第80話 VSクラーケン
クラーケンが少年から私達に攻撃標的を変えて、此方を睨付けてきた。
ギロリと睨付ける眼光は凶悪で身震いしてしまう。
『他のクラーケンより小さいが侮るなよ』
「解ってるよ、フカヒレじーちゃん!! それ!!」
ルカルカはクラーケンの眼光に怯むことなく銛を投げる。
私も後れをとるわけにはいかない!!
「かぜの・・・・・・」
『下僕よ。その攻撃は広範囲の技にゃ。あの坊主にあたるにゃ』
攻撃を放とうとした時、タマに止められた。
風の爪は風属性の広範囲技で距離がある相手にも届く魔法技、とても便利だけと、今の状況を考えると男の子にあたる可能性があるなら使えない。
じゃあ、私はどうすればいいの?
『下僕、落ち着いて考えて行動するにゃ。攻撃以外にも出来る事いや先にやらなきゃいけにゃい事、お前は何しに此処に来たか思い出すにゃ』
焦る私にタマは優しく諭す。
此処に来た理由。私が此処に来た理由は。
――男の子を助けるためだ!!
「ルカルカ!! 私はあの子を助ける!!」
「解った!! クラーケンはあーしに任せて!! 男の子をお願いね!」
「うん! 男の子は絶対に助ける!」
「ふ~・・・・・・。ほらほら、イカ野郎!! あーしが相手だ!!」
『ふむ。儂も頑張って動くか』
フカヒレさんがクラーケンから男の子を遠ざけるように動き、ルカルカが執拗に攻撃してクラーケンの攻撃を自分達に集中させる。
これなら男の子に近づくことが出来そうだ。
「綺麗なウィングキャットさん。私をあの子、小舟に乗ってる子の所まで飛んでくれる?」
【にゃあ~】
綺麗と言われたウィングキャットは嬉しそうに小舟まで飛んでくれた。
男の子は体を縮こませて嗚咽を漏らしている。
こんな幼い子がクラーケンに襲われて・・・・・・、凄く怖かったろうな。
「君! 助けに来たよ!」
「え? え? お姉ちゃん、だれ?」
「私は君を助けに来たんだよ。ほら、コッチにおいで。お姉ちゃんの手を握って!」
私は男の子に向けて必死に手を伸ばすけど男の子はクラーケンの恐怖か見知らぬ相手である私を信用できないのか、中々、手を取ろうとしない。
その様子にみーちゃんが蔦で男の子を縛り上げようとしてきたけどタマが怖がらせるにゃ!! と必死に止めてくれた。
「早く、お母さんが待ってるよ」
今度は優しく、男の子の母親を思い浮かべながらそう言うと。
男の子は小さな声でママと呟くと私の差し出した手を握った。
良かった、これで。
――それじゃあ、面白くないんだよね。
頭の片隅で囁くような声が聞こえた。
すると。
「メアリー!!」
ルカルカの必死そうな声でクラーケンの触手が私に向かっている事に気付く。
『にゃあ~!!!!!!』
タマが唸るように鳴くと見えない防御壁によって触手の攻撃から免れたけど。
「あ、ああああああ~!!!!!!」
クラーケンの攻撃で恐怖心が蘇った男の子は私の手を離し、また小舟の隅でガタガタと震え出す。
もう少しだったのに!!
クラーケンはもう一度、触手攻撃を放ってくるけどタマの防御壁でそれを防ぐ。
だけど、防御壁がいつまで持つか・・・・・・。
「おい!! あーしを無視するな!!」
ルカルカが銛を投げ飛ばし、それがクラーケンに刺さる。
だけど、クラーケンはそれを無視して私に三度目の攻撃をしてきた。
どうなってるの!?
メアリー達が急に動きを変えたクラーケンに慌てふためく様子を崖の上から小柄な白い狐を肩に乗せた黒装束の男が楽しげに見て、笑う。
「あっはっはっは! 遠隔操作できるって言われたからやってみたけど上手くいった!」
『お~、彼奴らピンチなんだぞ』
「うん、あと一歩っていう時に上手くいかないってのは最高だよね!」
『うわ~、また悪い顔してるんだぞ』
「だって、楽しいじゃないか! 人が絶望する顔!」
「嫌な空気を感じて来たが、相変わらず悪趣味な奴だな」
『全くもってそうでありんすね』
愉快に笑っていた黒装束の男の顔が酷く歪んだ。
男の視線の先には自分と瓜二つの男と、その男の肩には小柄な黒い狐が。
男は怒りの表情を男と黒い狐を睨付ける。
「お前は!? どうして此処に居やがる!!!!!!」
「久しぶりだな、我らツクヨミの里から生まれ出た異端者」
「ここでお前と会うとか最悪だな!! お前の顔なんて見たくなかったぜ、サスケ!!」




