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人魚族のふしぎ

みなさんの目にとまりお読み頂ければ嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。


こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

side 主人公


 宴は人型で行ってくれるようで、どの人魚さんも足がある。他種族が複数いるので、その配慮はありがたい。ただあの美しく長い尾を間近で見られるかもという期待があったので少し寂しい。


 それにしても美しい種族だね。竜族にまったく負けていない。まとっている色なら、竜族を上回るかもしれない。


 人魚さんたちは、ひとりひとりが光の粒をまとっているように様々な色彩が揺らめき輝いているのだ。髪の一筋さえ、流れるように色合いが変化している。


 別に皆が同じ色というわけではない。それぞれ個性はあるのに、肌のキメひとつ、瞳ひとつ、ふたつとこの世に同じものはない、そんな感じ。わたしの中で1番近い表現は、天然石だろうか?


 天然石も同じ組成で分類はされるが、まったく同じものはないとわたしは思っている。前世の子供の頃から石は好きだった。木登りしたり土をいじるかたわら、転がっている石の中からキラキラしたり、透明な部分のある石やキレイな色の石を集めて持ち帰り部屋の隅に並べたりしていたものだ。


 それ以外にも鍾乳洞とか洞窟とかが好きで、暑がりなこともありひんやりと夏でも涼しいところも気に入っている。


 森の洞穴を去り難いのも、洞窟とかが好きだからかもしれない。光があたると一面キラキラ輝き、様々な結晶の石や岩で形成され大きさも深さも形もいろいろ。


 とても想像力が掻き立てられる。映像でしか観たことはないが、洞窟や鍾乳洞の奥にまんまんと水をたたえた神秘的な湖。小川やもっと深く大きなゴウゴウと流れる地底の大河。大小様々な鏡のように澄んだ池が階段状に連なる不可思議な光景。


 わたしは手の中の小さな一欠片の石にさえ、じっと覗きこむと引き込まれるような世界が広がっている気がするのだ。いくつもの色が煌めいていて、月並みかもしれないけれど語りかけてくるように思う。


 いけない、いけない、思わず前世に浸ってしまった。つまり人魚さんたちは、髪も瞳も鱗のひとつひとつがふたつとない美しさだと感じたのだ。その美しさと石から感じる美しさが似ている気がしたわけだ。


 さてわたしたちのことを皆様とても歓迎してくださり、もてなして下さっている。テーブルには、肉料理、魚料理、サラダみたいなもの、果物みたいなものが所狭しとならび酒が振舞われている。ちなみにわたしはフルーツジュースのようなものをいただいている。


 素朴な疑問として、人魚さんたちは飲み物って日頃は飲むのだろうか?料理って火を使ったりする?お料理を食い入るように見ていたわたしに、落ち着いた雰囲気のやさしそうな女性の人魚さんが話しかけてくれる。


 「気になるお料理がありましたか?よければ、とりましょうね、お小さい方には手が届かなかったでしょう。ごめんなさいね。」


 「ありがとうございます。ちゃんと頂いております。どれもとても美味しいです。ただとっても不思議だったので、誰かに質問したかったのです。」


 「わたくしでよければお答えしましょう。分かることや答えられる事だけですけれど。」


 わたしはさっき頭に浮かんだ事を質問した。どうか失礼にあたりませんように。


 「おっほっほ。そうですね、陸の方ならそう思われるのでしょうね。人魚族と交流がある地域の方ですと、わりと広まっていて不思議に思う方もあまりいないかもしれませんが。」と、気分を害することもなく説明してくれた。


 人魚は人型になって陸でも人間に悟られることなく活動できる。見た目も完全に人型をとれるし、部分的に残すこともできる。ここだけの話、完全に人型をとれることは広めていない。自衛のためである。常にある程度人魚らしさを残すことで、いざという時完全体となり人族に紛れて難を逃れるようにするためだそうだ。なので内緒にしてほしいとのこと。もちろん了承した。


 まず水の中でも当然呼吸には問題がない。海水を取り込んで不要な分?は排出もしている。この時点で必要な水分?や養分は摂取しているわけで、つまり液体を飲む行為は人魚にとっては必要のない行為ということだ。


 人魚さんたちは海水や真水の区別なく生活できる。さらにいえば、完全に人型になり水に浸かることがなくても人間と同程度の水分補給ができれば生活出来るという。


 このとき、水分補給の必要性から飲む行為が不可欠になってくる。そして、嗜好品という側面もうまれ個人の好みによりわかれていくわけだ。


 ただしやはり本当は、水中で過ごす時間がある方が体調や魔力、精神面でもより健全に過ごせるらしい。まぁなにしろ海で生きることを選んだ種族なのだから。


 では食事は?というと、海中でそのまま食事をするとすれば他の海中生物に準じた食事方法となるわけで生のままということになり、獲物は素手で捕まえることもあれば銛をつかうときもあるそうだ。


 そして実は人魚は極めて歯が強いらしい。さらには歯が取れてもすぐに生えてくるのだそうだ。ひえー、そうなんだ、すごい。ついでにいうと、指というか爪も鋭いという。出し入れできるそうで日頃はしまってあるのだとか。


 ……ふ、ふーん、そうなんだ。やっぱり、想像だけだと実際はちがうんだね。わたしは必死にまばたきして笑顔を保った。


 ご覧になりますか?と自然に聞かれたが、今度こそ表情を保つ自信がなくてまたの機会にとお願いした。免疫をつけるために番の人魚さんにあとで見せてもらおう。爪のことだよ、歯じゃないよ。


 いきなり目の前ですごい美人の歯が取れたり爪が伸びたりしたら、ギャップのあまりショックから立ち直れないかもしれない。


 願わくばどうか総入れ歯みたいにとれたりだけはしませんように。どうかお願いします、これ以上わたしの人魚像が崩壊しませんように。


 それから火に関してであるが、人魚さんたちは人に紛れて生活できるわけで、必然的に火を扱うことも出来るし人間の食べ物にも詳しい。食べることにも問題はないし、人間の味覚への理解も深く美味しいというのも分かるそうだ。


 種族の特性や魔力との相性から火魔法は苦手だという。ただ日常での煮炊きだとか、料理することは苦手ではないそうで多くの者たちが嗜んでいるという。またお風呂にも入れて意外にも温泉も好きだという。


 余談だが、海底にも温泉があるそうだ。海底火山があるせいらしい。お肌にもいいそうで、美肌になると人魚さんの間では認識されていて前世と同じだと可笑しくなった。


 ちなみに美髪は海藻のおかげだと、人魚さんたちも考えているようで主食のひとつが海藻類である。特にこの国周辺の近海には、虹色わかめというのが群生していて大変美味しいらしい。


 何より食べると美髪になるそうだ。しかしいくら身体によくても、1000年も2000年も食べていれば飽きもする。結果、ついつい人間の国に遊びに行く者たちが後をたたないらしい。


 人魚の中には閉塞感を改善するため農作物の改良に励んだり、料理の研究を行ったりする者たちがいてそれなりの成果を出しているそうだ。


 また受け継がれてきた文化や伝統を、経験や歴史と共に伝えることも重要視されており、できるなら世界に飛び出した者たちと連絡を取り合い、よりよい影響を与えあえたらと思うが人魚は美しいため常に捕獲される危険が付きまとう。


 捕獲され欲に目が眩んだ者たちが、この国を欲したら大変だ。万が一にも国に攻め込まれないためにも、情報の取り扱いがとても厳しいのだそうだ。海の中にも争いがある上に、陸にまで攻められたら本当に人魚族は滅びかねない。


 保守派の心配も分かるし、改革派の未来への不安も分かるので皆様悩んでいるところなのだ。

 


 


 


 


 

たくさんの作品がある中で

お忙しい中お読みいただきありがとうございます。

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