表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/109

番外編 サスケとスリ

 メアリーがオリヴィエに来る数日前の話である。


「ふ~、よいしょっと!」


 シシリーは自身の店に並べるポーションを店に運んでいた。


 本業は魔法魚専門釣り師(ハンター)であるが魔法魚が養殖業により容易く手に入るようになったこの時代、魔法魚の依頼は少ない、その為、副業として魔術薬師をしている。

 副業に魔術薬師を選んだのは調薬魔術の才能があったのもあるが一番の理由は魔法魚で作る薬に興味があったからだ。


 持ってくる前にも確認したがシシリーは薬に異常は無いか確認しながら棚に並べていく。

 並べ終えると、薬を並べる前にも確認したけど、もう一度、店内にゴミが落ちてないか確認し、店の看板を出しに外に出た。


「シシリーさん、おはようございます」


 外に出るとランニング中のサスケと出会った。


「サスケくん、おはよう。今日もランニング?」

「はい。朝早くから身体を動かさないとしっくり来なくて」


 爽やかに笑うサスケを見て、シシリーは三日前はあんなに凹んでたのに今はすっかり元気だなと思った。


 三日前、シシリーが友人のアリスに渡したチラシを持って、サスケは店に訪れた。

 旅人だと言うサスケに久々の上客とシシリーはやや高めの薬を売りつけ、いざ会計という時に財布がポーチごと奪われた事に気付いたのである。


 オリヴィエはジュワユーズ国内の中でも一、二を争う観光都市。年に数千人もの観光客がやってくる。その観光客を狙って、スリが横行していた。

 イメージが悪くなるとオリヴィエの守護貴族であるマッシャー家はスリ撲滅を目指し、治安維持部隊を中心に活動、様々な対策を出しているが減らない。

 スリが減らない理由、スラム街の存在だ。


 一見華やかなオリヴィエにもスラム街は存在する。スリをするのはスラム街に住む子供達だ。つまり、金が欲しい貧しい子供達がスリをしている。

 スリを減らしたいのならスラム街、貧富の差をどうにかしないと無理だろうとシシリーは思うのだ。


 話を戻すが、スリに遭ったと解った瞬間、サスケは顔を青褪めさせショックを受けていたのは誰から見ても解った。

 そこをシシリーに逢いにきたエヴァンスが声をかけてきて、サスケがスリに遭った事を話すと念の為、海上騎士団に被害届を出しに行こうとなり、エヴァンスに預ける形でサスケはシシリーと別れた。

 それから数時間後、エヴァンスを介してサスケが釣り人協会が運営するレストラン、漁師の唄で働く事になったのをシシリーは会長のマリオンから知らされるのであった。


・・・・・・・・・・・・


 みすぼらしい格好をした少年はフラフラと路地裏を歩いていた。


 少年の頬は紅く張れていた。殴られたのだ自分の父親に。


 三日前、観光客である男からナイフで腰に付けていたポーチを切り取り、財布を盗んだ。

 それを金遣いの荒い父親に黙っていたのが、今日、バレてしまい、どうして今まで黙っていたと殴られたのだ。

 隠していたのは一瞬で金を使うからだと言えば、更に殴られ、そして、もう一度、盗んでこいと言われた。

 断れば、殴られる。だから、少年は父親の言うとおり、賑やかで人が多い、自分のようなみずぼらしい姿でも目立たない、三日前、自分が財布を盗んだ場所へ、オリヴィエ一の大通りに向かった。


 ナイフを隠すように持ち、獲物を探す。

 キョロキョロと辺りを見渡していると見覚えのある男が目に入った。

 三日前、財布を盗んだ赤毛の青年。盗まれた経験があるというのに青年は腰に、盗まれやすい場所に新しいポーチを付けている。


――また盗める。


 少年は赤毛の男に躙り寄り、ナイフでポーチを切り取ろうとしたとき。


「やあ。君とは二度目かな?」


 ナイフを持った手を掴まれた。


・・・・・・・・・・・・


「この子が君の財布を盗んだ子でいいんだね?」

「はい。間違いなくこの子ですよ」

「最初から解っていたんだね。それならば、なぜ、君は三日前、最初に盗まれた時に何もせず、シシリーさんの前で驚く演技をしたんだい?」

「ああ、それはこの子が必死だったのでつい逃がしてしまったんです。演技の件はボクが財布を盗まれたことに気付いてなかった演技をしないと不思議に思うでしょ?」

「・・・・・・成る程ね」


 今、少年は海上騎士団第四部隊本部に居る、赤毛の男に連れてこられたのだ。


 少年は盗みをした自分を治安維持部隊ではなく騎士団に連れてきたのか解らなかったが赤毛の男は自分が盗んだことを知っていて敢えて逃した事しか解らない。


 赤毛の男――サスケと話していた海上騎士団の青い鎧に身を包んだ青年――エヴァンスが声をかけると少年はビクつきながら返事をした。


「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。僕達は君を治安維持部隊に連れて行く、だけど、其処に行けば君はちゃんとした生活を送れるよう手配してくれるよ」

「ほ、本当?」

「ああ、騎士である僕が誓おう」


 エヴァンスは安心させるように笑い、少年の頭を撫でると少年はボロボロと涙を流す。


「本当? あの人、父ちゃんから離れて暮らせるの?」

「そうだよ。君は父親に酷い事をされてるんだね」

「うん。機嫌が悪いと殴ってくるし、お金は全部、自分のためにしか使わないんだ。もう、あの人と暮らしたくないよ・・・・・・」

「・・・・・・君のお父さんってどんな人なんだい? ボクに教えて欲しいな」


 今まで黙って聞いていたサスケが父親の話に食いつき、少年に父親の容姿など詳しい話を聞き出す。

 エヴァンスはそんなサスケに何かするか見当はついたが黙っている事にした。


 その夜、大怪我を負った男が騎士団本部の前に捨て置かれていた。

 男は九尾の獣に襲われたと魘されていたという。


 少年のその後だが、エヴァンスの言うとおり、治安維持部隊によって真面な生活を送り、今は漁師を志し、ある漁師の元で働いてるそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ