王都のスラム
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side 主人公
王都で回復を行った翌日にはわたしたちは王都を発った。季節は秋も終わりの時期、旅をすると人目をひいてしまう時期になってきた。
王都で顔つなぎも出来たので、少し情報共有と冬対策を島の皆やスラムの顔役とも相談したいと思う。
辺境伯領のことやクランの方も様子を確認に行きたいし、わたしが転移陣を使えるのは本当にチートで良かったよ。
わたしは夜は森の洞穴へ転移して戻っているのだが、今朝起きたら初雪が降っていた。目が覚めて外に出ようと思ったが、寒いものだから毛布を身体に巻き付けたまま外に出た。
このところ、北部地域は特に朝晩が寒くなってきたのでもしかしたら降るかもと思っていた。森に降る雪はやっぱりきれい。
まるでもみの木みたいな巨木が洞穴の近くは多いのだが、そこにうっすらと雪が積もってきた。昇りはじめた朝日が当たるとキラキラと輝いている。
去年など、小さなつららが出来るようになるとクリスマスの飾りのように見えて楽しかったのを思い出す。
この辺りは白一色ではなく、濃い緑や真っ赤な木の実のつく木もあり色彩豊かなのだ。
それに羽ばたく音で目をやると、鳥たちも多く見つけられる。パンを食べにくるいつもの小鳥以外にも可愛い住民がいっぱいだ。
相変わらずまん丸いフォルムの小鳥は、寒さも気にならない様子で元気だ。
わたしはパンくずを少し多めに置いて宿の部屋に戻った。
いつでも出発できるように支度してあるので、そのまま荷物を持って部屋を出る。
食堂によると若者ももういて食べていた。今朝のシチューも美味しそう。パンも焼きたてでふかふか。シチューもパンもおかわりしているわたしを若者はよく食うなコイツ!と言わんばかりの目つきでみてくる。
何か文句でもあるのだろうか?コクのあるシチューの中のお肉とゴロゴロお野菜、焼きたてパン!わたしの洞穴ではふかふかパンは作るのが難しいの!
ナンみたいな平べったいパンはフライパンで作れるからわりと食べるのだが。やはり発酵させたり寝かせたりするパンは手間がかかるし、竃もないので作ったことがない。
美味しいね、とニコニコするわたしの頭を若者がなでる。一応兄妹の設定はまだ生きている。
宿を出てもまだまだ早い時間帯だ。お店も屋台も閉まっていて少し寂しい。だがどのみち面接のためにまた来るのだから気にするほどでもない。
冬場に人を雇うのは、雇う方、雇われる方どちらも慎重にならないといけない。
比較的移動が楽な季節なら試しに雇ってお互いダメならまた他の仕事を探すということもできるが、移動が困難な冬場閉塞しがちな環境でよく知らない人間同士でいろいろはじめてとなるとキツイこともあるだろう。
住居や食糧事情に悩みなど相談できる相手がいればいいが、お互いに妥協せずしっかりと確認した上で決めてほしいと思う。もともと春からスタートでもいいと考えていたが、よい仕事口なら確保したいというだけのことだ。
どのみち島の人間同士も知らない者同士、はじめての島での冬越しなのだから、はじめては島でも街でも同じこと。
先日南部地域の収穫作業の報酬が入ってきたので、各自の支払いの確認作業が終わったので皆に賃金が支払われるのだ。
やっと皆にお金を渡せる。島を出るなら支度金くらいは用意してあげたかったし。そうでなくても仕事をした1番の実感はやっぱり成果だと思う。
その手に労働の対価を得た時、きっとやりがいを感じてもらえるだろうし、報われる感覚を得られると思う。
お金に関しては他にも安心材料はある。島で調達した素材が北部地域の冒険者ギルドで比較的いい値で売れたこと。島での採取を頑張ってくれた人たちや、慣れない海で頑張ってくれた人たちのおかげだ。
南の素材が安定して手に入るのがとても喜ばれた。今後のこともあるので、ぼったくりではない正規の取引をお願いしている。
それにまだ海の魔物や魔獣は彼らには難易度が高いので、それほど珍しくない獲物中心に皆が海に慣れるのを目指している。
その一方で、収穫作業でその働きが認められて声がかかり南部の領地でそのまま働くことにした人々もいる。
住まいや冬越しのこと地域の環境の知識も乏しくて、おまけにほぼ身ひとつでもそれでも心配しなくていいと領主さまたちが引き受けてくださったのだ。
たぶん若者という知り合いがいたことがとても大きいのだと思うが、それも巡り合わせ。
それに話し合っているうちに、冬の間は変わらず通いで働けないかということになった。どうやら島で文字を教えたというのが意味があったようで、ちゃんと一通り読み書きを覚えたいという希望者が多かったようだ。
ご領主さまたちも読み書きできることを評価してくださっており、またいきなり衣食住全て面倒みるよりは準備期間があった方が助かるとのこと。
通いの話が出たことで、通いでなら働きたいという者たちも出てきた。いきなりは決められないが働いて少しでも稼ぎたいという。ちょうど領地もまだ人手不足なので働き口はある。
人が戻ってくるまでで構わないから働きたいという意見も多く、相談したら願ってもないことだからぜひ働いてほしいということでまとまった。
そのほかにも、職人に少しでも手解きしてほしいと職業訓練を希望する者もいた。いくつもの工房から下働きからでもいいならと受けてもらえた。
これも彼らが毎日真面目に働く姿を見ていたからだと思う。領地の人たちに受け入れてもらえるのは何より心強い。それだけ彼らの今後が生きやすくなるのだから。
それにしても通いは意外に人気だった。それからパンをもらえるのが、地味に嬉しいらしくパンの配給の希望があり領主の方々にご意見をきいたら問題なく続けてもらえることになった。
そして王都の方の働き口については、当初は島の人たちをとも考えていたのだが、王都のスラムに行って考えが変わった。
王都で見つけた働き口には王都のスラムの人たちを優先しよう、という気になった。なぜか。環境と知り合いの有無。
王都は都だ。ある意味田舎と都会くらい感覚に差があると思う。なんのツテもなく、生まれ育ったわけでもない者がいきなり暮らすには王都はハードルが高いのではと思ったのだ。
実はそれほど問題ではないのかもしれないが、今回は王都のスラムの人に機会をあげる方がよさそうだと思っただけだ。
スラムに顔を出して驚いたのが、なんと回復をスラムの人たちは受けられないと彼らが思っていたことだ。
聞けば、回復を受けるには高いお布施がかかること。またこの都の正式な住民でなければ受けられないこと。スラムのように勝手に住みついた貧民は対象外だと教会に思わされていたのだ。
呆れたと同時にここに足を運んでよかったと思った。と言っても、最悪こっそり回復and島でのやり直しコースは確保されているわけだが。
まぁ気持ちの上では、危うく回復もれが出るところだったみたいな、なんというかやっぱり教会は迷惑だわー!みたいな気分になった。
というわけで、その場でスラムの人々を回復した。驚かれたし、あやしまれた。べつにありがたがられたいわけではないのだが、あやしいのはわからなくもない。
たくさんの作品がある中で
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