第13話 歌う森へ
招き猫の力。
生活魔法・掃除術。
この2つを使って、家の中をどんどん掃除していく。
それから数時間後には。
「足の踏み場も無かったのが嘘みたい!! ありがとう、メアリーちゃん!!」
掃除は終わった。
招き猫の力を使って、散らばった書類を、そこら辺に置かれていた薬草やキノコといった、薬に使う材料を纏めて整理整頓。
力を使って招いた埃とゴミは生活魔法・掃除術で処理、お陰様で埃もゴミも1つも落ちてない綺麗な床に早変わり。
もう汚部屋とは言わせないぜ!!
『さすがだにゃ、ワガハイの下僕!! 招き猫の力の使い方をバッチリ理解してるんだにゃ!!』
起きたり寝てたりしていたタマから何処かで聞いたことがあるような無いような言葉を言われる。
でも、なんでだろう、褒めてるのに偉そうに聞こえるのは。
「アリスさん、この後は? まだ私にやれることはありますか?」
掃除は終わったけど、他にやれることはないか聞いてみる。
なかったら、生活魔法・掃除術の中級を勉強しよう。掃除中、初級のままだと不便な事があったしね。
「・・・・・・そうね。魔法の森で薬草を採ってきてくれない?」
「薬草を?」
「ええ、そんなに大変じゃないから安心して」
という事で掃除の次は薬草を採りに行くことになりました。
――歌う森・内部。
彼方此方から歌声が響き渡る。
歌声は不快なものではなくずっと聞いていたいと思うほどに美しい。
この魔法の森が歌う森と言われてるのは森の中に入ると聞こえる、この美しい歌声から。
思わず、歩く足を止めて聞き入りたいけど、今は頼まれた薬草を採りに行かないと行けない。
『にゃにボサッとしているのだ、下僕!! 歌を聞き入りたい気持ちは解るが今はアリスさんのお使いが先にゃろう!!』
「アンタに言われなくても解ってるわよ!! ってか、なんで付いてきたのよ!!」
『下僕がサボらないか見張るためにゃ』
「サボらないわよ!!」
見張りとか言っていたけど、私が薬草を採りに行ってる間、アリスさんは薬を作ると言って調薬釜に火を付けた途端に広がった臭い匂いが嫌で付いてきただけだ。
此処でタマと言い争いをしていたら時間の無駄。
アリスさんから渡されたメモを見ながら、目的地を目指す。其処にお目当ての薬草がある。
『アリスさんが採ってきて欲しい薬草はどんなものなのにゃ?』
「万能草って言って、全ての薬の元となる薬草だって。この魔法の森にしか生えないらしいよ」
何にでも効くという意味の万能ではなく、何にでも使えるという意味の万能で万能草。
魔術薬師にとっては薬を作る上で基盤となる薬草だから、薬を作るには絶対に必要不可欠でそろそろストックが切れそうだから、籠一杯に採ってきて欲しいとアリスさんに頼まれた。
テクテクと真っ直ぐ歩くと大きな木を中心に木漏れ日が降り注ぐ広場のような空間に出る。
アリスさんのメモ通りなら、此処にあるはず。
周囲を見渡すと光り輝く草の集まりを見つけた。あれだ、光り輝く草、あれが万能草だ。
「よ~し、借りた鎌で刈って、籠一杯にするぞ!!」
『そうか、頑張ってにゃ』
「はいはい、頑張りますよ」
また邪魔しない場所で寝始めたタマを尻目に私は万能草を刈り始めた。
サクサクと万能草を刈り続け、籠一杯にする頃には私の体力は限界を迎えていた。
腰や足が痛い。少し体を鍛えよう。
「ふ~、これでよしっと! 結構、時間かかったかな」
アリスさんの家には朝早く来て、掃除が終わったのはお昼手前ぐらいだったはず。
そういえば、お昼食べてないな~と思うと急にお腹が空いてきた。
早く帰ってお昼にしよう! 今日はイザベラ特製のサンドイッチだから楽しみ♪
「ほら、タマ! 終わったから行くよ! タマ~?」
邪魔しない所で寝ているタマを大声で呼ぶ。
だけど、返事はない。
どうしたんだろう? と寝ている場所を見るとタマは起きていた。
「なんだ、起きてるんなら返事ぐらいしなさいよ」
『下僕。可笑しいと思わにゃいか?』
「可笑しい?」
『ああ、妙に静かじゃにゃいか?』
タマに言われて、さっきまで聞こえていた美しい歌声が聞こえてたのに、今は耳が痛いぐらいに静まりかえっている事に気付く。
確かにこれは可笑しい。
「・・・・・・本当だ。歌声が聞こえない」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「タマ?」
『・・・・・・・・・・・・来るにゃ!!』
そう言うとタマはシャー!! とあらしをふいて威嚇をする。
バキリバキリと音を立てながら、タマがあらしをふいた方向から木の化け物が現れた。




