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第80話 死闘

「ぼ、防壁が破られた。もうだめだ!」


 破壊された防壁からなだれ込んでくるオークを見て、仲間たちが絶望の声を上げる。

 その中で、ララとカロリーナだけはユウキの側に立ち、信頼している目つきでユウキを見る。その2人の目を見て、ユウキはにこっと笑って見せると、


「まだ終わりじゃない! ボクたちまだ何もしていない! みんなよく聞いて!」

 全員を元気づけるように大きな声を上げる。


「戦うよ。全員で戦う。そして生き残るんだ。いい、フレッドとカロリーナはゴブリンが入って来ないように出入り口の通路を防壁で塞いで。破られそうになったら何度でもかけ直して」

「ララは壁にある火置きに松明を置いて行って。明かりが必要なの。ケントはララの護衛をお願い」といってマジックポーチから未使用の松明を出す。

「前衛組とボクはオークたちを迎え撃つ! フィーアとシャルは、前衛組の支援。ここが魔法と矢の使いどころだよ。頼んだからね!」


 ユウキの指示に全員が頷き、それぞれの配置に着く。


「各個撃破戦法だよ。オークたちをやっつけたら次はゴブリンだ。そして全員生き残る! みんなの力を合わせるんだ!」


「おおーっ! ユウキ、がんばろうね!」ララとカロリーナの大きな声が響く。


「アイス・ウォール!」カロリーナが通路の遮断を始めた。それを横目で見てユウキは、

(これで前方だけに集中できる。さあ、こい! 魔物ども!)と闘志を燃やす。


 広間には数十体のオークに続いてオーガとオーグリスが入ってきた。オーガはユウキたちを見ると、卑下た笑いを浮かべた。


『さっきは、ふざけたマネしてくれたじゃねーか。お前ら全員、俺らの飯にしてやる。いや、女どもはオークの子袋にしてやるぞ。ゲハハハ! 覚悟しろ!』


 オーガはサッと腕を上げると、それが合図となり、オークが突撃してきた。


「突撃してきたオークはボクとイグニスとシャルで対処する! ヘラクリッドはオーガを、ユーリカはオーグリスを頼む! フィーアはユーリカを支援して」

「おおーっ!」


「イグニス! シャル! この戦いでボクは自分の封印を解く。これは誰にも言ってはいけない。お願いよ!」


 そう2人に言うと、魔力を高め、漆黒の霧を生み出し突撃してくるオークを包んだ。突然視界が奪われたオークは右往左往を始める。


「今だ!」


 ユウキが魔法剣を振りかざし、視界を奪われたオークの首を胴を切り裂く。魔法剣が松明の光にきらめく毎にオークの命が絶たれて行く。イグニスとシャルは何が起こったのか始め理解できなかったが、ユウキの戦いを見て我に返り、イグニスはバトルアックスをオークに叩きつけ、シャルロットは矢を素早く打ち込み始めた。


 ユウキが暗黒魔法を使ったのを見て、ララとカロリーナは「使ってしまったか」と気持ちと「これからどうしようか」という気持ちが入り混じり、不安感ともいうべき複雑な感情が湧き上がっている。しかし、今は生き残ることが先決と気持ちを入れ替えるのであった。


「ケント君。松明はもういいわ。守ってくれてありがとう、ユウキたちをお願い。私はカロリーナの方に向かうから」

「おう! 気をつけて」

「そっちもね。無理しちゃだめだよ」


 漆黒の霧の効果が切れてきた。ユウキは再度霧を生み出して、オークの足止めを図る。

 そこに、ケントも参戦し、槍でオークの急所を的確に突いていく。ユウキやイグニスは反撃もままならないオークを屠るが、中には魔法をレジストし、武器を振り上げて向かってくるオークもいる。それらにはシャルロットが矢を浴びせて倒していく。


 戦闘を開始して30〜40分ほど経ったろうか、オークをあらかた倒した4人は、倒し残しがいないか周りを見回した。その時、ユウキを大ぶりなハルバードの一撃が掠めた!


「うわあ! な、なに?」


 ユウキがハルバードが振り下ろされた方を見ると、オークの上位種「ハイオーク」が2体、こちらを見ている。ハイオークはオーガにも勝るとも劣らない堂々とした体躯をしており、それぞれ、自分の背丈より大きいハルバードを持っていた。


「(あ、あんなのの一撃を喰らったら、間違いなく死んでた…)イグニス、ケント、右をお願い。ボクは左を、シャルは臨機応変に支援して」


「おっし! 行くぞケント」

「おう!」


 ユウキはハイオークの1体と対峙している。ハイオークはハルバードを胸の前に横に構え、ユウキは魔法剣を正中に構える。

(ハルバードのようなポールウェポンは、懐に飛び込めば取り回しができない。問題は飛び込むタイミングだけど…)


 しかし、ハイオークは大振りせず、隙を作らない戦いをしてくる。明らかに戦い慣れた個体だ。ユウキは防戦一方になり、次第に焦りが出て来た。


「ユウキ! しゃがんで!」


 その声に、咄嗟に後ろに下がって身を屈めたユウキの頭上を矢が飛んで行く! ハイオークはユウキの陰に隠れて飛んできた矢を躱すことができず、利き腕に矢を受けてしまう。


「グオオオオオ!」

「チャンス!」


 ユウキはハルバードを振ることができなくなったハイオークの胸元に飛び込んで、顎の下から魔法剣をおもいっきり突き刺した。頭蓋を突き抜けた剣が脳を破壊し、ハイオークは立ったまま絶命する。ユウキは剣を抜くと、ハイオークをけり倒した。


「ありがとう、シャル。助かったよ。」


 もう一体のハイオークはイグニスとケントが戦っている。ハルバードの一撃をイグニスがバトルアックスで受け止め、動きの止まった隙にケントが槍で突くという、連携した戦いを展開していた。

 体力と耐久力に優れるハイオークだが、反撃もままならないうちに傷を多数受け、痛みで動きが止まり、膝をついた瞬間、イグニスの一撃で首を飛ばされ、盛大に血しぶきを上げて倒れた。


「こっちも終わったようだね。オークとハイオークはすべて倒した。あとはオーガだけど、ヘラクリッド君たち大丈夫かな…」


 ユウキが、広場の奥に目を向け、友人たちの戦いに思いを馳せた。

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