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【釣り大会編連載開始】家出令嬢と猫神様!〜家出した貴族令嬢と自称猫神様のスローじゃにゃいライフ〜  作者: うにどん
釣り大会準備編 メアリーは戦い、メロディーは夢を追う
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第77話 トリアイナの海の魔女②

 朗らかな声の持ち主――褐色肌の快活そうな少女は私達の緊迫した様子を不思議そうに見ている。


 釣竿を持ってるし、さっき釣り大会って言ってたから出場予定の子なのかしら。


「すまない。今は立て込んでいるんだ、用があるのなら後で・・・・・・」

「もしかして迷子探索? それなら、あーしに任せて!」

「は?」


 突然の申し出に会長は困惑するが少女は気にもとめずフラフラとした足取りで海に行くと釣り針を海中ではなく海上へ垂らした。

 何をするつもりなんだろう?


「海の声よ、海の魔女たる私の声に応えよ。今、海原に迷えし者が何処に居るか教えたまえ」


 朗らかな声から一転して凜々しい声で海に向かって問いかける。

 すると海の方からザワザワと何かが聞こえ、ぞわっと鳥肌が立つ。怖くなって耳を抑えた。何が起きてるの・・・・・・?


「あの子、シシリーと同じ事が出来るのか」


 そんな中、会長は冷静に少女の行動を見て呟いた。


「同じ事?」

「シシリーは特殊な家の出らしくてな海の声が聞こえるそうだ」

「海の声? 海に住まう精霊とかの声ですか?」

「いや、全然別物らしい。その辺りは詳しく教えてくれないがシシリーはこの力で海の遭難者を何度も見つけてくれてな重宝しているんだ」


 シシリーさんってそんな凄い能力持ってたんだ。

 私、シシリーさんの事、あまり詳しく知らないな。

 知ってるのは私と同じで家族に嫌気がさして家出したって事ぐらいとハンターとしての実力。

 でも、親しいと言っても全てを曝け出す必要もないか。


「お! そっちに居るんだね!」


 先程の少女が朗らかな声でそう言うと釣竿を今度は放り投げると釣竿は大きなサメになった。

 これには流石の会長も素っ頓狂な声を出して驚いて、私は驚愕で固まる。


 ザブン!! と音を立てながら海に現われた巨大鮫に少女は乗ると。


「助けに行ってくるね~!」


 陽気な声で少年が居るであろう場所に凄い速さで向かった。


「お、おい! 行ってしまったか・・・・・・」


 我に返った会長が止めようとしたが既に遅し、少女は去った後だった。

 これは私が追いかけるしかない!!


「私、追いかけます!!」

「追いかけるのはいいが、あの速さだ。騎士団の所有する高速船でも難しいぞ」

「うっ・・・・・・」


 確かにあの速さは高速船でも無理だ。

 折角、私も活動出来ると思ったのに!!


『そろそろ新しい異次元猫を呼べると思うにゃ』


 悶々とする私の耳に入ってきたのは。


「タマ!? って! なんで縛られてるの!?」


 南瓜の蔓に縛られたタマの声だった。


 タマを縛った犯人はタマの隣で誇らしげにしてるみーちゃんだろうな。

 なんで縛った?


『ワガハイもなんで縛られたのか解らないにゃ!! それよりも下僕よ、NNN(ねこねこネットワーク)を使えるようになってるはずにゃ。NNNを使って飛べる異次元猫でも呼べばいいにゃ』

「そ、そうか。使ってから一ヶ月経ってるもんね」


 私はタマのアドバイスに従って猫の手(キャットハンド)を取りだし、NNNを展開する。


「空をハイスピードで飛べる猫カモン!!」


 猫の手に付けられたNNN通信機の鈴が鳴り響き、空中に魔方陣が浮かび上がる。鈴が鳴り止みと同時に魔方陣から現われたのは背中に翼を持った白い大きな猫だった。


「ほう、此奴は綺麗な猫だな」


 隣で何も言わず成り行きを見ていた会長が呼ばれた猫の美しさを褒める。

 その言葉に気をよくしたのか翼が生えた猫は会長に擦り寄った。


「言葉が解るのか! 大きいが人懐っこい猫だな!」

『ほう、此奴はウィングキャット。一部じゃ天使猫とも呼ばれてる奴にゃ。此奴なら何処でも飛んでいけるにゃ』

「よし!! 綺麗なウィングキャットさん。私を乗せて飛んで欲しいの。お願い出来るかしら?」


 会長に習ってウィングキャットを褒めると嬉しそうに乗りなさいと座り込んだ。

 これで追いかけられる。


「会長! 行ってきます!」

「ああ、気をつけるんだぞ」


 ウィングキャットの背に乗って、少女の後を追う。


【みぃ~!】

『にゃああああああ~~~~~~!! 引っ張るにゃ~~~~~~!!』


 飛び立とうとする直前、みーちゃんとみーちゃんによって縛られたまま引っ張られるような形でタマが乗ってきたけどウィングキャットは動じずにそのまま浮かび上がった。

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