第25話 釣り人協会
ワイバーン便がゆっくりと下降しながら下ろした先は大きな魚が描かれた看板、釣り人協会の建物だった。
「メアリーちゃ~ん!!」
籠から降りたら、ロージンさんの孫娘、アプリコットちゃんが出迎えてくれた。
ブンブンと大きく手を振って、此方に駆け寄ってくるとすかさずタマがアプリコットちゃんに甘える。
『ごろにゃん♪』
「きゃ~! かわいい~! メアリーちゃんの飼い猫?」
「う、うん、タマって言うの。付いてきちゃったんだ」
「付いてきちゃったのか~。ふふ、可愛いね~」
『にゃ~。お嬢ちゃんの方が可愛いにゃ~』
全く可愛い子に弱いんだから!
デレデレしているタマをアプリコットちゃんは抱き上げた。重くないのかしら?
「釣り師の件、受け入れてくれたんだね! 同い年ぐらいの釣り師いないから嬉しい~」
「そうなんだ。若い釣り師さんって少ないの?」
「うん。ここ数年、マリオンさんの元夫、前会長のやらかしもあるんだけど釣り師になる人は減ってるんだ。だから、マリオンさんは必死に釣り師の人数を増やそうと頑張ってるの」
成る程、私をスカウトした理由にはとんでもない魔法魚を釣り上げたのもあるけど、近年、釣り師になる人が減ってきてるのもあるのか。
それはそうと、マリオンさんの元旦那さん、釣り人協会の前会長さんだったんだ。やらかしって何やったのか気になる。
「まあ、立ち話は後にしてマリオンさんの所に行こうか!」
「それじゃあ、私はこれで・・・・・・」
「待って下さい! 貴方もご昼食にとマリオンさんから言われています」
「部外者の私も良いの?」
「はい。それにメアリーさんに紹介したい釣り師さんはアリスさんの知り合いみたいですし」
「知り合い? ・・・・・・ああ、彼女ね。それならご相伴にあずかるわ。彼女とは数年会ってないしね」
意外な接点。
どうやら、マリオンさんが私に紹介したい釣り師さんはアリスさんの知り合いらしい。
アリスさんの様子から特に苦手とかそういうなさそう。
アプリコットちゃんは此方ですとタマを抱きかかえながら、協会内にあるレストラン・漁師の唄に案内した。
ご飯を食べながらとは聞いてたけど、釣り人協会内にレストランがあるんだ。
「此処は協会で運営してる魚専門料理店なの。美味しいって評判で、協会利用者だけでない人も来るほどなんだ」
『にゃ~。そんにゃに美味い店にゃのか。じゅるり』
「中に入ってマリオン会長に会いに来ましたって言えば店員さんが案内してくれるよ」
「アプリコットちゃんは此処まで?」
「うん、アタシはもう昼食は済ませてるからタマちゃんの面倒見てるよ」
『にゃ・・・・・・?』
ニコニコ顔でアプリコットちゃんはタマを連れていった。
哀れタマ。まあ、レストランだし、さすがに猫は入れないからね。
私に助けてくれと懇願するタマにではなくアプリコットちゃんにタマのことお願いね~と言うとタマは裏切り者~と叫んだ。
さあ、中に入ろう。
「すみませ~ん。店員さん、いらっしゃいますか~?」
「はい、何名さ・・・・・・。メアリーさん?」
中に入り。元気よく店員を呼ぶとやってきた店員が私の名前を呼ぶ。
突然、見知らぬ人に名前を呼ばれた私は驚いて、店員を見る。そこで店員は見知らぬ人でなかった事に気付く。
「さ、サスケさん!?」
やってきた店員はサスケさんだった。
どうして此処に?
「ひ、久しぶりだね」
「そ、そうですね」
もう会わないかもと思ってた人との再会に気まずい雰囲気が流れる。
ど、どうしよう。此処は普通に挨拶すべき!?
「あら~、サスケくんじゃない?」
何かを察したアリスさんが助け船を出してくれた。
これで少し気まずい雰囲気が緩和された、ありがとうアリスさん!!
「アリスさんもお久しぶりです。今、ちょっとした事情で働いてまして・・・・・・」
「あ~! 懐かしい声がするって思ったらアリスじゃん!」
サスケさんの話の途中、明るい元気な声が割り込んできた。
声がした方、サスケさんの背後から銀髪、蒼い目、異母姉であるステファニーを彷彿とさせる綺麗な女性が現れた。
アリスさんの名前を言ったって事は・・・・・・。
「一年ぶりね、元気してた?」
「そうね、一年ぐらい会ってなかったわね。元気よ。そっちは元気そうね」
「毎日、忙しく元気よ♪」
一年ぶりの再会にアリスさんと銀髪の女性は会話に花を咲かせる。
仲が良いのがとても良く解る。会話に入れないから、ただ黙ってジッと見つめていたら銀髪の女性は私の存在に気付いたのか視線を此方に向けた。
視線を向けられ、異母姉はキリッとした印象だけど、この人は穏やかな、異母姉とは真逆な印象で違う美しさを持ってる人だなと思った。
「話し込んでゴメンね~、貴方がカイチョーが言ってたメアリーちゃん?」
「は、はい!! メアリー・ローリエです!!」
「あら元気な返事、うん、気に入った。私はシシリー・アンダーソン。宜しく♪」
緊張で大きな声で返事した私を気に入ったらしい、シシリーさんは私に握手を求めた。
これが後に師匠と慕うシシリーさんとの出会いである。




