歌う魔石
みなさんの目にとまりお読み頂ければ嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
side ある深紅の竜???
皆番い番いと特別視するが、番いは本当に必要なのか?わたしには分からない。
わたしは個体として恵まれて生まれた。有り余る力で、周囲をねじ伏せ己を誇示する。世界に自分を刻む感覚に酔いしれる。
力に溢れた今の自分に満足しているのだから、番いなど現れたところで何が変わるのか。番いは現れるとなんとなく感じるという。そうなると見つけ出さずにはいられないらしい。
種族も土地も属性も関係ない、それが番い。そこまで個としての違いがあるというのに、番いでないといけないのはなぜなのか?どうやら番いを得ると個が完成するらしい。
正直言われていることの半分も理解できない。
番い以外とも子は成せるが、力の強い子は番いとの間から特に生まれる。また番い以外との組み合わせで生まれる子はひとりだが、番いとなら幾人でも授かるらしい。しかも多産である。
魔族はとくに出生率が低いので、子がたくさん生まれるのは歓迎される。番いとの間でなら8人や9人もありうるのだ。
種族のためにも子はなさねばならない。一族の義務として皆が役目は果たしている。それはわたしも同じだ。役目は大切なことだ。最強の竜種、それはわたしにとって絶対だ。
にも関わらずどうしてわたしは、わたしの中に渦巻く狂暴な力に振り回されているのを感じるのか。強いことに酔いながら、同時に我を失う感覚に怯えている。弱いから振り回されているのだろうか?
もっと強くなれば力を制御できるだろうか。わたしは自分の未熟さを見せつけられるようで、ついつい苛立ってしまう。
不安定なのは番いがいないせいだよと昔誰かに言われた気がする。誰かは思い出せない。
なんとなく番いを気にする日々にうんざりしていたそんな時、青の番いが害される事件がおきた。
バタバタと周囲が騒がしくなり、あの優しい青が他種族に制裁を加えたという。その後も青は一縷の望みをかけて番いを探し回っているという。
見つかってほしい、とわたしも思う。
そしてその時は突然やってきた。匂いがした、強烈な匂い。頭を殴られたような、ほかはなにも感じられないほどの匂い。
つぎに方向。そこに行かねばならないという、恐怖にも似た瀬戸際の感情。一刻も早く手に入れなければ、失ったら最後、失ったらそれが自分の終わり。
まさに今までの自分という存在が作り替えられてしまったのだ。ほんの一瞬ですべてが完了した。わたしは半狂乱になったと言えるだろう。
たったひとつの意思以外何もかもが意味をなくしたのだから。番いを手にすること。わたしは魂と本能の命じるままに飛び立った。
こんなにハッキリ感じるものなのか?思っていたよりずっと近くに番いはいたらしい。竜人の里の方向だ。
今日は青の番いが見つかったそうで、祝いの宴が開かれるようだ。わたしの番いも竜人なのか?わたしはとくに好みはないと思っているが、きれいでかわいい相手がいいな。
見えてきた、すぐそこに番いがイル。ハヤク、アイタイ。ワタシノツガイ。
はじめての感覚はわたしをどんどん侵食していく。つぎに気がついたのは拘束されたときだった。
なぜ縛られている、まったく思い出せない。しかしこんな物がわたしに通じるものか。そう思い引きちぎろうとしたが、まったく切れない。
わたしよりも強い者による拘束、愕然とした。ワタシヨリツヨイ。強さの象徴のような竜種であることはわたしの誇りでもあるというのに。
わたしをしばるのは、まだほんの子供。全力で抵抗したが、まったく効果がなかった。
竜たちが交互に落ち着くように言ってくる。理解は出来るが従えない。今の私は番いを確保することしか考えられないらしい。
あと少しなのに。あの膜の向こうにわたしの愛しい番いがいるというのに。
なぜ邪魔をする、すぐそこにわたしの唯一がいるのに。拘束が解かれたのは嬉しい。番いに向かって歩いていける。番いに向かって手を伸ばせる。
番いに呼びかけることができる。わたしはもう、おまえを知る前に戻ることは永遠にない。お前が得られなければ生きている意味もない。
わたしを殺すことのできるものよ、どうかわたしのところへ、そうでないならどうかわたしを今すぐ殺してくれ。
こんなにも変わってしまうのだな。恐ろしいことだ。でも言わずにはいられない。
つがい!わたしはここだ。気づいてほしい。
皆に訴える。つがいだ!わたしの番いがいる。ここにいる。すぐそこに!
だから会わせてくれ。邪魔しないでくれ、頼むから、わたしの番いに触れさせて!
side 主人公
泣き喚くように、気が狂いそうなほどの様子で番いが近くにいると訴える深紅の竜さん。
こうなると確かめずにはいられないよね。わたしは結界を解くことにした。だが、あのままは不安だ。わたしは深紅さんに人型になれるか聞いてみた。
当たり前だ、そんなの簡単なことだという。では人型になってほしいというと、なぜだとひどく苛立ってくる。
あなたは大きくて強いくて美しいけれど、はじめて会う相手としては少しこわいの。慣れてくればあなたの放つ魔力にも耐えられるようになると思うけど、あなたの番いが竜以外ならはじめは人型の方がいいと思うわよ。
グッ…と、すごくこわい顔で固まる深紅さん。あのこわい顔はもしかして、真剣に悩んでいる顔なのだろうか?
すごくすごく苦しそうにするので、人型になるの大変なのかと白い竜さんにきくと別に大変ではないと言う。
じゃぁ、なんで?たぶん、魔力などが活性化し過ぎて制御が大変なのだろう、結界があって良かったとのこと。
赤い竜さんが手伝おう、と前にでるがヤメロと、深紅さんが吠える。おまえに触ってほしくないと、とてもかわいそうなことを言う。
皆赤さんに同情の目を向ける。それに気づいた赤さんが、クッとショックを受けている。その時家の扉が開き青さんが出てきた。
微笑みながら赤、大丈夫かい、皆これは無理のないことだよ。今の深紅は番い以外には触られたくはないのさ、と気楽な口調で宣う。おまえ、起きて大丈夫か?と竜たちが心配するが、外の騒ぎが気になって寝ていられなくなったと笑う。
それに今ここに深紅のことを本当に理解できるのは自分だけだと思う、とやさしい瞳で深紅を見つめる。
さぁ、頑張れ。わたしも人型になる方が話が進むと思うよ、と深紅さんを励ます青さん。
同じ番いを持つ身だからか、それまでよりも素直な様子で頑張って魔力を抑えている。どうも、番いをはじめて感知すると喜びのあまり細胞すべてが活性化するらしい。
はじめてというくらいの興奮状態に陥り、理性が本能に支配されるという。下手したら番いの声しか聞こえないくらいに、番いに集中してしまうらしい。
青さんなんか、産まれたての番いのアブアブいう姿を三日間ほど見入っていたらしい。それを聞いて皆がなんとなく、それって周りはすごい迷惑だったのでは?と思ったが深紅さんだけは嬉しそうだった。
なかなか上手く魔力を抑えられない深紅さんが、おずおずと青さんに助言をこう姿を目を剥いて見る赤さん。
たぶん、日頃は人の言うことなんか聞かないのだろう。きっと、誰かにものを尋ねたりしたこともないのかも。
魔力を抑えるのが大変なのも、本来の姿への誇りだけじゃなく、強くあることを重視していてそれ以外にあまり興味がなかったのかも。
でもこれは本当に大変そう。わたしはアイテムボックスの中にあった魔石の中から大きいものを選ぶと深紅さんに近付いた。
魔力を少し抜いてみたらどうか?と魔石を見せて提案する。青さんも深紅さんもえっと驚いているが、わりといい考えだと思う。
近付いてそっと魔石を深紅さんの手に当ててみる。するとみるみる色が変わっていく。かなり大きい魔石が深紅色に染まったところで、身体からはなしてどんな感じか聞いてみた。
少し楽だがまだ大変らしい。もっと吸い出した方がいいんだと思うけど、新しい魔石を使うか迷う。手にした魔石を見るとふと面白いことに気がついた。
この魔石、歌っている?
たくさんの作品がある中で
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