表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/620

第95話 パーティへの誘い

 謁見式から数日後、夏休みの残りもあと1週間となった頃、実家に帰っていたララとカロリーナ、ユーリカが帰ってきた。


「やっほー! ユウキ、ダスティンさん、マヤさん、たっだいまー!」

 大きな声で「ただいま」を言い、ララとカロリーナが勢いよくユウキに抱き着いてくる。


「うわああ、危ない! 便所掃除のバケツから汚水がこぼれちゃう!」

「きゃあああ!」「危なっ!」


 汚水を頭から被った3人が裏庭の井戸から水を汲み、下着姿になって体を洗っていると、フィーアとヒルデがユーリカと一緒に帰ってきた。


「ただいま帰りました。あら、水浴びですか?」

「うん、暑いからね~。気分転換してた(ウソだけど…)」


「……………」

 ララとカロリーナは黙って頭と体を洗っている。


「はあ、何かよくわかりませんけど…。とにかく、ただいまです」

「うん、お帰りなさい」


 久しぶりにリビングに女の子全員が揃った。マヤが冷たいお茶を出してくれる。


「ユウキさん、誘拐犯と殺り合ったんですって?」

「フィーア、人聞きの悪いこと言わないでよ。リースちゃんが誘拐される現場にたまたま遭遇したらボクも一緒に捕まったんだよ」


 ユウキは、誘拐犯に捕まってから逮捕、誘拐犯の処分までの顛末を話して聞かせた。


「危ない所だったんですね。冒険者組合の皆さんに感謝ですね」

「本当ですね。でも、これで誘拐事件が落ち着いてよかったと思います。できれば、私もお手伝いしたかったな」

「貴族の中でもその話題で持ちきりですよ。でも、本当に無事でよかったです」

 フィーアとユーリカがホッとしたように話す。


「ユウキ…」

 黙って聞いていたカロリーナが冷たい声を放つ。


「は、はい!」

「このバカユウキ! 1人で危ないことして! もし、もしユウキに何かあったら、私の知らないところでユウキに何かあったら、私、生きて行けないよ! うう…ぐすっ」


 ララは問答無用でユウキの頭を「べチーン!」と叩いた。


「いった!」

「このバカチン! 私もカロリーナと同じ気持ちよ! 少しは反省しろ!」

 ララは涙目になって、泣き出したカロリーナの頭を撫でながらユウキを叱りつけた。


「ご、ごめんなさい。もうしません、ダスティンさんにもオーウェンさんにも拳骨されて怒られました。だから、2人とも泣かないで。ホントにもうしないから、約束するから」


 フィーア、ユーリカ、ヒルデの3人は、この光景を見て心が暖かくなる。本気で叱ることができる友人は宝石より貴重な存在だ。今、目の前の光景は3人の目にとても美しく映っている。


 カロリーナとララが落ち着いたのを見て、ユーリカが尋ねてきた。


「そういえば、公開処刑っていつですか?」

「明日、中央広場で。斬首刑だって」

「え、そうなんですか。見行くんですか」

「見たくないけど、ボクには見る責任があるからって憲兵隊が迎えに来ることになっているの。憂鬱だよ、みんなも行く?」


 翌日、昼過ぎにユウキが帰ってきた。


「ひどいよみんな、結局誰も付いてきてくれなくて。うう…、グロかった」

「ボクを捕まえた髭面の男、首を斬られるまで、ずっとボクを睨んでいたんだよ。怖かった。トラウマになっちゃうよ…」

 ユウキの話を聞いて、全員、行かなくてよかったと胸を撫で下ろすのであった。


 その日の夕食は血の滴るステーキだった。それを見たユウキは硬直し、涙目でマヤを見る。マヤはしれっと『お残しは許しませんで~』と言って、台所に引っ込んで行った。


(これって、今になってユウキを怒っているの?)と全員で顔を見合わせる。そして、決してマヤを怒らせてはならないと心に誓う。「災害は忘れた頃にやってくる」のだ。


 その晩、ユウキはララとカロリーナを自分のベットに誘い、3人並んで寝た。ユウキはララとカロリーナの間に入り、2人と手を繋ぐと安心して眠ることができた。


 夏休みも残り3日となった日、全員で宿題の確認をし、登校の準備をしていると冒険者組合の事務員リサがやってきた。


「みなさん、お揃いですね。以前お話ししていたパーティをですね、明日の夕方、組合の酒場で行うことになりました。ユウキさんとダスティンさん、マヤさんをご招待します。特にユウキさんは主賓なので、目いっぱいお洒落してきてくださいね」


「わあ、いいわねユウキ。目一杯楽しんできてね」とララが言う。


「あの、実は皆さんにお願いがあるんです。パーティには冒険者を始めとしたお客さんが大勢来るので、ウェイトレスをしてくれる人が足りないんです。どうです。アルバイトしてみませんか。1人当たり銀貨1枚出しますよ」


「おお、いいね。私はやるよ」とカロリーナ。

「そうですね、せっかくだから全員でしませんか」「さんせーい!」

 フィーアの提案に全員が賛成する。


「よかった。申し訳ないですが、あと1人くらい誰かいませんか?」

「う~ん…。そうだ、シャルロットを誘おう」

 カロリーナの案に、これまた全員が賛成する。


「みんなでパーティに参加できるんだ。楽しみだな〜」


 ユウキはララやカロリーナと顔を見合せて、楽しそうに言うのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ