帝国の噂話
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side ある帝国の若者???
王都での回復の儀をなんとか行なって、教会絡みの王国内を混乱に陥れる陰謀もこれまたなんとか収束したのは喜ばしいと思う。
リーダーが引っ掻き回していたのによくまとまったと感心する。しかし帝国との対立を思えば、国内が安定している国がひとつでもまわりに多い方がいいだろう。
わたしはリーダーに許可を得て帝国に向かうことにした。本当はリーダーの手を借りれば解決は早いのだろうが、まずはできることを自分で試してみたいと思う。
リーダーから変装の魔法を使っていいと言われているのもありがたい。ついでに魔法陣も使っていいそうだ。いいのかな?そんなに許容して大丈夫か心配になる。
リーダーの設置した魔法陣は大陸中にいっぱいあった。今回場所を共有してもらって驚いたのだが、なんだこの数。はっきり言って覚えきれない。呆然としているとマップをくれた。
マップという地図の魔道具だ。機能は簡単、現在位置を中心として地図が表示されること、移動すると随時更新されること、そして転移陣の場所が表示されること。
なんだかすごい機能のような気がする、これなんとリーダーのお手製の魔道具らしい。まさかなんでもありとかいわないよな、こんなものまで作れるなんて。
というわけで変装して冒険者として帝国内に侵入した。ちなみに毎晩戻れる時は島もしくは、リーダーの拠点にしている森の洞穴まで報告を兼ねて戻っている。宿泊代をケチっているとも言える。まぁ、わたしには現状軍資金はあまりないから節約しないと。自由行動なのもリーダーの好意だし。
南部地域はリーダーの保護魔法で保護されている。帝国としてはいうことを聞かない南部を懲らしめたいと思っているだろう。
こんなふうに逆らうのを許していたら帝国の威信に傷がつくし、いうことを聞かない連中が増えたら困るはず。まずは南部の動向を帝国内に知られないようにしていると思う。
まだ、大きな動きがないうちに、味方と連絡を取り助け出せる者たちは助けたい。今後帝国がどのような方策を取るとしても、優秀な人材が1人でも多く必要だ。戦争を阻止したいが自分にどこまでできるか、ともかく1人でも多く救うのだ。
帝都に向かう主要な街道沿いに、情報収集しながら味方の動向をそれとなく探る。こうして動いていることを帝国側に勘づかれて捕まったりしたら大変だ。
リーダーが相変わらず夜飛び回り、村落に食糧を落としているので通る町や村は比較的落ち着いている。なんとなく神の遣いへの認知度が上がっている気がする。
当たり前か、こうして施しの有無が人命に関わっているのを感じると、為政者の在り方で民の生活が影響を受けるという当たり前のことが知識ではなく身近なこととして認識できる。
リーダーが見回りながら食べ物を配り、魔物を狩り、盗賊などは討伐しているおかげで治安は悪くないことに安心した。こうして自分の足で歩いて、目で見て確かめると、視点がまた違って見えるものが変わってくる。
周囲の街並みに溶け込みながら聞き込みし、さりげなく自分の痕跡を記し連絡を待つ。当然向こうも警戒しているだろうから、冒険者ギルドや商業ギルド、職人ギルドの依頼や連絡手段を利用することにした。
これもリーダーと共に行動し、庶民の生活をよく知るようになったおかげで増えた知識だ。
ギルドの組織は大陸中を網羅している。また基本国に縛られない組織という建前もある。多少の融通はあっても、干渉を受けない独立した組織という信頼は大切だ。
こちらも潜伏しているうちに状況が変わったり、味方が敵の手に落ちたりということも想定してはいる。なにしろわたしも1度は死にかけたのだから、周りだって大変だったはずだ。
そんなわたしがとったもうひとつの方法は、連絡を取りあうのが難しいことも考えて宝珠を持つ者たちに使うように促すメッセージを発信したこと。
噂話として、街角の隅の張り紙として、ギルド内の掲示板に同志を募るように偽装して。
天の恵みと出会えたならば迷わず使え、導かれるままに。
このような意味のメッセージをリーダーにも手伝ってもらい、帝国中に広めた。リーダーには許可をもらっている。使えば島の人口が増えるわけだから、対応を考えておかないといけないし。
この噂が広まったおかげか、島には南部の人間たちが増え始めたという。肌の色が南部地域は皆浅黒いのでわかりやすい。リーダーから話を聞いて、島に顔を出すことにした。
リーダーと転移陣で朝から向かう。新しく島に来た者たちが食事しながら説明を受けたばかりなのか、まだ固まって座っていた。
リーダーがおはようと声をかける。ちなみにこの時わたしは変装を解いている。どうするか迷ったが、わかりやすい方がいいのではとリーダーが言うのでそうしてみた。
リーダーはいつも通りに、まず自給自足になれること。やりたいことがあるならば、危険が島や他の住人に及ばない限り基本は自由を尊重する。いろいろ学びたいなら、時間をかけても大丈夫と説明していく。
リーダーの横にいたわたしは、何人かの強い視線を感じたがその場では目を向けなかった。わたしに注視していない者もいたので接触を待とうと思ったのだ。
今回はわたしに声をかけやすいように、指導員役の冒険者たちと新しい南部からの住人たちを引率することになった。上手く声をかけてくれるといいのだが。
昼も過ぎ、皆採取にも慣れてきて適当に散らばってきた頃わたしに声かけてきた者がいた。
教えてほしい、というので植物の見分け方などを説明したり効能を教えた。
◯◯様ではありませんか?と聞かれたので、手を止めてじっと見つめる。誠実そうな若者で品がある所作と話し方、たぶん貴族に仕えていたと思われる。
自分は帝国の辺境伯家のひとつにお仕えしていた家令見習いですという。その家はわたしの家と同じ派閥で味方同士という認識だ。
なぜ彼がわたしを見知っていたか、それは彼が下級とはいえ貴族の三男だったので、学院での在学期間が被っていたらしい。彼は卒業後、寄親にあたる辺境伯家に士官したという。
彼は情報収集の際に捕まり拷問されて死にかけていたようだ。主家が心配なこと。なんとか役に立ちたいと思っていることを話してくれた。
わたしも追われて逃げたので、人手が足りないこと。きっとこの島に味方も現れるから、皆をまとめていきたいと考えていることを伝えた。
その上でここで南部地域の人々と島の橋渡しする役目や、情報収集する者、一般の人と味方をそれぞれ把握してまとめる人間が必要だと話した。
身体を整えながらその役目をやってほしい、他にもどんどん人が増えると思うので、仲間を増やしてほしいと。
1人の力で出来ることには限りがある。リーダーみたいな人でさえ、周りと協力しあっている。焦る気持ちもあるが、見落としがあってはいけない。
そんな時、リーダーがこっちは落ち着いてきたから帝国の方を手伝うと言ってきた。
どうしよう、なんだか心配だ。
たくさんの作品がある中で
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