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【第三部番外編連載中】王鳥と代行人の初代お妃さま  作者: 梅B助
第一部 黄金の水平線の彼方
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プロローグ〜王鳥様との出会いと求婚〜

初投稿&初連載。よろしくお願いいたします!

 春の季節に入ったある日の朝。凍えるような風も幾分か収まり、ほんのり暖かさを感じられるようになった事に少女は淡く口元に笑みを浮かべ、上機嫌で歩いていた。


 ミルクティーのような色合いの髪を右肩側で纏めてリボンで緩く縛り、前に流されたその髪はふわりと柔らかそうで、琥珀色の瞳は見る人を穏やかな気分にさせるかの如く優しく垂れ下がっている。

 外に出る機会が多いので軽く陽に焼けた肌は、だがシミ一つなく手入れが行き届いていて、なかなかパーツも整っていると言っても過言ではないだろう。

 デビュタントを先日済ませたばかりの十六歳だが、全体的に発育が良く、平均よりも少し高めの長身で、落ち着いた穏やかな雰囲気も相まって年齢よりも大人びて見せていた。


 屋敷の裏手にある人気(ひとけ)のない、木に咲き始めた白い花と野花が目を楽しませる自然豊かな林道を、白いフリル付きのクリームイエローの日傘を差しながらのんびり歩くこの見目麗しい少女の名はソフィアリア・セイド。このセイド領を統べる男爵家のれっきとしたご令嬢なのだが、他所(よそ)行きの村娘のような服装で護衛も侍女も付けず、不用心に一人で歩いていた。

 所謂(いわゆる)お忍びなのだが、そもそも辺境の田舎過ぎて居住区からも田畑からも遠く離れたこの場所では人とすれ違う事すらないうえに、一応(いちおう)私有地だから大丈夫だろうと慢心していたのだ。だがデビュタントを迎えた今、今後はこのような無茶はやめるべきかもしれないと少し反省しておいたのは先程までの話で、今は頭からすっかり抜け落ちてしまっていた。


 暖かな陽気に誘われて、鼻歌混じりで緩やかな坂を登っていたら、一瞬だけ影が差したのでピタリと動きを止め、空を仰ぐ。するとここで出会う(はず)のない姿を見つけて目を見開き、思わず口元に手を当ててしまった。



「まぁ……!」



 それは一見すると、とても大きな鳥の姿をしていた。



 変わった色彩の黄金の瞳は凛々しくも鋭くソフィアリアを射抜き、紺混じりの黒から青へとグラデーションされた頭頂から後部の上面、翼、長く立派な二股の尾羽は、まるで夜空を切り取ったかのようで見惚れるほど美しかった。

 顔の下半分から下面にあたる胴体はシルクのような艶やかな白で、紅を塗ったかのような妖艶な赤い(くちばし)がなかなか目を()かれる。


 全長二メートル半程はあるだろうか。尾羽は全長の優に二倍はありそうでもっと大きく見えるが、ソフィアリアの上空で軽く旋回した後に美しい羽をはばたかせ、リリリと耳に心地良い、まるで歌っているかのような鳴き声を響かせながら空中停滞(ホバリング)してこちらを見ている彼の御方は、鳥の姿を模しているがこの国の……いや、世界唯一の王鳥(おうとり)――この国を護る最も尊い、神様だった。


 



 ――後に後世語り継がれる事となる王鳥と王鳥妃(おうとりひ)はこうして何の前兆もなく、うっとりするようなロマンスや華やかしいシチュエーションもなく、唐突に出会った。

 この出会いが辺境の田舎である男爵家のご令嬢でしかなかったソフィアリアの人生に大きな波乱を呼び、この国の命運すら大きく変える事になるのを、出会ったばかりの二人はまだ知らない。



 物語は今、こうして幕が上がったばかりなのだから――

本日のみ導入部分全9ページ分を1〜9時に毎時投稿させていただきます。

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