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第78話 廃城探索

 ユウキをリーダーとするCクラスの面々は訓練会場である、ヤキマの森の中にある廃城の前に来た。廃城は石造りだが放棄されて大分経つのか、所々朽ち果てて崩れており、また、蔦やコケで覆われている。しかし、城の規模はかなり大きく威容を誇っており、盛期には相当の国力を示していたと思われた。


「入り口はここね。みんな用意はいい? 入ります」


 先頭にユウキ、ヘラクリッド、イグニス。2列目にフィーア、シャルロット、カロリーナ。3列目にララ、ケント。最後尾にフレッド、ユーリカの順で並んで入った。入り口から10mほど比較的広い1本の通路を進むと、通路の奥は広い大広間となっていた。ユウキたちは松明の灯りを頼りに広間を調べる。


「この部屋は特に何もないようだね。ただ、何かこう…イヤな臭いがする」


「ふむ、もしかしたら魔物が住みついている可能性がありますな。なに、魔物なんぞ、わしの筋肉にかかれば恐れるものではありませぬ」

「うん、ヘラクリッド君。頼りにさせてもらうよ。ただ、楽観視はダメだよ」


「ユウキさん、奥に向かう通路が2本ありますわ」


 フィーアに言われてユウキが部屋を見回すと、入り口からの正面は壁になっているが、部屋の左右に通路が開いている。


「どちらに進みますか?」というフィーアの問いに、ユウキは少し悩んだ後、みんなを見回して進む方向を指示した。


「左を進もう、空気の流れを感じる。通路が奥に続いているかもしれない。カロリーナ、ボクの松明を持ってくれない?」


 ユウキは、カロリーナに松明を渡すと、マジックポーチから糸玉を取り出した。


「糸の端をこの柱に結んで…と。よし!」

「ユウキ、それは?」シャルロットが不思議そうに聞いてくる。

「この糸を伸ばしながら行けば、帰りに迷うことがなくなるかなってね」

「へー、良くそんな事知ってるね? 凄いねユウキって」


 素直に感心するシャルロットにユウキは少し恥ずかしくなる。実は、日本にいた頃に読んだ探偵小説に洞窟を捜索する話があり、糸玉を使っていたのを思い出していたのだ。

 準備ができ、最初の並びのまま左側の通路に入って奥に向かう。途中、鍵のかかってない扉の部屋の前に来た。


「入ってみようか。何があるかわからないから、みんな武器を持って。ユーリカは後ろの警護をお願い」

「わかりました」


 ユウキがゆっくりと扉を開いて、中の様子を伺う。中は5m四方の四角い部屋で、机と本棚があり、本や空き瓶、壷が無造作に散らばっていた。暫く本を調べていたが、長い年月でほとんど朽ち果てており、読めそうなものはなかった。


「特に目ぼしいものはないわね。ユウキ、ここで食事しない? お腹がすいてきた」


 カロリーナが昼食休憩を提案し、食事を摂ることにした。部屋の入り口に交代で見張りを立て、みんなから預かった荷物をマジックポーチから出して、めいめいに座って食事を摂る。


「ユウキさんたちのお弁当美味そうだな」とイグニスとケントがのぞき込んでくる。

「うん、美味しいよ。どう、量はあるから食べてみる?」


 いいのかと言って2人はユウキの弁当をつまんで口に入れると、「うめ~~!」といって大喜びした。その様子を見てカロリーナが「ヤギかお前ら」とツッコミを入れたのがユウキは可笑しかった。


 男たちを通路に出し、女性陣が部屋の壷に順番に小用を済ませた後、奥に進むことにした。通路は若干の空気の流れはあるが全体的に澱んでおり、気分が悪くなる。途中、同じような部屋がいくつかあったが、特にめぼしいものはなかった。ただ、比較的新しい人骨が転がっている部屋があり、迷ったのか魔物の餌食になったのかわからないため、ユウキたちは警戒心を高めた。


 さらに、しばらく進むと最初の大広間より広い空間に入った。


「ここも広間かな? 位置的には最初の広間の裏側になると思うけど…」


 ユウキが、新しい糸玉を出して最初の糸に結び付け始めたので、ユウキの手元をカロリーナが松明で照らしている。結び終えて糸を床に置いたユウキをフレッドが、


「ここに上に昇る階段があるよ」と呼びにきた。


「よし、昇りましょう。いいですよね皆さん、きっと上に何かありますわ。」

 フィーアがやや興奮したように提案する。


「どうするユウキ?」ララが不安そうに尋ねてくる。

「そうだね。この部屋には何もないし、上に行こうか。ただ、警戒だけは怠らないようにしよう。さっきの人骨の事もある。油断して全滅だけは避けたい。」


「さすがリーダー、話が分かる! ですわ」


 階段を上がると、広い踊り場となっていて、奥に扉が3つ。いかにも何かありそうな感じだ。左右の部屋を調べるが、がらんとした何もない部屋だった。よく見ると、ここにも人骨が転がっている。部屋を出て、残りの真ん中の扉に手をかけ、ゆっくりと開けて全員で中に入る。松明の灯りでぼんやりと照らされた部屋の奥に、人影らしいものが見えた。


「みんな! 待って、何かいる!」


 ユウキが鋭く小さな声で注意する。武器を持っている者はそれを構え、静かに部屋の奥を見る。


 部屋の奥の人影がゆっくり近づいてきた。ユウキ達から10mほどの距離に近付いたそれは、身長2m位の大柄な怪物が2体。姿は人間に似ているが肌は灰色で頭に2本の大きな角を持っている。体も筋肉質で力も強そうだ。驚くことに、1体は女だった。


「オーガだ…」

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