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第85話 冒険者との実力試し

 ユウキが冒険者組合を訪れた次の休日、女の子の日に当たってしまって、体調が悪く動けなかった。いつまでも組合に来ないユウキを訪ねて、リサが来たが、理由を話すと「ではこの次の休みにお願いします」といって帰って行った。


 さらに次の休日、女の子の日が終わり、体調が戻ったユウキは、カロリーナとユーリカを伴って、冒険者組合に来ていた。当然3人とも武装している。組合ではオーウェンが待っていて、


「おう、来てくれたか。全く女ってのはアレがあるから面倒だな。後ろの2人は仲間か」

「はい、ボクの友人で、カロリーナとユーリカです。戦ったメンバーも連れてこいという話でしたけど、他のみんなは用事があって無理でした」


 カロリーナとユーリカの2人はそれぞれ自己紹介すると、オーウェンはにかっと笑って「おう!」と答え、全員に付いてくるように言うと、組合内の訓練場に案内した。


「そんじゃあ、オーガを退けたっていう、お前らの実力を見せてもらおう。相手はこっちで用意した。武器は訓練用を使う。そこに用意した物を自由に使っていいぞ」

 オーウェンの「準備はできたか」の声に、3人が頷くと、


「最初は、そこの小さいの! お前からだ」


(小さいって、どこ指して言ってるのよ。身長?それとも胸?)と呟きながらカロリーナが前に出る。カロリーナの相手はDクラス冒険者の剣士だ。


(実戦経験はないけど、私だって役に立ちたくて、ユウキたちには内緒でモーガンさん鍛えてもらってるのよ。2人に情けない姿だけは見せたくない)


 カロリーナが剣を構えると相手が剣を振りかざして攻撃してきた。カロリーナは剣を合わせて何とか初撃を防いだが、相手の勢いで後ろに飛ばされ、尻もちをついてしまった。


「痛たたた……」

「カロリーナ! 前!」

 ユウキの声にカロリーナが前を見ると、相手の剣士が全速で飛び込んでくる。一気に止めを刺すつもりだ。

「(来た! 怖いけどがんばる。私の戦い方はこう!)アイス・ウォール!」

 カロリーナは剣士の目の前に氷の防壁を立てた。剣士は勢いがついて避けることができず、氷の壁に体をしたたかに打ち付け、反動で跳ね飛ばされる。


「今だ! メイルストローム!」

 相手の周囲に大きな水の渦を作り出し、視界と行動の自由を奪う魔法を放った。攻撃魔法ではないのでダメージは与えられないが、隙を作るには十分だ。案の定、剣士は水の動きに翻弄されてカロリーナを視認することができない。

 カロリーナは渦に近付くと魔法を解除し、水の動きで動揺している剣士に、思いっきり剣を叩きつけ、気絶させることに成功した。


「勝者、カロリーナ!」

「やったああ! 見た見たユウキ、ユーリカ! 私の実力見た? わーい。やったー」

「ふふ、カロリーナったら、子供みたいに喜んでるね」

「実際、胸は子供のように小さいですからね」

「でた! ユーリカの毒舌」


(ふむ、この少女は魔術師か。いや、剣も使うから魔法剣士ってところか。剣の腕は未熟だが、魔法は目を見張るものがあるな。意外と底が見えんぞ。次はあのオーグリスを倒したっていう大きい方を見てみるか。しかし、胸がデカいな。リサが睨んでるぞ)


「よし、次はそこの胸のデカいやつ。お前の番だ。お、武器は戦斧か?」


 オーウェンの言葉にカロリーナとリサがビクリと反応する。カロリーナがリサを見ると、背は高いが胸がない。所謂スレンダー体形ってやつだ。リサもカロリーナを見ている。2人は貧乳シンパシーを感じて頷いた。


「はい、よろしくです。武器は自前の訓練用でいいですか。使い慣れているんです」

「いいぞ、相手はCクラス剣士だ」


 ユーリカの相手は大剣を持った筋肉質の剣士。見た目通りならかなりのパワーファイターだ。戦斧と大剣がぶつかり、激しい火花が散る。ユーリカは何度も戦斧を振り、剣士も大剣で迎え撃ち、一進一退の攻防が繰り返される。


 膠着状態に陥ったユーリカと剣士は一旦離れ、息を整える。

 ユーリカは大きく息を吸い込んで吐くと、戦斧を横に構えて、一気に踏み込み、体を半回転させて相手に戦斧を叩き込む。オーグリスを怯ませた一撃だ。

 剣士も大剣で防ぐが、強烈な戦斧の一撃でバキン!と音を立てて剣がへし折れ、そのまま剣士の防具で覆われた胴をしたたかに打ち付け、剣士を昏倒させた。


「勝者ユーリカ」

「や~りま~した~!」

 ユーリカが喜びを露にするが、拍手をして讃えているのはユウキだけ。カロリーナとリサは弾むように躍動する巨乳を憎々し気に見つめるのであった。


(おいおい、アイツはCクラスでも実力上位だぞ。それをこんな短時間で一蹴するとは恐れ入ったな。オーグリスを倒したのは伊達じゃねえってか。相当の鍛錬を積んでるぞ。あれは)


「よし、最後はユウキ、お前だ」

「は、はい」


 ユウキの相手は、両手に斧を持ったCクラスの戦士だ。筋骨隆々でユウキより頭一つ大きい。

 ユウキは、長さ1mほどの両手剣を持ち、大きく振りかぶって相手に切りつけた。戦士は剣を片方の斧で防ぎ、もう片方でユウキを狙ってくる。ユウキは斧の一撃をバックステップで躱し、回すように剣を振って攻撃する。重量のある斧に対抗するには、重量のある両手剣を選択したが、細かい動作ができないため、力技となってしまう。


 しかし、斧の攻撃を防ぎながら、何度か剣を叩きつけていると、相手の斧を弾き飛ばし、ガードを崩すことに成功した。


「よし、いけるかも!」


 しかし、相手もガード戦法は止めて残った斧で遮二無二攻撃してくる。細かい動きのできない大型の両手剣では、防ぐのが精一杯。今度はユウキがジリ貧になってきた。


(まずい。こうなったら一か八か!)

 ユウキは、相手の斧の攻撃を防いだ後、両手剣を相手に投げつけた!


 相手は予想もしない行動に驚き、次いで投げつけられた剣で視界が奪われる。ユウキはその隙に相手が落とした斧を拾い上げて、後ろに回り、

「どこ見てるの! ボクはここだよ!」と声をかけ、相手が振り向いた瞬間、頭に斧の一撃を当て、意識を刈り取ることに成功した。


「勝者ユウキ!」


 ユウキはガッツポーズを決めて「やったよ!」と勝鬨を上げる。

 勝ったユウキに盛大な拍手…はなく、拍手で讃えているのはユーリカだけ。カロリーナとリサは弾むように躍動する巨乳を羨ましそうに見つめるのであった。


 模擬戦終了後、ユウキ、カロリーナ、ユーリカは3階の組合長室の応接セットで、お茶と果物を頂いている。正面にはオーウェンとリサが座り、3人を見ている。


「お前たち、本当に学生か? うちの冒険者を一蹴するなんざ信じられねえ。オーガやオークの群れを潰したってのは実力に基づいたものだったんだな」

「それでも、あそこから脱出できたのは運がよかったです。防御魔法や攻撃魔法の使い手がいたから何とかなったと思います」


「攻撃魔法?」

「はい。オプティムス侯爵令嬢の、フィーア様がボクたちのグループにいたので。フィーア様は風系の攻撃魔法の使い手なんです」


「あと、ユウキの指揮能力ね。味方を励まし、状況に応じた適切な対応をとる。戦うときは戦い、逃げる時は逃げる。ユウキを見てると安心するの」

「カ、カロリーナ…。誉め過ぎだよ。恥ずかしいからやめて」

「ふふ、そんなことありませんよ。ユウキさんとみなさんがオークを押さえたから、私とフィーアはオーグリス退治に専念できました。適材適所の作戦勝ちです。ユーリカ尊敬します」


(逸材だな。こいつらとつながりを持つのは悪くない。今後も色々と事件が起きる可能性がある。組合としても動かざるを得ない時が来る。その時は…)


「ユウキ、お前たちを冒険者にする訳にはいかんが、前にも言った通り、時々顔を出せ。俺の所にも冒険者を通じて情報は入ってくるが、市井の噂話には疎いんだ。しかし、噂話も時にはバカにできないんでな。お前たちの力を当てにする時があるかもしれん」


「わかりました。ホントに時々でよければ」


「カロリーナさん。今度ゆっくりお話ししましょう」

「了解です。同志リサ」


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