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クラン雛鳥

みなさんの目にとまりお読み頂ければ嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。


(閑話になります)


こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

side ある冒険者見習いの少年???


 ア〜ア、しくじった。皆無事かな。ちゃんと森を抜けられたかな。


 僕は首から下げたお守りを握って、一瞬だけ悩んでリーダーに助けを求めた。


 今日の僕たちのパーティは、森の浅い場所での採取に来た。今回のメンバーは皆防御がメインで戦闘力は高くない。


 だからこういう構成メンバーの時は、特に無理をしないことにしている。ちなみにいつも同じメンバーというわけではない。同じクランだけど、パーティは固定せずいろいろな人や役割の人と組むから。


 うちのクランではいろいろなことを日頃から試していて、前衛、中衛、後衛とバランスがいい場合もあれば、前衛ばかり、魔法使いばかり、タンクばかり、斥候ばかりなど偏った編成での連携も練習する。


 いつもよい状況を作れる訳ではないかららしいが、逆にどんな時でも有利な状況を作れたらすごいのでは?と思ったりもする。


 目的地につき、お互いが見える範囲で採取をはじめる。場所を移動するときも声をかけあう。だけどつい採取に気をとられて、ひとりだけ離れてしまっていた。


 採取しながらも周りを気にしなけりゃいけなかったのに。


 「おいっ。」と、焦ったような仲間の声が少し遠くに聞こえてハッとした。振り返ろうと身動きした時、足元が、消えたように感じた。


 あの声はいつも周りに声かけしてくれる奴の声だ。あいつは面倒見が良くて、僕が見えなくなったことに1番に気づいてくれたようだった。


 慌てて「来るな、落ちるぞ。」と皆をとめる。ガサガサと足音が近づいて来た。


 「どこだ?」

 「怪我してないか?」

 「なんかこの辺り、足元が変だぞ」


 口々に声をかけ合いながら、僕を探してくれている。


 僕は地面の隙間のような場所に落ちたようだ。草に隠れて見えなかったのだ。それでも足元もちゃんと確認しないとダメなのに。蛇とかだっているかもしれないから。


 僕は怖かったけど、足元はしっかりしていたから落ち着こうと深呼吸しながら皆に話す。


 「細い裂け目に落ちたみたい、怪我はないよ。大丈夫、あまり近寄っちゃダメだ。」


 「分かった、大丈夫なんだな?」1番冷静なあいつが答えてくれる。「いいか、動くなよ。あとリーダーからもらったお守り持っているか?」


 「ああ、持ってる。」


 「使え、この辺りは森の中でも浅い方なのに、足元が危険だ。僕たちは戻ってギルドに報告する。おまえは、リーダーのお守りを使って助けを待つんだ。決して焦るなよ。リーダーなら絶対助けに来てくれる。」


 分かった、と返事をすると皆が慎重に遠ざかって行くのが分かった。正直パーティのメンバーの気配が周りからなくなると、とても心細かった。でも泣き言を言っている場合じゃない。


 本当はお守り、まだ使いたくない。ましてや自分のミスでリーダーに助けて、なんて情け無い。でももう誰かに助けてもらうしか、ここから上がる方法はないと思う。


 お守りを使おうと決めた時、また足元が崩れてしまった。お守りをしっかり握ったまま少しの間気を失っていたようだ。


 気がつくと木に引っ掛かっていた。やばい、と一瞬焦ったが仲間の言葉を思い出して少し落ちつく。あれからどのくらい時間がたったんだろう。皆無事にギルドに着いたかな。


 お守りを失くさなくて良かった。今度こそリーダーに助けてとお守りを握ってお祈りする。このお守り、自動発動する時と意識して発動する時とあるらしい。


 意識を完全に失うと自動発動するらしいので、僕が気を失っていたのはきっと少しの間だったのだと思う。


 お守りが手の中から消えて僕の周りを淡く輝く結界が包み込む。その時さらに木が折れて地面に叩きつけられる、はずが結界のおかげでフワフワと地面に降りる。


 地面についたから思わず立とうとして痛みに気がついた。足をざっくり切っていて血が流れていた。慌てて背負っていた荷物から薬と布を取り出して手当てする。


 手の届く場所の怪我で良かった。自分で手当てできたし、でもさっきは怪我してなかったから2度目に落ちたときにやっちゃったのだろう。


 見れば地面に少し血が溜まっている。あのまま気を失って止血しなかったら不味かったかも。でも大分血の流れ方がゆっくりだったから、そのうち自然に止まったかもしれない。


 まぁ傷をそのまま放置して大丈夫か、という判断ができるほど経験を積んではいないからわからないけど。


 そのとき結界にリーダーからの伝言を見つけた。光る文字でもう少し待て、助けに行く。と書かれており、それを読むとホッとして座りこんでしまった。


 なんとなくクラクラする。血を失ったからかな。荷物に入れてあるお昼とは別の干し肉と水を出して食べる。何かしていないと不安がまた大きくなりそうだったのだ。


 食事のおかげか、血の気が少し戻ったように思う。膝を(かか)えて気配を抑える。今更遅いかもしれないが、森の獣たちを刺激しないようにする。


 あれだけ派手に落ちてきて、怪我までしたら匂いで寄ってきそうだ。日が翳ってきた。ここは薄暗くて魔獣とかも出そうな感じがする。


 ここは半分地下のように湿った感じがする。地下に続く崩れた地上部分から落っこちたような?


 そんなふうに思っていたからか、カサカサ、ヒソヒソと神経が逆撫でされるような気配が近づいてくる。


 なんだかたくさんの気配に取り囲まれているような?血溜まりに何かが群れている。なんだろうと結界に顔を引っ付けて見ていると、いきなり何かが飛び出してきた。


 カツン…と結界に体当たりしてくる。うへぇ、牙ネズミだ。周り中から湧き出すように集まってくる。森の浅い場所だから大型の獣とかではないけれど、怪我して動けない状態だとかなりまずい。


 リーダーの結界で完全に防いでいるからいいけれど、それでも気持ち悪い。牙ネズミは魔石はとれないくらいの小物でも魔獣だ。


 普通のネズミだって群れたら危険なのに、魔獣だから力も強いしネズミより大きい。その上牙が鋭くて群れで行動する。


 弱っている獲物には群れで一斉に飛びかかり、覆い尽くして食いちぎってこようとする。とてもネズミと侮れない奴らだ。


 結界の周りをびっしりと取り囲まれて、次々体当たりされると結界がもつか不安にかられる。でも何人かの話だと、この結界は小さくても頑丈で24時間は破られないから安心していいらしい。


 でも怖い。前からも後からも飛びかかってきて、よだれを垂らしながらすごい形相でかわいくない。っていうか気持ち悪い。


 同じネズミでもふわふわちんまりしたのならかわいいかもしれないけれど、こいつら毛皮もぬめってしてて黒ずんでるし。触られなくない。


 周りがさらに暗くなってきて、もうこのまま死んじゃうかもと思ったとき辺り一面ビカッと光り目につく限りの牙ネズミが串刺しになっていた。


 氷の長い針で地面に縫い止められてその後、身体全体を氷漬けにしたと思ったら粉々に砕け散った。シーンと静かさが戻り、さっきまでのうるさいくらいの血生臭い気配が消えた。


 夢かと思うほど周りには牙ネズミの跡がない。粉々になった後、サアーッと吹いた風が何もかも吹き払ってしまったみたい。


 「遅くなってごめんね。もう大丈夫、早く街に戻るよ。」


 そこには飄々としたリーダーの姿。安心のあまり泣いちゃったのは内緒だ。


 リーダーは怪我をサクッと治し、僕に肩を貸してくれる。そのまま魔法陣みたいなのが光っているところまで行くと、もう辺りの景色が変わっていた。


 さっきまでの、埃なのかカビなのか分からない変な臭いのする場所から街の門のすぐ脇に出た。リーダーは内緒ね、と笑いながらギルドに向かう。


 ギルドの中にパーティのメンバーがいて、リーダーと僕を迎えてくれた。


 リーダーは、すごいなあ。でもとっても怖かった。これからは、調子に乗ったり、注意を怠ったりしないように気をつける。


 いけないって分かってたけど、もっともっと気をつける。


 リーダーからは何も言われなかった。あの時の僕の顔を見て、だから何も言わないでくれたんだと思う。


 

 

 


 


 


 



 


 

たくさんの作品がある中で

お忙しい中お読みいただきありがとうございます。

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