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第14話 猫神の杖、その名は猫の手(キャットハンド)

『シャアァァァァァァ!!!!!!』


 タマがあらしをふく先。

 バキリバキリを音を立てながら、木の怪物が現れた。

 木の枝を鞭のようにしならせながら怪物は躙り寄るように私達の方に近寄ってくる。


 何が起きてるの?

 解ることはこの場から逃げること。

 逃げなきゃ。

 でも、体が、足が震えて動けない。


 怪物の鞭のような枝が私に向かってくるのに。


『下僕!!!!!!』


 鞭が当たる寸前、グイッと強烈な力で引っ張られる。

 鞭が地面に叩きつけられる音を間近で聞きながら、引っ張られたことで鞭から逃れられた事をようやく理解した。

 誰が私を引っ張ったのかも。


『にゃにボーとしてるにゃ!! 死にたいのか!!』

「タマ、ありがとう」

『今は御礼を言ってる場合じゃにゃいにゃ! 立てるかにゃ?』


 タマが招き猫の力を使って助けてくれた。

 そうか、招き猫の力は元々はタマの力。私ばかり使ってるから、その事をすっかり忘れてた。

 フラフラしながら立つと、木の怪物がゆっくりと私達の方を向きながら、再び鞭を放つ。


『にゃあ~!!!!!!』


 タマが咆哮を上げると透明なシールドが現れ、鞭攻撃を防ぐ。

 凄い、これがタマの、猫神の力なんだ。

 木の怪物は何度も何度も鞭を振るう。そのたびにシールドにヒビが入る、数分もすれば割れるのが目に見えて解った。


『ワガハイのシールドは数分しか持たにゃい! だから、ワガハイが言う事をやるにゃ!』

「わ、解った!!」

『いいか、下僕!! ワガハイの契約の証が刻まれた手を掲げ、こう言うにゃ!!


 猫の手借りたい!!』


「え・・・・・・?」


 緊張感の中、気が抜けるような言葉を言われた気が。


『早く猫の手借りたいって言うにゃ!! シールドが壊れる前に!!』


 気のせいじゃなかった!!

 こんな緊張感の中で言うの!?

 ビシリっと一際大きな音がシールドから聞こえる。ヤバい壊れる!!

 もう時間がない!! 腹をくくって言うのよ! メアリー!!


 タマとの契約の証、肉球マークが浮かぶ右手を掲げ、叫ぶように。


「猫の手借りたい!!!!!!」


 すると、肉球マークが強く輝き、そこから一本の杖――先に可愛いくデフォルメされた猫の手が付いてる杖が現れた。

 なんだこれ。


『それはワガハイの力が詰まった杖、その名も猫の手(キャットハンド)にゃ!! それを使えば、どんな魔法も使えるにゃ!!』

「え、ええ~・・・・・・。これで?」

『ものは試しにゃ。そろそろ、シールドが割れるにゃ! 良いか!? ワガハイがやれと合図をしたら怪物に猫の手を向けて炎の爪って言うにゃ!!』


 シールドが勢いよくバリンッ! と音を立てて割れ、木の鞭が襲いかかってくるとタマが今にゃ!! と叫んだ。


「炎の爪!!!!!!」


 合図に合わせて杖を向けると先に付いてる猫の手から炎を纏った爪が現れ、木の怪物を炎の爪で攻撃する。

 炎の攻撃を受けた怪物は燃え上がり、火が消える頃には真っ黒焦げになっていた。

 そして、二度と動くことはなかった。


「や、やったの・・・・・・?」

『うむ!! 下僕よ!! よくやったにゃ!!』

「は、はあ~・・・・・・。良かった、助かったのね。私達」


 木の怪物を倒したという安堵感から腰が抜けて、ペタリとその場に座り込む私にタマはよくやったと背中をバシバシと叩いた。

 ちょっと痛い。


『にゃが。木の怪物を倒しても歌声は聞こえないにゃ』

「うん、そうだね。全く聞こえないね」

『また何かあるかもしれないにゃ。ひとまず此処から離れてアリスさんの所へ、にゃ!?』


 まだ静かな森の中で帰ろうと話をしていたらタマが浮かんだ。

 浮かんでるんじゃない、何か蔓のようなものに捕まってると解った瞬間、私の体に蔓が巻き付いた。


「きゃああああああ!!!!!!」

『クソ!! もう一体いたみたいにゃ!!』


 私達を捕まえたのはもう一体の木の怪物だった。


『下僕!! もう一度、猫の手を使うにゃ!!』

「無理だよ!! 両手を塞がれてる!!」

『そ、そんにゃ!?』


 木の怪物は一体目との戦いを見ていたのか、私の両手を塞いで杖を使わせないようにしてる。

 私達に巻き付いてる蔓は頑丈でビクともしない。

 絶体絶命の大ピンチ!!

 どうしよう、誰か、誰か助けて!!!!!!


「狐火!!!!!!」


 声と共に私達を捕まえていた怪物が一瞬にして燃え上がる。

 助かったと思ったら、私達を捕まえていた蔓が解けて、そのまま地面に落とされた。


『にゃああああああ!! にゃ?』

「きゃあ~!! あれ?」


 地面にぶつかると思った瞬間、フワリと体が浮かび、ソッと地面に下ろされるような形で落ちる。

 とにかく助かったけど、二体目の怪物を倒した火といい、今のといい、何が起きてる? いや、誰が助けてくれたの?


「君達、大丈夫かい?」


 優しく声をかけてくれたのは黒い狐を肩に乗せた赤い髪の青年だった。

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