竜たちと番
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こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
side 主人公
「のう、リーダー。この玉と布は、配るほど在庫があるということでよいかの。」
「はい、黄の老、数はある程度ありますよ。」
「では、はじめにある程度使用した後は玉と地図は隠してしまおうではないか。」
「隠す?隠してしまっていいのですか?」
「一定のレベルまで認知されたなら、後は選別を玉と地図に任せれば良い。番を求める強い想いこそ、アイテムを呼び寄せる。そういう仕組みなら、国にも宗教にも血筋にも囚われず恩恵が受けられるのではないかの。」
「そうですね、つまり、誰かに委ねるのではなく自力で魔道具である玉や地図を呼び寄せろということですね。分かりました、それでやってみましょうか。調整はすぐ出来ます。ダメならまた考えればいいので。」
わたしは、テーブルの上にザラッザラッと玉の入ったガラスの器と布の束を出した。竜の皆様や人魚族の族長にも1セット渡しておく。
帝国に行くのならば、と黒の老をわたしが送ることにする。その際、黄の老からの提案で竜たちは2人ないし3人で行動することになった。
番のことになると歯止めがきかない場合があるため、客観的な立場で且つ抑止できる者が側にいた方が良いのではないかという話があったからだ。
この時点で竜の皆様は玉の判定を受け、番のいる者いない者に分かれた。いないと出た竜の方の落ち込みは見ていられないほどだったが、この魔道具は作られたばかり。これから番が現れるかもしれないし、魔道具には測れない要素もあるのかもしれない。今の時点の結果だけで諦めたり、哀しんだらされるのは早すぎる。
とにかく番を迎えに行く者とその付き添いをする者、国に帰り報告する者に分かれることになった。ただ予想より番がいる者が多かったので、ほとんどの者が付き添い役を確保するために白の老たちと戻ることになった。
竜の国にて
なんだかすんごい勢いで、よく知った魔力の持ち主たちが帰って来た。あれほど日頃は落ち着いた方々が取り乱した様子なのが心配だ。
翌日竜の族長たちの連名ですべての竜に集合がかかった。
何事が起きたのだろう。こんなことは自分が生まれてから一度もなかったことだ。
恐々招集に応じる。もともと応じる以外の選択肢などない。下っ端官僚の自分には上が何を騒いでいるのか知る由もなかった。
部屋に何人かづつ呼ばれて玉に手を当てる。光った者だけ更に別室に行く。今度は布を触らされ、浮き上がった模様を転写という魔法で紙に写す。
その後、老のひとりから事情を聴かされる。まさか!まさか自分にも番が?
このところどの竜も番と巡り会えておらず、多くの竜の中に探索を無意識に諦める空気ができてしまっていたようだ。
強大な竜にとって、世界は決して広くはないのに。種を危ぶんでおられた老たちは、今回随分と荒療治を思い切ったものである。
まぁ、番がいるとなったら探すまで。ましてやある程度の方向が分かっているのならすぐにでも向かいたい。
3人1組に分けられ、地図の布を持たされる。このような貴重な物を?3人が順番に番を探した場合、2番目や3人目の竜が当然不利になりやすい。だから、最新の番の居場所を把握できるように持たされた。
サクッと各自旅支度を整えて出発する。貴重な布を失くさぬように、必ず番を伴って帰還できるように。
この1ヶ月後、旅立っていったほぼ100%の竜が番を伴って帰還した。その際老たちから授けられた秘策が功を奏したとか、しなかったとか?
竜たちが魔石に自分の番への想いを込めて渡したことが、比較的混乱なく伴侶を故郷に連れ帰ることに成功した要因だったと思っている。
もともと、番を得る時の逸話の多くが掠奪に近いものが多い。些か乱暴な出会いをその後の振る舞いで挽回する竜の姿が逸話には描かれている。
はじめのひと月で見つけられなかった場合も、ほどなく番を得られた。こうして突然強行された番探しは、半年の間に結論づけられた。
この魔道具の反応はほぼ確かなものであり、かなりの精度で信頼できると。
また今回極めて穏便に事態がはこんだことで、番を得たいと望む種族の動きが盛んになったこと。
これは竜種だけではない。今回の番の探索は世界の隅々に及んでいた。そのため竜のこの動きが世界に与えた驚きと影響は、どうしても大きなものとなった。
しかし竜種に後悔はない。番を得ることは唯一無二の幸福である。
他の種族もその幸福を目の当たりにして、番を求める動きが活発化するのだった。
たくさんの作品がある中で
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