ゾンビのフリをしてゾンビの群れに紛れ込んで生きる
「あーうー」
持つべきものは友達だよな。俺は友人にゾンビの特殊メイクをしてもらい『ゾンビになりきる』事でゾンビだらけになった世界で一年間生き伸びた。
鼻は千切れ目は飛び出して見た目はゾンビそのもの。両手を前に付き出して唸ってればバカなゾンビ達は襲ってこない。
「うー」
「あっ」
前から歩いてきたのは『シルク』だった。名前は俺がつけた。シルクは美人のゾンビだ。両目が白目を剥いてなくて肌の色が紫でなければ人間と見た目はあまり変わらない。
シルクは人間の時の本能がまだ残っているらしく俺は彼女と一緒に行動していた。
「あーうー」しか会話はないがデートしたり食事したり。彼女がいるから俺はこの世界で希望を捨てないでいられる。
「あっあっ?あーう?」
あやうく人間語を話す所だった。彼女が俺に抱きついてきた。ゴミ収集所の臭いがする。ゾンビ生活が長すぎて俺にはそれがセクシーな匂いに感じた。
「あーう!」
「あう?あうあう?」
もう我慢できるか。ゾンビでも構わねぇよ。一年も禁欲してたんだ。俺はシルクを犯した。
・
「あぁぁぁぁぁあー!」
頑張れシルク!
「ヴヴヴヴー!」
「あーーー!」
よーーし!産まれた!俺とシルクの子供だ。
身体中蛆虫に寄生されて脳ミソは剥き出しだが愛しい。こんな世界で愛を感じることが出来るなんて俺は幸せ者だ。ああなんて可愛い。食べてしまいたいとはこの事か!
「あー!」
「あヴ!?」
こらこら!食べてしまいたいってのは比喩で……シルクが子供の右手にかぶり付いた。ゾンビに母性本能なんてあるわけない!俺は何を油断していたんだ!?
「ヴー!」
「ンギィ!」
俺は子供をシルクから引き離す為に子供の左手を引っ張った。両側から引っ張られて子供は真っ二つに裂けた。
「んー!んー!」
もったいないもったいないもったいない。俺は子供を食べた。なんて美味い。流石我が子だ。
「あう?」
あれ?そういえば俺に特殊メイクをしてくれた友人ってどうなったんだっけ?
「うあー?」
言葉を話そうとしたが無理だった。あれ?俺舌が無いな?ボトリと何かが落ちた。それを俺は拾って食った。俺の目玉だ。うまい。
なんだ俺もうゾンビじゃん。