表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第三部番外編連載中】王鳥と代行人の初代お妃さま  作者: 梅B助
第二部 夜空の天人鳥の遊離
100/427

プロローグ〜未来の旦那さま〜

大変お待たせしました、本日より第二部開始です!



 薄暗く陽の光があまり入ってこない書庫の一角。その人は隠れるように、その場所に座っていた。


『……先生?』


 読んでいた本について尋ねたい事があった少女は、その人に声を掛ける。その人は顔を上げると少女を見て、ふわりと皺の目立つ目元を和らげた。


『ああ、ちょうどよかった。こちらに来なさい』


 機嫌良さそうに手招きをし、少女はキョトンとしながらも元来素直な性質なので、何の疑いもなく側に寄る。


 その人は一枚の姿絵を見せてくれた。


『将来、君の旦那さまになるかもしれない人だよ』


 優しくそう言うその人に、だが少女は困ったように眉を八の字に下げ、首を横に振った。


『なれないわ。だってソ……わたくしとこの方は、身分の差があるもの。そんな事を望んでしまえば、この国が荒れてしまう。そんなの、もう嫌よ』


 その姿絵には、とても高貴で見目麗しいお方の姿が描かれていた。


 少女は彼を知っていた。将来一度は対面する事になるが、それだけだ。旦那さまになんて絶対望めない。望んではいけない。知らない事がまだまだ多い少女でも、そのくらいはわかるのだ。

 痛みを堪えるように、ギュッと胸に抱えた本を握り締め、(うつむ)く。そんな少女をその人は、優しく髪を()いて(なだ)めてくれた。


『そうでもないよ。確かに一番目は難しいけれど、二番目以降なら、比較的誰でもなれるんだ』


『……二番目?』


 不安そうな顔のままその人を見上げれば、その人は少女に言い聞かせるように両肩に手を乗せ、言った。


『君は愛し、愛される幸せな結婚を望んでいるかい?』


 そう言われて、少女は即座に首を横に振る。幸せな結婚という最も幸福な形を、まるで怯えるようなその態度に苦笑していたら、少女は一段と困ったような表情を見せる。


『そうだ。望んでいないね? なら、君はそこを目指しなさい』


『どうして?』


『この子は君にきっと惹かれる。だから、もし会ったら――――』



 

 ――結局、姿絵に描かれた彼を旦那さまに望む道は完全に潰えたけれど、少女は、その時に交わした約束を、ずっと守っている。



本日のみ2話更新します。

次回は6時更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ