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第96話 楽しいパーティ(前編)

 パーティの日、ユウキは昼過ぎからお風呂に入り、目一杯お洒落をしていた。今はマヤに手伝ってもらって化粧をしている。そのマヤも今日はいつものメイド服ではなく、私服を着ている。準備をしているユウキに、ララたちが声をかけてきた。


「ユウキ、先に行ってるからね。遅れないように来るのよ」

「うん、向こうで会おう。楽しみだね」

「じゃあ、マヤさんユウキの事よろしくね」

『はい、おまかせください』


 ララたちは冒険者組合の前でシャルロットと落ち合うと、中に入って受付に行き、リサを呼び出した。


「わあ、よく来てくれました皆さん。さあ、こちらに来てください。衣装も準備できています。今日のウェイトレスには私も入りますので、全部で7人ですね」


 リサに案内された部屋に入ると、7人分の衣装が準備されていた。


「事前にサイズを聞いていたので、合っているはずです。さあ、着てみましょう。実は私も何の衣装か聞いてないんですよね」


 全員、服を脱いで用意されていた衣装を着る。


「こ、これは…。バニーガールですか!」


 用意されていたのはバニーガールだった。ララ、カロリーナ、シャルロットは身長が低く、胸がペタン子。しかし、それが、黒の網タイツとうさ尻尾付肩出しバニースーツ、うさ耳ヘアバンドとマッチしてすごく可愛い。一方、ユーリカ、ヒルデはバニースーツから胸が零れ落ちそうだ。また、お尻から太ももにかけてむっちりとして、凄まじい破壊力を見せつける。


 残りの2人、フィーアは均整の取れた美しい肢体にふわふわの長い金髪がバニースーツにマッチし、うさ耳ヘアバンドを付けた姿は正に美の女神だ。一方、リサは背がユーリカ並に高く、胸がない所謂スレンダー体形。20代後半の年齢から醸し出される色香はあるものの、薄い胸に大きなお尻でやや痛々しい感じがする。


「…同志リサ、一つ聞いてもよろしいでしょうか」

「同志カロリーナ、質問を許します」


「これ、誰の趣味なんですか。貧乳組には少々キツイのではないでしょうか」

「絶対に、あのエロ組合長です。この衣装、私には色々と失うものが多そうです」


「う~ん、でもまあ、私たち可愛いと思うよ」

「そうそう」

 シャルロットの意見にララも同意する。


「大丈夫ですよ、皆さん。世の中には色々な性癖を持った男性がいます。貧乳バニーも需要がありますよ。貧乳もチャームポイントです!」

 フィーアがにこやかにカロリーナとリサに向かって言うが、2人は素直に喜べなかった。


 夕方になって、ユウキとダスティン、マヤが冒険者組合に到着し、中に入ると大勢の冒険者や客で溢れ返っていた。


「わあ、大勢来てるね。ボクたちどこに座ればいいのかな…」

「おお、来たか。お前たちは主賓席だ。こっちに来い」

 オーウェンが声をかけてきたので、中央のテーブルに進み、指定された席に座る。


「ユウキ、今日はいつもと違った雰囲気で可愛いな。こりゃ組合でも人気が出るわけだ」

「ふふーん、今頃気づきましたかー。ボクの魅力に」

「ははは、今日はお前が主賓だ。楽しくやってくれ」


 全員が着座したところで、オーウェンが


「皆よく来てくれた。世間を騒がせていた誘拐事件は全部ではないが、ほぼ解決し、やっと皆が安心して街を歩けるようになった。事件の解決には、冒険者たちやここにいるユウキの力あってこそだ。今日は皆を労いたいと思い、このパーティを企画した。酒も料理も十分用意してある。思う存分飲み食いしてくれ」


 全員に向かって挨拶し、パーティの開会を宣言すると、バニーガールの姿をしたウェイトレスが料理とお酒を持ってきた。その姿を見て、ユウキが目を見張る。


「ララ、カロリーナ…。みんな、バニーちゃんになってる。か、可愛い」

「どうユウキ! 可愛いでしょ。いっぱい運んでくるからどんどん食べてね」

「うん、ありがとう。いや~、ホントに可愛いよ。ララ」


『ユウキ様、あそこにいるあの子は誰ですか?』

「ん、あれは同じクラスのシャルロットっていうの。凄くいい子だよ」


『か、可愛い。可愛すぎる。お持ち帰りしてもいいですか?』

「ダメ」


「はい、ダスティンさん、お酒です」

 ユーリカが麦酒を並々と注いだジョッキを持ってくる。


「おお、悪いなユーリカ」

「ふふっ、私、ユウキさんもですけどダスティンさんにも凄く感謝しているんです。私のために凄い武器や鎧を作ってくれて。あんなプレゼント、親にもしてもらったことがありません。ダスティンさんは私の恩人です。感謝です。今日はいっぱい飲んでくださいね」


 ユウキが運ばれてきた料理を頬張っていると、離れたところから「ひゃああ~」という声が聞こえてきた。見ると、ヒルデが冒険者たちに囲まれて揉みくちゃになっている。「エルフのバニーだ! 萌える!」「可愛い! デカい!」「俺の嫁になってくれー」凄い人気だ。


「あ~あ、ヒルデはエルフだから珍しいし、美人だし、スタイルもいいからな~。あそこから逃げ出すのは難しそうだなあ」

 ユウキはヒルデに同情するのであった。


 別な方では「死ね!」という物騒な声が聞こえる。見ると、冒険者たちがバニーリサに「痛いカッコだな」「いつ嫁に行くんだ? 行けるのか?」「エルフの嬢ちゃんから胸を分けてもらえ」と言いたい放題言っている。その度に、リサの強烈なキックが冒険者に向けて炸裂している。ユウキはため息をつくと料理に向かい合った。


「ホラ、ユウキ、ジュースだよ」

「ありがとう。丁度喉が渇いたところだったんだ。わあ、シャルも凄く可愛いね」

「ありがと。あの、隣のお姉さんの目線が怖いんだけど」

『可愛い…、持ち帰りたい…』

「ああ、これは病気だから。気にしないでお仕事して」


「よお、ユウキちゃん。今日も可愛いな」

「うわ、レオンハルトさん」

「うわって…、傷つくな。ユウキちゃん、オレが王都から離れている間に危ない目に逢ったんだって?」

「う、うん」


「オレも王都にいればよかったぜ。颯爽とユウキちゃんのピンチに駆けつけて、助けてやれたのになあ。そしたら、助けられたユウキちゃんがオレに惚れて「レオンハルトさんボクをめちゃくちゃにして」とか言ったりしてな。うーん。胸が高鳴るぜ」

「それは絶対ないから。もう、あっち行ってくれない?」

「相変わらず冷てーな」といって、レオンハルトは知り合いの冒険者のテーブルに行ってしまった。


「よお、お嬢ちゃん。あの時は済まなかったな」

「あ~っ、ボクが最初にここに来た時、絡んできたおじさんだ。あの時、本当にコワくて泣きそうだったんだからね」

「ははは、酔っぱらっていたとはいえ悪いことをしたよ。お嬢ちゃんが美人だったからつい、な」

「もう。でも、おじさん誘拐犯のアジトに来てくれてボクを助けてくれたでしょう」

「お、見ててくれたのかい」

「モチロンだよ、あの時はありがとう。はい、お酒注いであげる」


「ユウキさんて、おじさんを陥落させるのが早いですね」

「ダスティンさんといい、オーウェンさんといい、正に無自覚オヤジ殺し。魔性の女」

 ユウキが冒険者のおじさんと楽しく語らっているのを見て、フィーアとカロリーナは、思わず感心するのであった。


 ユーリカはユーリカで、ダスティンにかいがいしくお酒を運んでいる。当のダスティンは上機嫌で、ユーリカが運んできたお酒をがぶ飲みしながら、オーウェンや知り合いのドワーフと盛り上がっている。何故かララはドワーフのおじさんたちに人気で、時折捕まっては楽しそうに話をしている。


 シャルロットは庶民的な可愛らしさと愛嬌があり、ユウキやフィーアといったハードルの高い女の子と違って気さくに話ができるので、若い冒険者に人気だ。


 楽しい時間はまだ始まったばかり。喧騒は益々大きくなっていく。


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