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第71話 美少女コンテスト(後編)

「さあ、美少女コンテスト最大の見せ場。水着美女だよ。今度は3年生からだから、ユウキは最後の方ね。どう、準備はいい? トイレには先に行っておくのよ」

「先に敵を観察できるのはいいですね。対策も練ることができます」

カロリーナとユーリカがユウキを水着に着替えさせて、準備を進めている。


「うん、トイレは先に済ませて来たよ」

「でも、この水着…。今朝見たのと違うよね、すり替えたでしょ。カロリーナ」

「ばれたか。諦めなさい、早く着替えて」

「うう、恥ずかしい」


「ねえ、他の水着ないの? さすがのボクもこれ着て大勢の人の前に出るの恥ずかしいよ」

「何言ってんの、ユウキのくせに。可愛いじゃない。ユウキの魅力に溢れているよ」

「ユウキのくせにってどういうこと! もう、ユーリカ、何とか言ってよ」


「いや、今回ばかりは私もカロリーナに賛成ですね。他の参加者も皆さん、スタイルいいですよ。おっぱいはユウキさんが一番大きいですけど。だから、皆さんと似たような水着では属性が失われてしまいます。ユウキさんは「おっぱい属性」なんです。私と一緒です。だから、ここはこの水着一択です」


「ほーらね。私の言ったとおりでしょ」

「うう、ユーリカに裏切られた。こんな時に限ってララもいないし…」


「さあ、会場の皆さん! 美少女コンテスト、午後の部の開会です! さあ、午後は皆さんお楽しみの「水着美女」でーす。参加者の皆さんには、1人ずつステージを練り歩いてもらい、最後にあるシチュエーションのセリフを言ってもらいます。内容は人それぞれ、会場の皆さん、お楽しみに!」


「水着美女は3年生から始まります! ではスタート!」


「なに、シチュエーションって。ボク、そんなの聞いてないよ」

「あら、私も聞いてないわね。ユーリカ知ってた?」

「いいえ、私も知りませんでした」

「はは~ん。これは事前告知なしイベントって訳ね。やるわね、運営」


 水着美女は順調に進んでいる。女の子が出るたびに会場からおお~っというどよめきが起こる。


「あれは3年Sクラスの先輩ね。ユウキほどじゃないけどいい体をしているわ。水着も花柄のビキニ、可愛い感じをイメージしながらも大人っぽさを出しているわね」

「シチュエーションは、恋人と花畑で話す最初の言葉か。なんなのこれ…」


「この子は2年Bクラスの子ね。ロリねロリ。すっごく可愛い。ふさふさのツインテとリボンがバッチリ決まってる。青いフリル付きのワンピースもいいわね。何より胸の大きさが好感持てるわ。私の一押しはこの人よ」

「シチュエーションは、街中で憲兵に声をかけられたときのいいわけって、可哀そうでしょ。これ!」


「おっ、次は1年Sクラスのルミナか。う~ん、フィーアが言うだけあるわね、中々の美少女ぶりだわ。ユウキと勝負できる逸材ね。胸は大きめだけどユウキの方が勝ってる。水着はユーリカが来ていたのと同じホルターネックビキニね。悔しいけど色っぽいわね」

「シチュエーションは男が2人、女性を奪い合って決闘するときの女性のセリフ? 運営、夢見過ぎじゃない?」


「以上、カロリーナさんの解説でした」


「今のところ、ユウキの対抗馬は2年のロリ先輩と、1年のルミナね。そろそろユウキの番よ。がんばってね」


「う、うん。もう逃げだしたい…」


「さあ、残りの参加者もあとわずか。次は「学園のサッキュバス」こと、1年Cクラスのユウキ・タカシナさんだー」


「うおおおお!」「待ってましたー」男たちのボルテージが最高潮になる。


 舞台袖から出てきたユウキを見て、会場は一瞬静まる。ユウキはメイド風デザインのマイクロビキニ。胸は先端から3分の1ほどを布が覆い、下も前後が極小の布で両脇を紐で結ぶという、極めて危険な水着だ。頭にもメイドさんのカチューシャをつけている。


「こ、これわ~! 女教師スタイルに続いて、危ない水着でやってきたー! なんて危険なメイドさんなんでしょう。正に男を殺す水着! 私たちの期待を裏切らない女、ユウキさん! さあ、マクシミリアン様、感想を!」


「い、いや、何とも言葉が出ないね。ただ、ただ素晴らしいとしか…」


『素敵ですユウキ様。ユウキ様の体の核心部分だけ隠し、それ以外はあえて視線にさらす。男たちの視線を感じて悶え恥ずかしがるユウキ様。ああ、マヤ感激です』


「あの、フィーアはドン引きです。もう、長時間正座の刑はイヤですよ…」


「お父様! 見ちゃダメです!」

「お、おお(しっかり目に焼き付けたから遅いぞ、フェーリス。私の勝ちだ。しかし、いい体だなあ)」

「いや、今日は来たかいがあったな。うむ、余は満足だ」

 後方で控える護衛の騎士たちも満足そうだ。


「さあ、危ないユウキさんへのシチュエーションは…、こ、これは~」


(くう~、恥ずかしすぎる。早く、早く教えて。さっさと終わらせたい)


「ユウキさんへのシチュエーションは、夕焼けの海岸で、好きな人から告白されたときの返答! 仕草付きでお願いします」


「え、え、ええ~! なにそれ。超えなきゃならないハードルが高すぎる。だって、ボクそんな経験したことないし~」


「さあ、どうぞ。これをしないと棄権になりますよ」

「わ、わかりました…」


 ユウキはマクシミリアンをちらと横目に見てから、意を決して言葉を紡いだ。


「す、好きって言ってくれてありがとう。ボ、ボクも君の事が…、君の事がずっと前から好きでした。だから、今、ボクの心は嬉しさと幸せでいっぱい。胸のドキドキが止まりません。もう一度言わせてください。君の事大好き!」


 両手を前に組んでもじもじしながら、俯き加減の顔を真っ赤にして、ユウキは精一杯可愛らしく、(架空の)告白の返事をした。


「うおおおおおおお!」と会場に男たちの慟哭が響き渡る。危ないメイド水着でこんな返事をされたら、男は一瞬で獣になるだろう。今、正に会場内の男たちは獣になった。


「す、素晴らしい。コレッタ感動です。いや、ありがとうございました。審査結果発表までお待ちください!」


「ユウキ、お帰り~」

「は、恥ずかしかった~。何なのあのシチュエーションは。水着より恥ずかしかったよ、もう」


「ユウキ」

「はい?」


「ユウキ、あのセリフの前にマクシミリアン様見たでしょ。もしかして…」

 ユウキは心臓の鼓動が跳ね上がり、顔が熱を帯びるのを感じた。


「ユウキ、もしかしてマクシミリアン様から告白を受けた時の事を想像してたんじゃ」


「まままま、まさか~。そんなことありませんよ、そんなこと。考えただけでも不敬罪だよ。ほら、着替え手伝って。いつまでもこんな恥ずかしい恰好してられないよ、ふう」


「ふふ、怪しいな~」


「さあ、今年の学園祭最後のイベント、美少女コンテストの結果発表です!」

「第3位、1年Sクラス、ルミナさん」

「第2位、2年Bクラス、エヴァリーナさん」


「おお、あのロリッ子先輩、入りましたか。よかったよかった。貧乳もまだまだ捨てたもんじゃないわね」


「そして、栄光ある第1位は…」

「第1位は、圧倒的多数の得票数、1年Cクラスのユウキさんでーす」

「さあ、名前を呼ばれた人は壇上に上がってください。マクシミリアン様から表彰状が手渡されます」


「おめでとう、ユウキ君」

「は、はい。ありがとうございます」

「ユウキ君、最後のセリフの前に私の事見てくれたね。私の事意識してくれたのかな。あと、できれば今日みたいな水着は私以外の男性には見せないでほしいな」


「!(えっ)」


 学園祭は終了した。家までの帰り道、ユウキはお祭りが終わった時の喪失感を感じながら、マクシミリアンが最後に、そっとユウキにだけ聞こえるように言った、あの言葉の意味をずっと考えていた。


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