第88話 女たちの熱き戦い
胸は豊満でも運動神経が貧弱なヒルデ、マイクロビキニで動きが制限されるカロリーナと、両者のウィークポイントが責められ、一進一退の攻防が続く。自然にギャラリーも巨乳派と貧乳派に分かれ、熱き応援を送ってくる。
「ふぎゃん!」
ユーリカの強烈なアタックがカロリーナを盛大に吹き飛ばし、コートの上に叩きつけた。
「マッチポイント、巨乳チーム!」
「ぜーはー、ぜーはー、ユーリカめ、ここぞとばかりに私を狙いやがって、あのどや顔とおっぱいが憎たらしい…」
「大丈夫? カロリン」
「え、ええ、貧乳は死なず、ただ立ち上がるのみ。ララ、シャル、今こそ私たちの力を結集し、あそこで棒立ちしているエルフに集中攻撃して沈めるわよ。最後に笑うのは我々だ!」
「それ、負け側のセリフだと思う」
ユウキの放ったサーブが飛んできた。カロリーナが構えるが、目の前でストンと垂直落下する変化球サーブだ。勝負あったかと思われた時、
「うおおおおお! 回天レシーーーブ!」
カロリーナが全力で飛び込み、レシーブする。
「上手いよ、カロ! 字は違うけど意味は間違ってない! ララ、高くトス!」
「はい!」
ララが、ポーンと高くトスを上げる。
「来い! シャル!」
カロリーナがシャルロットに向き、前かがみになって拳を合わせ、レシーブの体勢を取る。そこに飛び込んできたシャルロットが拳に飛び乗ると、カロリーナは全身のバネを使って、腕を上に振り上げ、高々とシャルロットを放り上げた!
「いっけー、私たちの合体技!」
「必殺! 貧乳隕石落とし(スモールバスト・メテオクラッシュ)!」
カロリーナの放り上げによる運動エネルギーを得て高くジャンプしたシャルロットが、強烈なスパイクを相手コートに打ち込んだ。天から落ちる隕石のように高角度で飛んできた高速のボールに巨乳3人は反応できない。ズドォオオオンという音とともに砂煙を上げて、足元に突き刺さったボールを見て、ヒルデは戦慄する。
「に、20-20」
フィーアも今の技に動揺を隠せない。
「あっちは、もう何でもありになってきたね」
「でも、私たちも負けてられませんよ。ここで負けたら巨乳に生んでくれたお母さんに顔向けできません! ユウキさん、私たちも必殺技です」
「これ、ビーチバレーですよね。私のイメージと全然違いますよぅ。もう逃げだしたい…」
ヒルデの泣き言は誰の耳にも届かない。
「やったー、見たか私たちの底力。この勢いで逆転だー」
ララがアンダーハンドでポーンと相手コートにサーブを打つ。威力の全くない山なりのボールをヒルデがなんとかレシーブする。上手い具合に高く上がったボールめがけて、ユウキとユーリカが同時にジャンプ! 揺れるバストがカロリーナたちの目を幻惑させる。
「くっ、おっぱいに幻惑されてボールが見えない!」
「ミラージュ・バストォ!」
ユウキの掛け声に合わせてユーリカが強烈なスパイクを打ち込んできた。ボールはユーリカのパワーによって大きく変形しながら一直線にララの頭めがけて飛んでくる。
「うっぎゃあー!!」
バコーンと物凄い音がしてララが場外まで飛ばされた。しかし、頭に当たったボールはトスと同じように放物線軌道を描いてカロリーナとシャルロットの上に飛んでくる。
「上手いよララ! シャル、もう一度いくよ。ヤツらに止めを刺す!」
「オッケー! カロリーナ、構えて」
再び合体技の体勢に入る2人。拳に飛び乗ったシャルロットを放り上げたその瞬間、ボキボキボキ! とカロリーナの腕から謎の音がした。
「ぐわあああああ! 破滅の…、破滅の音がぁああ!」
「よくやったカロリーナ、君の犠牲は無駄にしない! ウルトラ貧乳隕石落とし!」
「きゃああっ!」
シャルロットが放ったボールはブロックに飛んだユウキとユーリカを跳ね飛ばし、ヒルデの腹部に深々と食い込んだ。
「ほげえ!!」女の子らしくない悲鳴を上げてヒルデは倒れ、ダメージにのたうち回る。
「し、勝者、貧乳チーム!」
フィーアが勝者を宣言すると、ギャラリーが熱い戦いを繰り広げた少女たちに盛大な拍手を送ってきた。
「や、やった…。巨乳を倒すためなら、このカロリーナ、粉塵に砕け散っても本望!」
砂浜に大の字になって倒れたカロリーナ。色々見えているが、彼女はいま猛烈な満足感を得て、気を失った。
シャルロットは、コートに倒れている5人を見回して呟く、
「闘い散っていった強敵たち、あたしはあなた達を忘れない…」
「これ、女の子同士のゆるふわビーチバレーだったはずですよね。何なんですか、この修羅の戦いは……」
フィーアの嘆きが風に乗ってコートを流れる。しかし、戦い終え、力尽きた少女達の耳には届かなかった。
ビーチバレーの戦士たちは、宿舎のお風呂に入って汗を流している。カロリーナ、ララ、ヒルデは、こっそりとユウキの治癒魔法をかけてもらい、完全復活を遂げていた。
「いや~、あの破滅の音を聞いたときはどうなるかと思ったわ」
「少し、熱が入り過ぎましたね。ユーリカも反省です」
「少しどころでは無かったような気がしますが…」
「もう、ヒルデはおっぱいは大きいけど気は小さいわね。さ、明日も楽しくいきましょう!」
「おー!」
「お、おー」