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第83話 冒険者組合での出来事

 ユウキたちが王都に戻った翌日、学園では臨時休業にして教員会議を開催し、2年生の討伐訓練での事件について話し合っていた。


「バルバネス先生、Cクラスでは廃城でオーガやオークの大規模な群れと遭遇し、帰途ではゴブリンの群れに襲われたということかね」


「はい学園長。実際に討伐されたオーグリスやハイオークの首を確認しました。廃城も確認しましたが、オークの死体が数十はありました」


「よく、Cクラスは生き残りましたね。Bクラスはヤキマの廃城の近くにある廃村でゴブリンとオークの群れと遭遇し、参加生徒の半数が怪我を負いました。何人かは重症です。アルという生徒が奮戦したおかげで、死人が出なかったのが幸いでしたが、Eクラスは東の平原でやはりゴブリンの群れに遭遇し、なんとか撃退できたものの、女生徒数名がとらわれてしまっています」


「女生徒については、冒険者組合に捜索を依頼している。運が良ければ近日中に見つかるかもしれん。ただ、ゴブリンの子を孕んでいる可能性があるが…」

「痛ましい…」

「しかし、昨年の事件のこともあります。当面、野外実習は取りやめる必要があるのでは」

「そうですね。学園内合宿とか、臨海学校とか安全が確保されるものに限りましょう」


「しかし、例年より魔物の数が異常に多い気がする。何かがこの国で起こっているのではないか?」

 学園長の疑問に答えられる教師はいなかった。



 学園休業の午前中、久しぶりに全員がリビングにそろって話をしている。ダスティンは工房でユウキたちの武器防具の手入れをしてくれている。


「いやーやっぱり家はいいわね。落ち着くし」とカロリーナ。


「皆さんお疲れさまでした。本当に大変でしたね。オーガにオークなんて…」

 ヒルデが労いの言葉をかけてくれる。


「ええ、よく生き残れたと思いますわ。これもユウキさんがリーダーとして役割を果たしてくれたお陰です」

「フィーア、ボクなんて、そんな…。みんなの力があったからだよ。でもBクラスやEクラスの事を考えると素直に喜べないな…」

「そうですね…、あまり喜んでばかりはいられませんね」


「そういえば、家の騎士たちは立派に護衛の役を果たしましたか?」


 フィーアの問いにヒルデは顔を曇らせる。確かに騎士が護衛についていると悪さをしてくる輩はおらず、その点は安心できたとのことだが、時々感じる胸元への強烈な視線がいやらしく、とても疲れたとのことだった。


「あらあら、ヒルデさん。女は見られることで美しくなるんですよ。ユウキさんを見てご覧なさい。自分から体を見せつけることに感動を覚える強者ですよ。先日なんか男性陣の前で自ら乳首の色を暴露していましたからね」


「あ、あれは不可抗力。不可抗力です! フィーア、変な事言わないで! ヒルデ、なにその目は。そんな目で見ないで!」

「際どい勝負下着を毎日穿いているのは? 誰かに見てもらいたいからでしょ」

「違うから! こういうのが好きなんだもん…」



 昼食後、ユウキは1人で外出し、王都の冒険者組合に来ていた。勇気を出して入り口の扉を開けて入ると、組合内の酒場にたむろっている強面の男たちが一斉にユウキを見る。ユウキは私服なので、薄手の可愛いブラウスにミニスカート。足元はサンダルと、おおよそ冒険者組合に似合わない格好だ。


(レオンハルトさん、いるかな?)


 好奇の目にさらされながら、レオンハルトを探すが、不在の様で見当たらなかった。ユウキは仕方なく、組合から出ようとすると、後ろから肩を掴まれ、


「おい、ネーちゃん。可愛いな。どうだ少し付き合わねえか」と不意に声をかけられた。

「(こ、怖い…。お酒臭い…)い、いえ、ボク、人を探しに来ただけです。もう帰りますから」


「へへっへ、そんなこと言うなよ。酒がダメならそうだな、いい体してるじゃねえか。いくらでヤらせてくれるんだ。そうだ、俺たち全員の相手してくれよ。ゲハハハ」


「え、ええ~、イヤです。そんな事しません! 離してください。帰りますんで」

 ユウキは涙目になって、逃げようとするが、男の力が強く逃げられない。


 ユウキが本気で泣きそうになっていると、ドガン!と強烈な音がして、ユウキを掴んでいた男が吹き飛んだ。


「おい、お前ら! 組合内で揉め事はご法度のはずだぞ! しかも市井の女の子に手を出すなんざ、それでも王都の冒険者か! 昼間から酒なんぞ飲みやがって、さっさと仕事に行け!」


 男を殴り飛ばしたのは、40代前半位の大柄な男性で、髪は短髪、立派な口ひげを蓄えている。特徴的なのは左頬に大きな傷があることで、決して醜くはなく、むしろ表情に迫力を与えている。


「オ、オーウェンさん! すみませんでした~」


 男たちはすたこらと組合から出て行った。ユウキはポカーンとしてその様子を見ていると、男性が話しかけてきた。


「お嬢ちゃん。ここはお嬢ちゃんのような女の子が来る場所じゃないぞ。それとも何か用があったのか?」


「え、あ、えと、はい。少し聞きたいことがあったので、知り合いの冒険者を探しに来たんですけど、不在のようだったので帰るところだったんです。そしたら、あの人たちに捕まって。こ、怖かったです…」


「誰だ、知り合いってのは」

「はい、レオンハルトさんです」


「ああ、あいつか、あいつは暫く王都から離れて仕事するって言ってたな。いつ帰ってくるかわからんぞ」

「そうですか、それならいいです。助けてくれてありがとうございました」


「まあ待て。代わりに俺が聞いてやろう」

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