野部長と能の前で精いっぱいの誠意を演じた。
あのままでは、今日の占いを実現するチャンスもなかった。これは『誠意を持って謝る』ためのちょうどいい機会だったのだ。ああ、本当に素晴らしいことである。美しく効率的だ。
「入部したいなーと思ってたんですけど、短編が全然書けそうになくて! こっそり優秀な人のやつを参考にしようと思ったんです。ほんとすんません!」
誠意はどこへやら。
その平謝りに呆れているのか、勢いに押されているのか、もうその場には俺に対する怒りみたいなものはなかった。
「あの、もう、大丈夫、です……」
能は怯えるようにそう言った。周囲の文芸部員たちからは、蔑みの視線を感じる。
しかし、当事者の許しは得た。こことはもう、おさらばだ。
「自分に素養がないとわかったんで、入部はやめとこうと思います。失礼します」
早口で告げ、踵を返す。
能には嫌われただろうし、明日から学年中に変な噂が流れてしまうかもしれない。でもよかった。俺にはもうそれなりの人間関係があるのだ。
「……待って!」
その声に、俺は足を止める。
声の主は、俺にドン引きしていたであろう能だった。怖くて顔も見られなかったが、やっぱり殴らないと許せなくなったのだろうか?
「わたしも、辞めます」
その一言に場が静まり返ったのは、言うまでもない。