エネルギー変換
みなさんの目にとまりお読み頂ければ嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
side ある国王???
朝食の最中に突如侍従長が駆け込んで来た。もちろん比喩表現である。たぶん侍従長も食事を妨げられたのだろう。
わたしも王妃も戦争か?国境が破られたか?さもなくばスタンピードかと、心配した。
実際にはどちらでもない上に、厄介で奇怪な報告だった。突然大臣たちの半分が血を吹き出しているという。
ほかの貴族の家でも三分の一近い貴族が死亡したり、重傷を負ったという。しかも当主だけでなく、奥方だったり、令息だったり、令嬢だったりとよくわからない被害状況らしい。
被害の報告はその後もどんどん届いた。騎士団のなかにも被害者が出ている。王宮勤めの者も半数近くが重傷を負った。魔術師団にも被害が出ているらしい。
王宮医師団以外にも教会や治療院からも人を寄越すように依頼をしたところ、王族直属の医師にも被害があり、それどころか教会も門を閉ざして一切の連絡がつかない状況だという。
治療院も貴族に関わることの多いところは被害が大きく、庶民に近しい者たちにはほとんど被害がないという。
いったいこれはどういうことなのだ?無事な医師に大臣を診させたら驚くべきことが分かった。
服の下に光る文字で原因が書かれているという。なんと、本当かどうか真偽は不明ながら呪詛返しを受けた結果らしい。恐れ多くも国の結界に呪いを掛けていたというのだ。本当なら即死刑に値する、逆賊ではないか!
衝撃は受けたが怒りの感情の方が大きい。許しがたい罪だ。国を根底から揺るがし、存亡が危ぶまれるほどの危機に知らず見舞われていたとは!
しかし事態はそれで収まるどころかさらに拡大した。なんと王族に隷属の魔道具が使われていることが判明したのだ。
王子や王女、王弟たちがこの騒ぎの中、まったく姿を現さないので侍女を遣わしたところ意識がなく部屋で昏倒していたという。それぞれ側仕えたちまで近くで倒れており、皆の近くには解除され破壊された隷属の魔道具があったという。
王族に隷属の魔道具!なんという不敬。怒りのあまり目の前が真っ赤に染まりそうだ。
隷属の魔道具からは魔力の紐のようなものが伸びており、騎士団に調査させると魔道具の主人まで辿れたという。主人に当たる者たちはすでに呪詛返しを受け、正気を失っているか拘束されている。
なんとこれまた身体に光る文字で、嘘がつけないようにしてあること。意識を奪ってあること。隷属させた相手を虐げていた場合はその反動を受けていることが書かれていたそうだ。
唖然としていても事態は収束しない。倒れた者たちも医師たちに診させ、とにかく取り調べを行わせる。嘘がつけないというのなら好都合、残らず吐き出させてどんなことを企んでいたのか調べ上げるのみ。
しかしまたもや急報が!また何かあったのか?今度はなんだ。
貴族たちの被害を診させていた医師たちから報告が。なんとこちらも光る文字が書かれており、それぞれの罪状に応じて身体が損なわれているのだそうだ。
しかしこれは刑罰ではなく、あくまで罪を明らかにして償わせることを光る文字は求めていた。
実際、顔面に現れた文字を隠すべく仮面をつけたら、仮面の上に文字が現れ、さらに隠したら服の上へと文字は現れる。
死体を棺に納めたら棺に文字が現れたという。ある貴族の屋敷では塀にまでそれぞれの罪が書き記されたという。どうやらサッサと土に埋めて隠そうとしたらしいのだ。
中には火をつけようとした者たちもいたようだ。危うく阻止したようだが、そんなことをしていたらどうなっていたことか!
しかしこれでは、国の半数近くの貴族が逆賊か罪人ということなる。騎士に魔術師、王族直属の医師にまで罪人が。
そういえば教会はどうなったのだ?連絡はついたのか?
こうなると教会も怪しい。教会だけ無事とはとても思えぬ。王宮に常駐していた司祭はどうしたか聞いたところ行方がわからなくなっていた。
もう一度今度は教会幹部全員を招集する王命を発する。騎士団もつけて向かわせたが、立てこもって交渉にさえ出てこない。これは明らかな反逆行為。
さてどうするかと悩んでいたところに辺境伯から以前話のあった、帝国絡みの案件でもある冒険者が到着したという。
この冒険者、恐ろしく強いという。戦力に加えることが出来ればこれほど心強い味方はいないと、辺境伯が豪語するほど。
ついでに帝国が戦争に備えているらしいという情報に、対抗するためには近隣諸国で協調し連携して対応した方が各国とも被害を抑えられるのではという提案まで。
しかしどの国もまだ仮定の段階で、帝国を刺激したくないというのもあり提案に乗り気ではないのだ。
まして、帝国の狙いが自分のところでなかったら、あえて火の粉を被る気にはなれないもの。
その冒険者が帝国の何をどこまで掴んでいるか?それが鍵となるだろう。
どうせ教会とは話さえできていないのだから、と冒険者の方と謁見することにした。味方に出来ればよいなと考えていたというのに。
なんとこやつこそ、諸悪の根源ではないか!
王都を混乱に陥れ、罪人と逆賊を量産し、貴族街はまさに血の海だ。
たしかに罪人どもは無力化されており逃亡の心配もない。逃げるような意識は残っていないだろうし、そもそも身体が欠けておっては逃げるのは無理であろう。
血が吹き出し続けている者も多く隔離している。正直、とても正視できないほどひどい有様で、いくら罪人といえどいっそひとおもいに殺してやるのが情けなのでは?と思えてくる。
なのになぜ殺せないかといえば、注意書き(光る文字)に贖罪のために生命エネルギーを頂戴したいので、まだこの者らの死ぬ時ではない、とわざわざ書いてあったからだ。
つまり利用価値があるから殺すな!ということなので、とりあえずまとめて1箇所に集めたというわけだ。
ちょっと極悪非道なのはどちらだろうか?と自問しそうになるが、相手は即死罪でも手ぬるいほどの罪人どもだということを忘れてはいけない。
教会の対応の前にパパッと被害者の救済と罪人の有効活用をするというのでお願いする。
晒す?とか提案されたが、サッサと片付けてあちこち再編成しないと国が立ち行かないと泣きついて早めに処理する方向で話をまとめてもらった。
この子供、どう考えてもオカシイ。普通じゃない。かわいい顔して晒す?とか、ないから。
子供の要望で公文書作成の書記官を複数名同行させて面会する。場所は罪人を集めたところ。被害者も隣の大広間に集めさせた。子供はそれぞれを指し示し罪状を口述していく。
基本的にどの者がなんという貴族かは知らないようだ。見分けるのも書記官や我々の仕事のようだ。
子供の言葉は本当にそんなことがあったのか、信じたくないほど悲惨な内容であり、自国の貴族の端くれがただのクズだった、いや、ゲスだったショックがとても大きい。
子供が手をかざすと罪人たちから光が流れて出てひと塊になり、被害者たちの元に行き光が降り注ぐ。子供が被害者たちを休ませるように指示した。
その後子供は、罪人たちのいた部屋に戻るとクリーンを掛ける。なんと血の跡どころか、匂いさえ残っていない。
子供曰く、人が多い場所ほど闇が深い。放置しても解決しないし、自浄作用も上手く働かない。闇が他の闇と結びつくくらいならいっそ一気に打ち払った方がまだ被害は浅いと思われる。
まだまだ闇が濃く巣食う場所は多い。正直祓ったところでまた増えるかもしれないが、とことん濃くなるまで放置したら世界がどうなるかさすがに心配なので、勝手にやらせてもらう、なまじ目につくので気になるし、とのこと。
この子供は、国のことなど気にしていないのだ。むしろ世界をこそ見ていて、そのために神に遣わされたのかも。
決してこの子供のやることを妨げてはいけないのだ。
世界のためにこそ、この子供は必要なのだ。
たくさんの作品がある中で
お忙しい中お読みいただきありがとうございます。




