治療院
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side ある治療院の長???
今日もよく晴れている。どうやら早速来たらしい。
いつも彼らは朝早いうちからやって来る。最近受け入れることにした見習いたちだ。話し合って決めたのは、毎日数人ずつ交代で来て雑用をしてくれたら、治癒魔法を仕事の合間に教えるということ。
たくさん来られても、教えきれなかったらいけない。数人なら順番に1人づつ見てやれるだろう。
彼らは皆あまり強い魔力は持っていなかったが、努力家ばかりのようで意欲はとても高かった。それに庭や玄関の掃き掃除から、診察室や器具の手入れなどの細々したことを丁寧に教えた通りに手入れをする。
物を置く場所ひとつであっても教えた通りに。
実は、この物の置き場所、そして教えた通りという二つは簡単なようで難しい。新人がこのことの大切さに気づくまでが大変なのだ。使いやすい動線、使う人間たちが共通で認識していることを理解して意識する。
教えればいいと思うだろう。もちろん今まで幾人にもいろいろな教え方を試みてきた。中にはハッと気づき理解できる者たちもいたし、素直な者だと理解は追いついていなくても繰り返すことはできるといった者たちもいた。
しかし、理解できると目が開かれたように動きが変わってくるものだ。
たが今回受け入れた見習いたちは一様にこの段階をクリアしていた。今回の見習いたちは皆驚くほど教えやすい。素直で熱心、労を厭わず地味な作業もきちんと手順を繰り返す。
説明したこと、教えたことをメモをとり合間をみては覚えたことを繰り返している。
その真摯な姿にわたしも昔の習いはじめの頃のことを思い出した。
彼らは皆、元気よく挨拶すると掃除などの雑用に取りかかる。彼らが来てから治療院も隅々まで掃除が行き届き、過ごしやすくなった。
敷地の一部を薬草畑にしており、その手入れや収穫も作業に含まれる。彼らは採取に慣れており、丁寧に摘み取りしてくれるから、素材の品質が損なわれることもない。
薬草の乾燥や分類、簡単な調合などを様子を見ながら教えてきたが、間違いなどもなく作業が雑になることもないので今度は違うことも教えようかと考えている。
午後は診察の補助をさせながら患者への接し方を勉強させているが、彼らはここでもわたしを感心させた。
患者への接し方が上手いのだ。まるで自分のことのように患者を理解しているとでもいうように。
治療院という現場は、汚れ仕事もあるし匂いがきついこともある。決して綺麗な仕事場ではないのだ。しかし彼らはまったく嫌がるそぶりもなく仕事をこなし、汚いものを眼にすることがあっても動揺をみせない。
むしろこちらが診察しやすい、手当てしやすいような配慮さえしてみせる。しかもとても自然に行っている。
最近では軽度の怪我をした患者の患部の消毒などをさせているが、感心したのはクリーンの使い方だ。消毒は場合によっては痛みが強いこともあり患者に我慢を強いることもある。
しかし患部の消毒はしっかりやらなければいけないことだ。でないとかえって怪我が悪化して大変なことになってしまう。
消毒は意外と難しい作業なのだが、ここにクリーンを使っているのだ。手作業で問題ない場合はやっていないが、土汚れや破片など取り除くのに時間がかかる場合などに使っているようだ。
わたしたちは魔力を節約するために、消毒にクリーンを使ったことはなかった。治癒に魔力が必要なのでそちらに使うためだ。
彼らのクリーンは普通のクリーンと少し違う気がする。
聞いてみたところ、ちょっとだけ浄化を加えて使っているという。この合わせ技だと若干修復効果があるそうで、治癒に使うとどうなるか試しているという。なぜそんなことをと思ったら、彼らのリーダーが言い出したらしい。
実際に見てみると、確かにただの消毒より患部の状態が良い気がする。
よくこんなことを思いついたなぁと驚いた。
今日は少し深い切り傷の患者が来た。いつものように見習いたちに消毒を任せた。そのとき見習いの1人からこの傷にもこの傷薬を使いますかと質問された。消毒の後に使うと答えると、消毒した後自分たちで塗ってもいいか聴かれたので構わないと答えた。もちろん後からわたしが確認することも伝えた。見習いたちから引き継ぎすると、ほとんど傷が治っているではないか!
見習いたちにどういうことか聞くと、いつもやっているクリーンの後に、傷薬をまわりに塗って再度クリーンの合わせ技を行ったという。
修復効果が出る時に薬の成分があればどうなるか、結果は回復にかなり役立つということが分かった。もちろん今回のようなちょっと深い程度のほんの切り傷の場合はだが。
なぜそんなことをと思ったが、これもリーダーから助言があったらしい。彼らも身近の者や自分自身が怪我をすることはある。
そのような場合手当てするわけだが、知っている薬草を使ったり民間の薬を使ったりて治すわけだ。
ちょっとした怪我くらいなら治療院にわざわざ来る人間の方がまれなのだ。現に街中には薬屋があり、誰でも傷薬くらい持っている。
冒険者などになれば、傷薬、風邪薬、熱さまし、胃薬、解毒薬、虫刺されなど、一通りの薬を常備して対処していると思うし家庭でも同じだろう。
魔法が使えれば尚更、工夫によって自分たちで対処できることを増やそうとするのは当然なのかもしれない。すぐに対処できたらそれに越したことはない。
1番は自分で自分も含め回復魔法を使って治せることだろうが、そうでなければ薬草や薬も使って治るならそれでいいのだ。
他にリーダーが何を言っていたか気になってきた。見習いたちにもっと話しを聞かせてほしいというと、いろいろ話してくれた。
組み合わせで効果がかわるなら、試してみればいいという考えなのは分かった。
すごいなと思うのは、今回は塗り薬だったがポーションのような液体を例えば一雫、垂らしてみる。とか、素材にもなる魔物の血液を垂らしてみたら?とか。
魔物?どうも魔物の血液を一度クリーンをかけて浄化し、人間に無害か確認してから、患部に垂らしてみてはどうか?というのだ。
確かに竜の素材などはエリクサーの材料とも言われているくらいだ。魔物の血液にそんなに拒否反応を示すつもりはないのだが?やはり発想がいい意味で新鮮だ。
なんとなく試してもいいんじゃないかという気になってきた。
そんな時、かなり重症の患者が運び込まれてきた。
崩落事故があったようで、体内の損傷も酷そうだ。治療のためにも服を脱がせたり、清めたりしないといけないほど汚れている。
いつものように見習いたちを呼ぼうとして、さすがにこの患者は難易度が高いかと躊躇したとき彼らは率先して処置をはじめた。
ひどい怪我の場合、新人の方が具合が悪くなることが多いのに彼らはそれさえもない。なぜこれほどの胆力が彼らにはあるのか不思議だ。
彼らは手分けして服を脱がせ、クリーンをかけていく。わたしに許可を求めてきたので、薬や血液の使用を認めることにした。
少しでも効果があれば、患者が苦しまなくてすむのだし。
内出血の場所には塗り薬、切り傷には傷薬、パックリと開いた患部には浄化した魔物の血液をひと垂らし。
彼らは分担して、部分ごとにクリーンをかけていく。魔力が少ないので、1箇所づつしかできないのだ。
しかし連携しているので処置は早い。わたしの出番はすぐにきた。なるほど。
これは驚くべき発見だ。確かに回復魔法ほどの効果はないが、かなり状態は改善しているといえる。おかげでわたしの使う魔法が小さくてすむ。
つまり、結果としてより多くの人を救えることにつながると思う。
こんなふうに魔力が少なくても、工夫次第でできることがひろがるのだ。
なんて素晴らしいのだろう。
たくさんの作品がある中で
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