商業ギルドと魔法魔術技能研究所
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こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
side ある商業ギルドの副ギルドマスター???
帰ってきた!すぐに話を聞いてもらわねば。
ギルマスはご領主さまのところに呼ばれていたのだが、どのような内容だったのだろう。もし本部からの相談と関連のある内容だとしたら、速やかに動かなくては。
ご領主さまのお話は穏便な内容だった。しかしこちらの話はそうではない。
「ギルマス、本部から急ぎの相談がきました。」
「急ぎ?」
「はい、とびきり物騒な案件です。王室からのご用で面倒な上、あまり見入りも期待できないと。」
「利益が見込めなくてもやれ!ということか?」
「はい、ギルド本部は全支部に人を出させて対応すると決めているようです。」
「なんだ、それじゃ相談ではないだろう。決定事項ではないか。やれやれ、よほど大変なのだろう。それでどんな相談なのだ?」
「はい、教会と貴族と帝国が結託して王位簒奪の騒動を起こしたとして、大量の犯罪者の処罰と家財および領地の没収、後任人事が発生した。がすでに収束方向のため商業ギルドには安心して治安維持に協力してほしい。」
つまり、王国の経済活動を遅滞させることなく対応し、決して周辺国に付け入らせるなと。また没収した土地家屋、物品を順次査定し騒動の損失補填に充当予定のため、その際は速やかな対応を期待されている。
さらに査定に際し、なるべく価値が高まるような案があれば提案してほしい。再利用を含め、これらの有効活用が重要課題のひとつである。
例えば捕らわれた貴族が王都に所有していた家屋などを放置して何かあってはいけないので、管理をきちんと行わないといけない。
ただ王室が管理し続けられる数にも限度があるので、無難な新しい所有者を選定することやもしくは更地にして管理しやすくしたいと。ただ立地条件ほかも勘案し、決して投げ売りのようなことになっては大変だと。
「当然全ての家屋の調査が必須であり、地上地下すべてを検分することを要請する、との事実上の王命にございます。」
「大量の犯罪者?それに土地家屋の調査?いったいどれだけの人員が必要になるかわからないぞ!しかももうすぐ冬だというこの時期に。」
「はい、ですがこの魔法魔術技能研究所の報告書の内容が本当ならば、今回の問題の解決に役立ちます。ですから急ぎ確認と認可をお願いします。」
この魔法は絶対使える。でないと俺たちが過労死する。それだけは回避せねばならない。まだ幼い息子と娘と妻を残して死ぬわけにはいかない。
ギルマスだって娘さんの結婚式が来年なのだから、孫を抱きたいに違いない。何がなんでも生き延びてみせる。
そもそもこの人の移動に限界がある冬の時期に、大勢の人間を各地に招集など難しい。そうなれば当然限られた人員で不眠不休で対応している姿が目に見えるようだ。
ギルマスは、報告書を手に見るからに困惑していた。無理もない。数ヶ月前にも魔法魔術技能研究所からの認可の申入れの際は、皆困惑したのだ。
部屋数を増やす魔法?それに血抜きの魔法?ヘェ〜、そんな魔法あるんだ〜。みたいに思ったのは仕方ないと思う。
しかし、以外と使える魔法で現場からは好評だった。
そう、好評!宿泊業界も冒険者ギルドも漁師や狩人や料理人からも。そう、需要があったのだ。
今回のこの認可もはじめは、フ〜ンそう。みたいに思ったさ。でもこの魔法は我らの希望。この魔法なくしてこの苦境は乗り越えられない。
「この魔法?のどこが解決につながるんだ?説明を求める。」
「まず、この浄化とクリーンを組み合わせたという魔法、それにこの大きさがわかる魔法、そして土魔法で家を作る魔法。この三つは確実に使えます。」
私はギルマスに一生懸命説明した。
まず、浄化とクリーンの組み合わされた魔法には発動時にさらなる付加効果が認められている、それは修復の効果。もちろん魔法の使い手によって効果の大きさは左右されるが、没収した品々を浄化し修復できるなら王室の求める通り損失補填に役立つだろう。
さらに土魔法で簡易の家を多数作れるなら、領地を追われた民や、建築に向かない土地の民にも住居が得られる。しかし今回の着眼点はそこではない。土を扱いやすくする、それだけではないのだ。実はすでに建っている建造物にも効果があるのだ。
使われている木材の種類も関係なく、レンガの類も、ガラスの類も、漆喰の類も全て家の一部という扱いなのか?すでに建っている家に魔法をかけて、家を立て直すイメージで、一度更地にしたいと考えると更地になるのだ。しかも完全な、つまりきれいに土だけの、瓦礫とかもなく。
素晴らしい、願ってもない効果ではないか?
あとひとつ、最も重要な魔法がございます、それこそこの大きさがわかる魔法。正確な表現は物の大きさなどを調べる魔法だが、これは今回の依頼にぴったりなのだと。
実はこの魔法ができたきっかけは、索敵に使われていたという。しかし使っているうちに、物を調べる魔法単独でも利用できるのでは?と思ったそうだ。
ギルマスは、わざわざなんで索敵に?という顔をしていた。別に気配探査や生命探知でいいだろうにと?それに、大きさや形って、普通に測ればいいだろう、測量があるんだし。
あれっ?確かに。なんでだろう、まぁいいか。
とにかくこの魔法は大きさや形がわかるという。今回のような調査にはうってつけの魔法だ。説明書によれば読み取った内容が描き出されるらしい。
図面のように使えるのではないか、とはじめは考えた。つぎに空間だけではないのではないか?と思った。索敵に使ったということは、人にも反応するのだろう。
空間に中に人がいたら、それも描かれるのではないか?見えない、触らない空間の中に入っているものまで描かれるのではないか?
考えれば考えるほど有効なのだ。しかも使い方を考えているうちにふと思いついたことがある。見えない場所の大きさや形がわかるなら、人体の中も測れる?のではと。
ギルマスははじめ胡散臭そうにしていたが、ハッとして目を見開く。人体?それは胎児ということかと。
そう、形がわかるなら男女が分かるのではないか?と思ったのだ。それだけではない、この見えない場所の大きさや形が分かるという魔法には可能性がある。
魔技研(魔法魔術技能研究所)の所長にはこの可能性を伝えたか?と聞かれ、まだだと答えると、通信の魔道具で今から伝えるという。
side ある魔法魔術技能研究所の所長???
商業ギルドのギルドマスターから通信がきた。なんだろう、なにか頼んでいただろうか?
「申請していた新しい魔法の件?あれが何か?」
「興味深い魔法で驚いたので。早速ですが商業ギルドで使ってみたいのですがよろしいですか?」
「どうぞ、こちらも認可いただけるのなら問題ありませんよ。早速使いたいとは役に立ってよかった。」
「何に使うのか興味はありませんか?」
「いえ、どれも普通の魔法ですから。今までより少し効果が限定的にあるだけの。」
「そうですか?じつは、検証実験を兼ねてわたくしどもにご協力願えないかとご相談したかったのですが?」
「協力でしたら致しますよ。ちょうど冬季は多少余裕がありますので、無償ではありませんが。」
「もちろんお支払い致します。申請にあった適正価格でよろしいですか?」
「ええ、もちろんです。われわれでも検証し妥当な線を出しました。」
「本当に有用な魔法を開発していただき、こちらにとってもありがたいことです。この魔法が説明書通りの効果を発揮してくれたら、大変助かります。ところで、所長はこの有用な魔法の可能性をどの程度まで把握されておられますか?特にこの大きさなどを調べる魔法について?」
正直エッ?と思った。空間を測れるので洞窟などの調査や、人がいきなり足を踏み入れる前に安全性を確認したい現場などでは役に立つだろうと考えていた。
また、瓶の中の大きさなども測れるので小さい計測が難しい物も対象になるとは思っていたが、商業的な価値はあまりないのではと、正確には商業的視点に敏感ではないのでなぜギルドマスターがこんなに推してくるのかよく分からないのだ。
「ギルドマスター、確かにこの魔法はかなり大きなものから、とても小さなものまで計測できると思います。でもどのように利用するかは使う者次第かと。」
「そうですね。確かに使う者次第です。今回われわれも必要に迫られてふと思いついたのですから。小さいもの。そして人にも反応する。もしかしてこの魔法は、人体の内部まで計測できるのではありませんか?」
「ハッ?まさか?…まさか?もしもそうだとしても、ギルドマスターは何を測るおつもりですか?まさか、病原体ですか?」
「ハッ?病原体?あの病気とは測れるものなのですか?いや、失礼。その発想はありませんでしたが、こちらが申し上げたかったのは胎児の性別が産まれる前に分かるのではないか?ということです。」
「胎児ですか?産まれれば分かるのに必要でしょうか?」
「…ッ、身分の高い方の中には早くわかると喜ばれる場合もあると考えております。」
ギルドマスターに言われて、はじめてなるほどと思ったが面白い活用法だ。本当に人によって魔法とはかくも多様性を持つものだと感心する。
しかし性別かぁ、まったく考えたことがなかった。とりあえず商業ギルドに協力して冬場の臨時収入を得るとして、新しい魔法の実践面での運用を確認できるのだからちょうどいい。
それに日頃の活動範囲とはまったく違う状況は、新しい着想を得られるかもしれない。面白いことが好きそうな連中を巻き込んで、検証するのはこちらにも好都合。
たくさんの作品がある中で
お忙しい中お読みいただきありがとうございます。
書きためるのにお時間をいただければと思います。
電車の中やお昼休みなど少しずつ書いております。
読むのも楽しいですが、書くのも楽しいですね。
書く楽しみ、読んでいただける嬉しさと出会えてありがとうございました。