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第77話 討伐実習

 春も終わり、初夏に入った6月のある日、担任のバルバネスから討伐実習の話があった。討伐実習は2年生の必修科目で、日ごろ学んだ成果を見せるため、クラスごとに決められた場所に赴き、遭遇した一角ウサギやコボルトといった小型の魔物を狩り、魔物との戦い方の訓練を行うというものだ。毎年、大けがをする学生も何人か出るという危険な実習だ。


「この訓練は志願制だ。今、紙を渡すから希望の有無を書いておけ。クラス委員は集めて俺の所に持ってこい」

「参加しない者は、学園施設で5泊6日の学年合同合宿だ」


「このクラスの割り当て場所は、王都から南に下った、ヤキマの森の中にある廃城だ。馬車で2日ほどかかる。各自準備は怠るなよ、最低持っていくものは「しおり」に書いているからな」


 昼休み、ユウキと友人たちは学園の食堂で実習の準備、特に武器防具について話していた。


「ボクとユーリカは鎧と魔法剣、バルディッシュ。いつも通りだね」


「私たちはこの間ダスティンさんに軽装を作ってもらいました。その上に魔法石を装着したマントを羽織ります」

「フィーアは攻撃魔法が使えるし、ララは投げつける魔法石がある。私何もない…」


「カロリーナにはボクの予備の剣とミスリルダガ―を貸してあげるよ」

「剣にはこの間、ララに軽量化の魔法石を付けてもらったからカロリーナでも十分扱えると思うよ」

「いいの? やったあ! ユウキありがとー」


 話は自然と昨今の女性ばかりの誘拐事件になる。王都では憲兵隊の捜索や巡回が厳しくなり、行方不明になる女性はだいぶ減ったものの、地方、特に憲兵隊が常駐している都市ではなく、憲兵隊が不在の小さな町や村で多発するようになったという。実行犯の手口が優れているのか、全く手掛かりがなく、忽然と消えてしまうらしい。


「そういえば、この学園からも1人行方不明になったのは知ってますよね。実はあれ、執事長ギルバート様のご息女らしいです。王宮でも人を出して捜索していますが見つからないとのことで、ギルバート様は大分心配されているそうですわ」


(ギルバート様の? なぜギルバート様の娘が…、まさか、マルムト王子が関わっているの? 考えすぎかな。でも、もしそうだとしたらもう…)


「どうしたのユウキ。何か心配事?」

 ララが不安そうに聞いてくる。


「え、いや、ボクたち実習で留守にしたらヒルデ1人で大丈夫かなって…」

「そうですわね…。心配です。私たちが留守の間、オプティムス家騎士団から騎士を派遣していただいて護衛させましょう」


「いいと思うけど、ヒルデびっくりしちゃうんじゃない?」

「いえいえ、エルフの美少女を護衛する騎士。物語的で素敵じゃないですか。うふふ」

「あ~あ、フィーアの変な妄想がまた始まったよ」


 ララがニヤニヤ笑って妄想に耽るフィーアを見て呆れたように言う。ユウキはそれが可笑しくてクスクスと笑うのであった。


 翌日のホームルームで、バルバネスから訓練に参加する生徒の発表があった。


「このクラスは10人の参加申し込みがあった。読み上げるぞ」

「男子は4人。ヘラクリッド、フレッド、イグニス、ケント」

「女子は6人。ユウキ、フィーア、ユーリカ、カロリーナ、ララ、シャルロット」


「このメンバーだと、そうだな…。ユウキ、お前がリーダーだ。ヘラクリッドとフィーアが副リーダーでいいな。訓練には俺も同行する。近くの村までだがな、出発は2日後だ」


「はい!」


 休憩時間、ユウキは、訓練に参加するクラスメイトに集まってもらい、改めて自己紹介とそれぞれの確認を行うこととした。


「みんな、リーダーに任命されたユウキです。イグニス君、ケント君、シャルロットさん、よろしくね。みんなの得意を教えてくれる?」


「俺は魔法が使えないが武器は一通り使えるぜ。今回はアックスを持って行く予定だ。」

「イグニス君はアックス系か、うん、いい選択だね。がんばろうね」

「おう!」


「僕は風系付与魔法と槍かな。槍術は小さいころから習ってる」

「ケント君は槍ね。今回は取り回しのしやすい短槍がいいかもね、大丈夫?」

「問題ないよ、期待してて」


「あたしは弓が得意。狩りもしてるんだ。弓の腕前は結構自信あるよ。魔法は使えない」

「シャルロット! 来たわねロリッ子。その貧乳っぷり、好感が持てるわね」


「(もう、カロリーナはホントぶれないな)シャルロットさん、弓使いがいると戦術の幅が広がるの。期待させてもらうね」

「シャルでいいよ。任せて」


 その後、10人は廃城の地図を見ながら、探索時の隊列や魔物に遭遇した場合の役割分担、緊急時の命令順を決めて行った。


 討伐訓練出発の当日、マヤとヒルデが『皆さん気をつけてくださいね』と見送りに出てくれた。


「うん、気をつけて行ってくるよ!」


 ユウキが元気よく返事をし、フィーアがヒルデの護衛をする騎士を見回して、念押しをする。


「騎士の皆さん。留守の間、ヒルデさんを頼みましたよ。オプティムス家の名を恥ずかしめることのないよう、しっかりと護衛の任を果たしてくださいね」


「ハッ、お任せください!」

「エルフの美少女を護衛できるなんて、最高の任務であります! ハアハアであります!」

「初夏の汗ばんだ薄着が巨乳に張り付き下着がくっきりと浮かび出る。そんな姿を見られるとは感謝の極み。しかし、私は大きさよりも乳輪の美しさが絶対と思います!」


 ヒルデのひきつった顔とフィーアの満足そうに頷く顔を見て、ユウキたちはドン引きしつつ、この主人あってのこの家臣だなと思うのであった。

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