収穫作業の舞台裏
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こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
side 主人公
大変だ!忙しい!
回復の旅の移動時間にこっそり抜け出して、島に行ったり南部地域に行ったりと、まるで二重生活を送っているかのようだ。
しかも何かあれば、駆けつけないといけない。
忙し過ぎる!
一応、回復の旅は、昼に一度、午後の半ばに一度、宿泊予定の場所で朝に一度広場で回復を行っている。噂が広まっているのかかなりの人数が集まってくるが、皆敬虔な様子で回復を受けては深く感謝し帰っていくため混乱はない。
わたしが乗っている予定の馬車に自動浄化魔法を掛けているので、移動することで大地が浄化されていく。あの白いマントと同じ機能を搭載した!
つまり旅の方は順調だ。
忙しいのは、南部の穀倉地帯の対応だ。収穫が台無しにならないように急がないといけないし。
彼らを派遣したあと、しまったと思ったが今日はもう仕方がない。明日からのためになんとかしないと。
島に残っている者たちを呼び集め、5人1組にして買い出しに行ってもらうことにした。
買うのは古着。お金を渡し辺境伯領の街や村を中心にとにかく買い漁らってもらう。
島で受け入れた段階で、識別章を各自に身につけてもらっている。識別章は雛鳥にも渡している極小の結界発生魔道具でもあり、何かあれば攻撃を防ぎ危険を知らせ、救出までの時間を稼ぐ装置だ。
今回は、さらに皆を散らばすことを考慮して何かあった場合用に帰還機能もついている。ただ自由に転移させるわけにもいかないので、連れて行った場所から島へ帰るという一択だ。ついでに身につけている者のみの効果としている。
辺境伯のところの古着屋を一通り周り、ほかの街へも行って購入してもらう。買った服は持たせた魔法の袋に入れると数を把握できるので、夕方までには2万着の古着を確保した。
一応わたしがクリーンと補修の魔法をかけて、ボロよりはましな状態の服になったと思う。
南部の収穫作業から帰って来た者たちは、順次水場などで身繕いしたあと食事にしてもらった。
その後、男女別、体格別に大別した服の山に案内し、まずは1着自分の着られる服を選んでもらう。
さらに明日追加で行く予定の5千人に服を選んでもらう。しかし、1人1着では少な過ぎるので最低3着はいるだろう。
明日も古着を買いに行ってもらわないといけない。残った人たちも羨ましそうにしているので、まずは全員に服が必要だ。
幸い1人1着は達成。ただ1人3着には到底足りない。3日くらいは、古着の調達係はフル回転だ。
島に残る者たちも、料理担当や採取担当など仕事が待っている。農作業に行く者たちには、各自串焼きと水を持たせる。
ほかにも木の実や果物などがあれば、皆で分け合うので夕方や朝、渡したりしている。畑で作業した者たちに配られるパンは皆持ち帰って夕食や朝に食べるようだ。
なかには、採取担当の者にパンと採取品を交換している者もいるらしい。
パンはよほど人気なのだろう。早く穀物が手に入るといいなと思う。
翌日
やれやれ、とんだ騒ぎになってしまった。
人が減ると優良な人材も減る、結果質の低下が起こる。ご領主さまもお気の毒だが、ひどい目に遭うのは領民で殺されるのもまず下級層からだ。
ましてや自分も関わりのある人々のこと、介入したことは間違っていないと思っているしそれで被害が最小に抑えられたのではないかと思う。
それにしても、まさか農作業の経験者不足のせいで夜のお仕事の人まで駆り出されていたとは!
あの騒ぎの元になった女性の職業は娼婦だったのだ。駆けつけたとき、ごろつきに絡まれて服に手をかけられていたからごろつきをブチのめしたら兵士だった。
あまりに風紀が乱れていて職業倫理もあったもんじゃなかった。下卑たいやらしい男どもについキレて、建前があるのをいいことに吊し上げたのは気分がスッキリした。
それにこのことがきっかけでいいことを思いついたし、ついでに南部の風紀を正してやる、と頭にきていたからか勢いのままに動いてしまった。
まぁ案の定アイツらは極悪非道で粛正したことは喜ばれたが、目の前の処刑まがいの行為は一般市民には刺激が強かったようで引かれてしまった。ドン引きだ。
こればっかりは仕方ないと諦めた。
あの時、服を破られた女性に咄嗟にアイテムボックスから服を取り出して被せたが、あの女性はあのあと大丈夫だっただろうか?
ともかくごろつきのクズどもは片付けた。まだいるかもしれないので、見つけたら始末しよう。
この領地はいいところだ。若者の知り合いだけありご領主さまはいい方のようで、派遣した皆の働きぶりが嬉しかったらしく日当がわりのパンに上乗せを申し出てくださった。
皆の意見を聞いたところ、穀物?とりあえず小麦粉の希望が多かったのでそれでお願いした。
後日、荷車に山積みの小麦粉をもらったので、島の料理担当者にパンやパイの制作を頼んだところ住民たちが泣いて喜んでいた。
あれから、近隣の領地からも収穫作業の人材派遣の依頼が寄せられた。1万人規模を5日程度派遣すれば収穫作業の目処が立つことを実証できたのが大きい。
それに島の事情もある。あの奇跡の日以降も島には人が現れている。今のところ3万近い。それもあり、1箇所づつ人を派遣するのではなく、同時に収穫作業を行える。これで飛躍的に救われる農地が増える。
ちなみにあちこちに人を派遣したら副産物?副次的効果?があった。
島に人が増えたので彼らの今後についても心配していたのだが、人手不足に喘いでいる領地から人材募集のお話しがあったのだ。働きぶりが良く好印象の者たちもいたようで、特に指名で来てほしいといった打診もある。
それほど信頼される働きを見せたということで、素晴らしいと個人的には思っている。
ただこの場合慎重な対応が必要だと思う。
今は人手不足でも人が戻ってきた時もういらない、となると困ると伝えてある。面接などを行い長期的に友好な関係を築けるかお互いによい印象をいだけるか、など大事にしたいところだ。
とはいえ島の許容人数のこともあるし、農業に従事したいとか、職人になりたいとか、兵士なりたいとか、冒険者になりたいとか、商会に勤めたいとか、皆希望があると思う。
ぜひ各自の希望と先方の申し出が一致して、未来がひらけるなら良い事だと思う。
良心的な領地経営を行っている南部の領主たちがあらかた窮地を脱した頃、帝国の役人が税を取り立てにやって来た。
その取り立て内容は、お話しにならなかった。
収穫の半分を納めること。残りの三分の一を軍事物資として徴発すること。
これは人々の暮らしをまるで理解していない行為だった。季節は冬。戦争などもっての外の上、こんなに税をとられたら、領地が成り立たない。
せっかく各地が豊作で、一息つけると思われたのに帝国の暴挙に領主たちは密かに決意した。
帝国に従っていては未来はないと。
このままでは犬死にすると。
そうでなくても、いう通りにした場合餓死者が溢れて死の領地となるだけだと。
領主たちは、神はまさかこのことを予見して己がつかいを遣わされたのか?と震撼したという。
わたしはつかいじゃないよ!
side ある南部地域の領主???
防御結界は何者からも守られる力。国の圧力も同様。たとえば3年耐えたなら、国を憂える者たちが国を変えてくれるやもしれぬ。
そうでないなら、防衛の延長を相談してみればいいのでは?耐えられるだけ耐えるのだ。そしてその間、田畑を耕し恵みを得る。
我らはあまり強くない、だが決して負けぬ。諦めぬ。耐えて耐えて耐えしのび、敵を決して寄せ付けぬならば相手は我らに勝てぬのだ。
理不尽に屈するなと、あの子供ならいうだろうか?民を消耗品扱いさせるな!とおこるだろうか?
子供の理想と笑うだろうか?
でもしかし、その子供に帝国の武力さえ跳ね除ける力があるなら話は別だ。
子供は言った。弱肉強食は世のならい。ならばわたしが強者ならわたしに皆従うのだろうか?
side 主人公
わたしは強い。でも、それは従えたいからではないよ。従わされたくないから強者でありたい。
でも皆そうだと思うんだよね。無理矢理誰かに従わされるのは苦痛だろう。
だからそんな人々を解放してあげたいなと思う。
ほんの少しだけでも、助けられたらいいなと思う。
たくさんの作品がある中で
お忙しい中お読みいただきありがとうございます。