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第52話 第一王子・レオンハルト

「やあ、遅れて済まなかったね」


 アレフ王子に何処か似ている爽やかな笑顔で挨拶をしながらやってきたレオンハルト王子、その後を黒髪の男性、王家の紋章が刻まれた白い鎧を纏い、腰に剣を携えた姿、おそらくレオンハルト王子の護衛騎士が入ってきた。


「レオンハルト兄様、遅いことはありませんよ。無理して時間を作り来て下さったのは承知です」

「いやいや、待たせてしまったのは事実だ。それに協力者だからと無理に言ったのは此方の方だ」

「そうでしたっけ? ところでリヒャルト兄様は?」

「それが、今、行っている実験が上手くいきそうだと言って離れられないそうだ」

「ああ、例の新薬の。それは仕方ないですね」


 穏やかに談笑する二人を見て、仲の良い兄弟だと思った。

 幼くして母であるヒルダ様を亡くしたアレフ王子は王妃様に育てられ、その関係かレオンハルト王子、此処には居ないリヒャルト王子はアレフ王子を大層可愛がっていると聞いたけど本当なんだな。


 二人をジッと見ているとレオンハルト王子の護衛騎士と目が合った。

 見つめすぎたから不謹慎だと思われちゃったかも。慌てて、目を逸らすと。


「アリスティア!!」


 私の隣に居るアリスさんに駆け寄ってきた。


「・・・・・・久しぶりね、ライオネル兄様」


 アリスさんはニコリと笑いながら立ち上がった。

 口ぶりからして、この護衛騎士さんはアリスさんのお兄さんなんだ。よく見るとアリスさんに似てる。アリスさんを男性にしたらこんな感じになるのかな?

 それはそうとアリスさん、本名はアリスティアって言うのか。


「元気そうだな。彼奴のせいで君が出て行ってしまったときは心底、心配したよ」

「ええ、元気よ。ライオネル兄様も元気そうで」

「ああ、元気にやっているよ。そうそう彼奴は君が出て行った後、父様に勘当を言い渡されたよ、祖父の言う事しか聞かず自分勝手な振る舞いをする彼奴を前々から勘当するつもりだったらしい。

 早めにやっていればと後悔していたよ。後任は従兄弟のエドワード兄様になった、武術にも優れ、当主としての素質もあるから安心だ」

「・・・・・・そう」


 なんか、温度差がある。

 アリスさんは嫌がっては居ないんだけど冷めてる、反してアリスさんの兄であるライオネルさんは再会した嬉しさからか高揚している。アリスさん、もしかして、兄であるライオネルさんに会ったのは良いけど実家関連の話は聞きたくないのかな。


「ライオネル」


 レオンハルト王子が勢いよく喋り続けるライオネルさんに声をかけると呼ばれたライオネルさんはビクリと肩を揺らし、足早でレオンハルト王子の元へ。


「急にお側を離れ申し訳ございません」

「いや、家を出た妹との再会に喜んでしまうのは仕方ない。だけど、喜びの余り勢いよく喋り続けるのは良くないよ。妹さん、困惑していたよ」

「・・・・・・すみません」

「さて、君がローリエ家の次女、メアリー嬢だね。私はレオンハルト、レオンハルト・ジュワユーズ・アレクサンドル。宜しく」


 ボーとやり取りを見ていたら急に話しかけられた私は勢いよく立ち上がってレオンハルト王子に挨拶をする。

 遠目でしか見た事がないレオンハルト王子に声をかけられて緊張MAXだけど挨拶はしないと!


「は、はい、メアリー・ローリエと申します。此方こそよろしくお願いします」

『にゃはははは! 下僕に似合わないお淑やかな挨拶にゃ!』


 カーテシーで挨拶。

 後ろにいるタマ! カーテシーで挨拶する私を見て笑うでない!! 私だって似合わない挨拶だって解ってるんだから!!


「そんなに畏まらないで、此処は公式の場ではないのだから」


 いや、畏まるよ。

 公式の場じゃなくても王族に対して畏まらない人、居る?


『ふ~ん、此奴が第一王子にゃ? ワガハイの方がイケメンにゃ!』


 居た。

 いや、此奴は猫だから人じゃない。


「それじゃあ、リヒャルト兄様は居ないけど揃ったことだし・・・・・・。作戦会議しようか!」


 レオンハルト王子が席に着くとアレフ王子は嬉しそうに声をあげた。






「嗚呼、明日のお茶会に着ていくドレスはステファニーにとても良く映える」


 ローリエ家では、明日、王族主催のお茶会に着ていくドレスをダニエルは溺愛する娘、ステファニーと共に見ていた。

 白をベースとしたシンプルな作りのドレスではあるがスッとした美しいドレスだ。


「これを着るステファニー・・・・・・。素晴らしい、本当に素晴らしい!! だが、このドレスを着て隣に居るのは私ではなく、あの男、第三王子だと思うと怒りすら感じるよ。

 ステファニー、お前もあの男よりも私の隣に立ちたいだろ?」


 このドレスを着たステファニーを想像しダニエルは非常に興奮したのち、隣に立つアレフに嫉妬心を剥き出しにする。

 そんな父をステファニーは。


――本当に気持ち悪い男。


 冷めた目で、無表情で見ていた。

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