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第26話 フィッシュハンター

 入り口での会話をそこそこに店員であるサスケさんに案内され、マリオンさんが座っている席に案内された。


「よう! 待ってたよ、嬢ちゃん達!」

「お久しぶりです、マリオンさん。このたびは態々・・・・・・」

「そういう堅苦しい挨拶はなし!! 今回はメアリー、アンタの歓迎も兼ねての昼食なんだからさ!!」

「そうだったの? てっきり、面倒くさがりの私をおびき出す為って思ってたんだけど」

「まあ、それもあるな!!」


 シシリーさんの言葉にマリオンさんは豪快に笑った。

 シシリーさん、食べることが好きらしい。だから、奢ると言えばホイホイ付いてくると考え、この昼食会を開いたそうな。

 それに加え、シシリーさんの友人であるアリスさんが来るとなれば頷くしかないだろうと考えもあったらしい。アリスさんを誘ったのもシシリーさんの友人だって解ってたからか。

 マリオンさんって、どこからそういう情報を手に入れたんだろう?


「まあ、今はそれは置いといて。料理が来るまでフィッシュハンターの話をしよう」

「フィッシュハンター?」

「魔法魚を釣る釣り師の事を私らはフィッシュハンターって呼んでるんだ。フィッシュハンターを詳しく説明すると魔法魚の中でも魔術を使う魔法魚を相手にする釣り師の事を言うんだ」

「魔術を使う魔法魚!? そんなのは居るんですか!?」

「魔法魚ってのは他の魚に比べて知能が高い。自身に魔力が宿っている事を自覚し魔術を使ってくるのがいるのさ。中には人語を解する魔法魚も居たそうだ」


 そんな魔法魚を普通の漁師や釣り人が敵うわけない。怪我人が続出し、魔法魚漁は危機的状況に陥った。

 だが、そんな中でも立ち向かう者、後にフィッシュハンターと呼ばれる人達が現れた。

 フィッシュハンターにより絶望的だった魔法魚漁は盛り返し、その数年後にはフィッシュハンター達を援助するために釣り人協会が設立、今に至るのだという。

 しかし、近年、養殖により魔法魚が比較的入手しやすくなったのと協会の前会長――マリオンさんの元夫が五年前に起こしたやらかしによりフィッシュハンターになる人は減少傾向にあり、マリオンさんはそれが今一番の悩みだと話す。


「前会長、私の元旦那だけど、ハンターに支払う報酬金を横領してやがったんだ。愛人に貢ぐために」

「え、ええ~・・・・・・」


 前会長のやらかし、それは愛人に貢ぐためにハンターに支払われる報酬金の横領だった。

 報酬金が支払われないと大勢のハンター達が押しかけたことにより発覚、前会長と愛人は開き直り、逃走・・・・・・しようとしたがマリオンさんが捕まえて、今は二人揃って堀の中。

 その後、マリオンさんが会長となり、何とか立て直した。


「あの手この手で協会を立て直したけど、会長が代っても協会は信用できないって言われちまって有能なハンター達が引退、おかげでハンターになりたいって奴も減っちまった」


 ふ~と溜息を吐きながら上を向くマリオンさん。

 今のハンター事情を考えると私みたいなド素人、一回だけとんでもない魔法魚を釣り上げた人間でもスカウトしてハンターを増やしたいって事なんだろうな。

 もしかしたら、私がハンターになって有名になれば増えると考えてるのかな?

 私、責任重大な立場? いや、それはさすがに考えすぎか。


「それでカイチョー期待の星のメアリーちゃんを、私、シシリーに指導してほしいって事?」

「ああ、そうだ。ハンターの中で一番の実力者であるアンタに頼みたい」

「ん~・・・・・・。ねえ、メアリーちゃんはどうしてカイチョーのスカウトを受け入れたの?」

「え・・・・・・?」


 此処は正直に初めて釣ったときのような綺麗な魔法魚をまた釣りたいって言えばいい?

 でも、それでハンターになる資格なしって言われたらどうしよう。

 う~~~~~~ん、どうしよう。

 考えてる私をシシリーさんがニコニコと笑って見てる、怖い!!

 これはもう腹をくくって正直に話した方がいいよね!!


「私は、初めて釣った魔法魚、緑の風を纏った綺麗な魔法魚をもう一度見たくて釣りたくて後悔したくなくて受け入れました!!」


 半ば叫ぶように理由を話す。

 この場にいた皆がシーンと静まりかえる。え? 私、変なこと言いました?


「あっはっはっは!! 成る程、それが理由ね。いや~、元気よく大声で言うとは思わなかった」


 しばらくしてシシリーさんの明るい声が響く。

 急に静かになったから心臓に悪かった。けど、この雰囲気は大丈夫そう・・・・・・?


「ごめん、急に笑って。メアリーちゃんの事、バカにしてるつもりはないよ。まあ、私も少し圧をかけるような言い方したし緊張させちゃったかな?」

「え、まあ・・・・・・。少しは」

「正直だね~。でも、其処も気に入った。カイチョー、この子の指導、任せて!!」

「引き受けてくれるんだね?」

「はい。メアリーちゃん、後悔したくないって言ったよね?」

「はい、言いました」

「なら、絶対に後悔させないように鍛えるから覚悟してね♪」

「は、はい!! 頑張ります!!」


 こうして、私はシシリーさんという師匠が出来た。

 これで私のハンター生活は明るい!!

 いや、待てよ、私、魔法魚と戦う事になる? 大丈夫なの? 戦ったのは魔法の森での一件だけ、やってけるの私!?


「あの~、注文した料理持ってきました」


 戦う事に不安になる私の元に場の空気に遠慮してか気まずそうにサスケさんが料理を持ってきた。

 とりあえず、料理を食べよう。そうしよう。

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