装丁依頼
みなさんの目にとまりお読み頂ければ嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
(閑話になります。)
こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
side ある辺境伯領の装丁師???
冒険者ギルドのギルマスから仕事の依頼があった。急ぎではなく、お貴族さま仕様の美麗な仕上がりを希望とのこと。
誰かへの贈り物だろうか?
頑丈な箱に納められた原稿?を弟子たちと確認する。箱は魔道具で施錠され中身も保護がかかっていたので、ギルマスから預かっている鍵で開けて中身をあらためる。
原稿の内容は植物の覚書をまとめたもののようだ。描き込まれた絵がまた素晴らしい。様々な色で写実的にそれでいてやさしい色合いで描かれている。
どの植物も辺境でよく見かける植物ばかり。それこそ道端でみかける草花も描かれている。筆者の視点が低いのか、地面に近い植物がテーマに多い。それとも木々の観察が後回しなのか。
内容は一年を通じてのもののようで、身近な植物がほぼすべて描かれているようだ。つい自分が好きな花のページを探してしまった。
もちろん中身をあらためているふりをして。しかし弟子たちにはバレている気がする。
文字は自分たちにも読めるほど、平易な分かりやすい文字で簡潔な文体。
筆者が採取のかたわらに書き溜めたのか、生活に密着した内容で怪我や病についての効能や料理への応用が細かく書いてある。
思わずそのまま読み進めてしまいそうだ。
弟子のひとりが、この仕事をやりたいと言ってきた。腕はある、将来が楽しみな弟子の1人だ。しばし悩んだが、やる気を買ってやらせることにした。
それからの弟子は、冒険者ギルドに行ってギルマスに会ってきたり素材を方々を回って
集めたりと積極的に取り組んでいた。完成の報告を聞くのを今は楽しみにしている。
side ある装丁師の弟子???
その仕事は冒険者ギルドのギルマス経由で持ち込まれた。依頼者はお貴族さまではないようだが、かなりの予算をかけている。
親方の脇から見ていたが、とても素晴らしいものだと思った。やさしい絵と分かりやすいことばで綴られていて、筆者の温かな人柄が伝わってくるようだった。
装丁は依頼者の身分や用途、好みなどを汲み取って作り上げる、とても想像力を掻き立てられる仕事だ。本とは繊細で美しい芸術品、それでいて知識のつまった実用品でもある。場合によってはかなりの資産にもなる高価なものだ。
今回の仕事には興味を掻き立てられた。いったいどんな人物が書いたのだろう。どんなふうに本にしてほしいと思っているのだろう。
気になって仕方ない。それにこんなことを思ってはいけないのかもしれないが、この本を自分が読みたかった。親方も読みたそうだったから、ダメって言われるかもしれないと思ったが頼んだら許可がでた。
仕事場にしているスペースで落ち着いて中身を見直す。どんな装丁にするかを考える時間は、苦しいし緊張もするがとてもワクワクする。
たいていの装丁師は依頼主の意向を重視する。これはまぁ当たり前ではある。でも俺は中身がどんな本になりたがっているかも気にしてやりたい。
ただこの中身から感じるものが、そのまま依頼主のイメージ通りなので、筆者が依頼主なのだと思っている。今回の依頼は美麗で格式のある装丁。
たぶん、筆者はこの中身を大切に思っている。そしてとても気に入っている。身近に置き見て楽しみ読んで楽しむ、そんな本。
あぁ筆者に会いたい。だがまずギルマスに会いに行き情報収集だ。
ギルマスからは派手ではなく実用性もあり、品の良い、しかし可愛いらしくしすぎないこと。というアドバイスをもらった。
もしかして筆者は若い女性なのか?
革選び、装飾品、思いつくものから揃えていく。この本はきっとたくさん読まれるだろう。だからしっかりした拵えにしなくてはいけない。
しかしこれは写本でもいいから、皆に読ませてやりたいと思ってしまう。さりげなく親方に話してみたら、自分も一緒に考えてやるから読ませてみろという。
それって読みたいだけでは?まぁ読みたいですよね、分かります。というわけで、親方の考えはギルマスに聞いてみたら、というものだった。
ギルマスは、自分は中身を読んでいないから出来上がったら読ませてくれという。依頼主にこの件は任されているそうで、出来栄えの確認も兼ねているようだ。
自分としては、渾身の出来栄えだと思っている。今の自分の持てるものを全て注ぎ込んだ作品だ。ぜひ筆者の人に喜んでほしい。
side 冒険者ギルドのギルマス???
出来上がった本を前に、装丁師の親方と弟子が緊張した様子で見つめる。
誰しも評価を受ける時は緊張するだろうな。だがこれは立派な出来栄えだ。美しいし上品だ。作りたてなのに、持っていてしっくりくるし、めくりやすい。
ずいぶんと腕のいい弟子だ。何度も俺のところに来るくらいに熱心だったことを思い出す。これならあいつも喜ぶだろう。
しかし写本?
親方と弟子に出来栄えに満足したと伝え、代金に色をつけて支払う。それから読ませてもらって写本について依頼主にも相談すると返答した。
読んでみて、なぜ写本の話をしてきたのか納得した。やさしい挿絵、わかりやすい表現、実用的な知識、身近ですぐに活用できそうな有益な内容。
なるほど、これはあいつの前に商業ギルドと辺境伯にお見せした方がいいようだな。
なんでなんだ。なんであいつはいつも、なにかやらかさないと気がすまないんだ。
何がこれを本にしたい、だよ。本だけではすまなくなりそうではないか。はぁー。
後日、リーダーに写本の話をするといかにも気楽にどうぞという。
また書き溜めたら、本にしてください。と出来上がった本を嬉しそうに抱いて簡単に言う。
まったく、こっちの苦労も知らないで!
たくさんの作品がある中で
お忙しい中お読みいただきありがとうございます。




