領土
俺が、頭の中で念じた事は、死では無く、治癒だった。
俺は、聖人でも偽善者でもねぇ…
人殺しが罪とも思っちゃいねぇし、法の無いこの世界での殺しなら、むしろやってみたいくらいだ…
ただ、神と周りの歓声に応えるバカにはなりたくないそう思っただけだ…
俺は、俺が殺したい奴を殺すだけだ‼︎
ジャックの体は癒され、生ぬるい俺に生意気な笑みを見せる。
歓声は罵声へと変わり
ジャックとシドウのコールが入り混じる
ジャックがナイフを拾い、妻と子に向けて投げようとした時には、ジャックの首は宙に舞っていた…
紅く染まる刀を俺は、ただ美しいとしか思えなかった…
歓声、罵声、大歓声と皆が俺を、注目し、結局観客を満足させてしまった。
そんな声よりも、俺は、刀が刀であるべき姿を見れた事に満足していた。
「大番狂わせーー‼︎最弱村の死道が勝利ーー‼︎」
くだらない茶番をシカトして
通って来た道を俺はスタスタと戻った。
扉を開けると最初に見た、妻と子が立っていたボロボロの町の光景へと変わっていた。
妻と子の姿を見て殺試合は夢だったのか?と思った矢先
天から死神がシドウに語りかける。
「よく勝ち抜いた‼︎」
「この世界は、神に拾われた者同士を戦わせ、領土を賭ける!」
「その勝敗で、勝てば相手の領土を奪い、国ができて豊かな暮らしができる!」
「私の領土はお前らが立つボロ屋だけだ…」
「しばらく殺試合は無い。ゆっくりするがよい」
とんでもねぇ神に拾われたもんだ!
だが、死んだが生きている、なんとも不思議な感覚だった
「よかった!無事で本当によかった!」
妻と子が駆け寄り、俺を抱きしめてくれた。
その瞬間不思議な感覚が、生きていると確信に変えた愛とは不思議なものだ…
そして俺は、2人の存在のありがたさに、込み上げてくる涙をこらえ、強く、強く抱きしめた。
「ありがとう、愛してる、2人は俺が必ず守るからな!」
しばらくして俺達3人は
見るからにすめそうも無いボロ屋を前に呆然としていた。
妻にも何か能力が無いかと聞いてみたら
妻が、死んだ時死神に女性の能力は皆決まっていると.
「この世界において女性の能力は、食物を産み出す力だ」と言われたらしい。
きっと食べ物には、困らないとは思うが、問題は住むところだ…
俺は、考えた
建物は時代によって変わって行く
俺が死ぬ前の世界ですら、汗水流して自給自足の家を勧めてくる、営業マンが来ていた。
完全自給自足の家までの成長と、
俺の住みたい部屋のイメージを与えてみる事にした。
ボロ屋に両手を手を当て自分の二つの能力を同時に試してみた…