玉と地図
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said 主人公
黒の老は、躊躇うことなく手を置いた。不安も警戒も感じられない。まあ玉は魔道具なので使用する者の不信感など関係ないのだが。それに鑑定すれば危険かどうかは分かることだ。
玉がどう反応するのかわたしも気になる。
玉が光っている。黒の老がわたしを見るので頷いた。これはいる!今はもう玉は光っていない。黒の老が今度は地図に触れると、東西南北を表す記号が浮き上がり北の海に黒い竜がいる。そこから人種が多く住む大陸にむけて光りの矢印が進み、帝国と思われる場所に光が留まる。
黒の老はわたしたちを見渡して、予想よりもずっと落ち着いた様子で言った。
「この魔道具が役に立つかどうかはわたしには判断はできぬ。しかし検証する必要はある。番を求めるのは竜だけではないし、リーダーの言う通り悪用されたら大変だ。もし番を誰かに奪われたり人質にされたり、なにかの交渉に用いられたり、また高い値段で売り買いされたりしたら不幸が生まれるだけでなく争いになってしまう。番を見つけると即蜜月に入ることが多いのは、番を保護する目的もあるのだ。だからこのような物がある時点で、精度はともかく慎重に扱わねばならぬ。白の老よ、頼めるだろうか?お主はこれから国に戻るのだろう?」
人魚のお姫さまの手を引きながら、白の老がこちらに来る。
「ああ、わたしの伴侶を国にいる者たちにも紹介したいしな。それにこんなに僅かな間に青だけでなく、深紅やわたしまで番を得たのだ。この驚くべき事態について対処せねばならぬだろう。それにその魔道具。不安はもちろんある。だが、青の例とてあるではないか?そのような魔道具がなかった時でさえ、番が害される危険はあった。むしろ今までよりも早く、積極的に行動がとれるなら番への危険を回避することにも繋がるかもしれぬ。全ての事柄に良い点、悪い点はつきものだろう。恐れてばかりもいられぬ。悪用されぬよう皆で考えようではないか?悪用されたなら、我らの全力でもって叩き潰せばよい。われらの番に手出しすることがどれほど恐ろしいことか、のちのちまで伝わるように刻みこんでやればよい。」
わたしはテーブルにいくつもの玉と布を置いた。
「その魔道具にあまり情報が映らないのは、黒の老が懸念したのと同じことをわたしも心配になったからです。ですからこの魔道具をどうされるかは、みなさんの意見を重視したいと思ってはいます。でも竜族だけでなく獣人族や魔族、人種にも意見を求めたい。もちろん、意見を聞く場合きちんと良識ある判断ができる方たちにお聞きします。わたしは番が何処かにいるのに出会えないというみなさんの状況が哀しかった。この魔道具を作ったのはほんの思いつきですから、行き当たりばったりでみなさんをかえって混乱させてしまってすみません。でもこの世で唯一という存在がいるのなら、結ばれてほしいから。不幸と幸福の天秤が微かに幸福に傾くのなら、それでいいと思うのです。」
たくさんの作品がある中で
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