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番の想いと感覚共有の魔石

88話以前で出てきた、番の気持ちを共有する魔石についてのお話になります。


どうぞよろしくお願いいたします。


こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

side 主人公


 この世界での番についてのスタンスは、周り(拠点としている辺境伯領)に例があまりないのでよく分からないのだ。


 前世でもたまに、はじめて会った相手とこの人と結婚する、と分かったよという話を聞くことはあった。


 また瞳を覗くと、相手との子供が見える気がしたとか。相手と子供のいる光景を想像したとか、感覚が鋭いのかそういった直感に導かれたご夫婦もいた気がする。


 前世の人間も動物なので、遺伝子的に求めたり好き嫌いがあることはテレビ番組でみたこともある。まぁわたしは一切何も感じたことがないのだが。いわゆるピンときたことがない人もいるのだと思う。


 でもじつを言えば分かったら助かるな、とは思っている。間違わなくてすむのならその方がいいかなと思うし、シンプルで分かりやすいではないか。


 個人的に今度こそ適齢期には婚活を頑張ろうと思っているだけに、あんな風に全力の愛情を向けられたら羨ましいなと思う。ついでに浮気の心配がないのがまたいい。


 わたしは様子を見ていたが、魔石の話にならないので白の大伯に耳打ちしに行った。あっ、と大伯がそうだ、そうだと反応してくれたので後を任せる。


 みんなして、その手があった、と動き出す。あの女性は身分の高い人魚さんで、一族の中では姫君だそうだ。


 本物の人魚姫である。ある意味感動した。しかしそれ以上に番が成立するかどうかが気になってしまい、人魚姫や人魚王子は後回しである。


 人魚のお姫さまの前で、というか皆が見守る中で白の老が魔石を魔力で染め上げる。その後、魔石に想いを込めていく。


 目を閉じて真剣に魔石を握る姿は、威厳のある老からは想像出来なかったものだ。これまでの願い、希望、落胆、諦め、歓喜のすべてを注いでもらう。


 わたしは離れた位置からそっと魔石を鑑定し、感覚共有の魔石かどうか確認した。幸い上手くいったようだ。


 人魚のお姫さまに言葉にしきれない想いと時間を伝えたいと真摯に説明する。本来ならば互いへの理解を徐々に深めるのが良いのだろうが、番を見分ける能力のある方とない方の組み合わせでは仕方がない。なんとか感覚の温度差を埋める手立てになればいいなと思う。


 幸い人魚のお姫さまは白の老に対して、拒否感とか嫌悪感とかは持っていないようだ。まぁ年齢は重ねておられるが白の老もとてもカッコいいので、真っ直ぐ見つめられたら若い娘たちでさえ動揺間違いなしだろう。


 さすがにこの世界の住人だけあり、番への理解はある程度浸透しているのだろう。お姫さまはあくまでも前向きでいてくれて、差し出された魔石を握りしめ静かに受け入れる。


 やさしく温かく、あくまで穏やかに、清らかなほどの光が周囲をお姫さまごと照らす。


 瞑っていた目を開くと、その瞳は同じくらいの温かさをたたえた眼差しで白の老を見つめ返していた。


 「急なことではありましたが貴方様の申し出をお受けいたします。貴方様の大事な番が本当にわたくしのことだと納得致しましたので。こんな方法があるとは存じませんでしたし、正直なところこの歳になって一族の皆が見守る中で求婚されるなんて大分恥ずかしいのですが。この何百年もの間、番がでたとは聞いたこともございませんでした。ましてや竜族との婚姻ですもの。縁をいただけてありがたいと族長に代わりましてお礼申し上げます。」


 了承の返事をもらうと、白の老は人魚のお姫さまを抱きしめた。大勢の見守る中での抱擁に咄嗟に反応できなかったお姫さま。つぎの瞬間、真っ赤になってしまった。うわぁー、熱烈。あれは恥ずかしい。


 今日あったばかりであんな美男子、そのうえ子供たちまで興味津々見守る中なのだ。そう、人魚のお姫さまには亡くなられたご主人との間に3人のお子さんがいるそうだ。

 

 本当は今日は宴の後は島へ向かおうとしていたのだが、どうなるかなあ。

 


 

 

たくさんの作品がある中で

お忙しい中お読みいただきありがとうございます。

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