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第65話 ユーリカ初めての勝利!

 ユーリカがマントを羽織ったままCリングに上がる。対戦相手は既にリング内にいて、ユーリカを小馬鹿にしたような目で見ている。


「ふん、俺様の相手は女か、つまらん。直ぐに終わらせてやる。いや、ひん剥いてやるか、その方が楽しそうだ」


(思ったより呼ばれたの早かったけど、かえってよかった。余計な緊張しなくてすむ。それに、こいつ人を馬鹿にして、こんな奴に負けたくない!)


 ユーリカは、マントの首元のボタンを外すと、思いっきりマントを放り上げた。空に舞うマントの下から現れた、白銀に輝く完全装備の美しい少女の姿に、対戦相手も応援に来ていたクラスメイトや観客も息をのむ。ユーリカは、布を外して取り出した、大型の戦斧「バルディッシュ」を構えた。


「ユウキちゃん、あれはバルディッシュか? 軽装鎧も動きやすそうな上に防御力も高そうだ。赤い魔法石の力か、あの意匠も中々いいな」

「ふふ~ん、凄いでしょう。あれはボクがお世話になっている王国一のドワーフの武器職人、ダスティンさんの手によるものです。魔法石は友人作だよ」

「そうか、凄いな。あれだけのものを作れる職人はそういないぞ」


 レフェリーを務める先生がリングに入ってきた。


「両者、前へ」


 ユーリカとブルーノがリング中央に進む。ユーリカがブルーノを鋭く見つめると、ブルーノは怯む。ユーリカの姿とユーリカの持つ戦斧の迫力に押されているのだ。


「ルールは解っているな。武器以外使用禁止。魔法は防御魔法だけだ」

 ユーリカはコクンと頷く。


「それでは、試合開始!」


「うわあああああ!」


 ユーリカが大きな声を上げて、間合いを詰め、戦斧を大きく振り上げてブルーノに勢いよく振り下ろす。ブルーノは剣で防ごうとするが、戦斧の重量に速度が加算された威力の前には無力な行為だった。バキン!という音を立て、剣が破壊されると同時に、ブルーノが床に叩きつけられ、動かなくなった。この一瞬の出来事に、審判も観客も声を失う。

 我に返った審判が「勝者ユーリカ!」と告げると、大きな歓声が沸き上がった。


「やった!やったよ、ユーリカ! 凄いよ」

「おお~、すげえぞあの子!」「カッコいい!」「次も応援するぞ!」「スカートの中、白だった!」


 ユーリカが振り返ると、クラスメイトや観客の声援が聞こえ、ユウキやモーガンが拍手をしてくれているのを見て、ユーリカの胸は色々な思いが交錯し、嬉しさで一杯になった。


「ユーリカ、まずは1勝おめでとう!凄かったね。瞬殺だよ。いや~、戦斧を振る女の子の姿っていいよね~、グッとくるものがあるよ」


「ユウキさん、モーガンさんも…。これもユウキさんや騎士団の皆さんのお陰です。本当に感謝しかありません。ありがとうございます」


「ああ、次も頑張れよ」


「他の試合はまだやってるよ。一緒にアルを応援に行かない?」

「はい!行きましょう」


 Aリングの側に来ると、アルを応援していたララがいた。表情は良くない。


「ララ、アルの様子はどう」

「ユウキ、あ、ユーリカも。ユーリカ、初戦勝利おめでとう。アルはね、かなり苦戦してる。厳しいかも…」

「アルが!信じられない。アルは1年生の中でもかなりの実力者だよ」

「うん…、でも見て」


 ララに言われてリングを見ると、アルが相手を捕えようと得意のハルバードを振っているが、相手は、その動きを読み、一撃を入れさせない。むしろ、空振りして体勢を崩したところに長剣の一撃を与え、的確にアルの体力を奪っていく。


「はあはあ、くそっ!ちょこまかと!全然当たりゃしねえ」

「フン、その程度か」

「てめえ…」


 マルムトの挑発に、激怒したアルはハルバードに加速をつけてマルムトに叩きつけようとするが、マルムトは長剣を柄に当てて受け流し、懐に飛びこんで胴体を横に薙ぐ。


「グウッ!」

「アル!がんばって!」

 ララの声援が飛ぶが、形勢は全く不利だ。いつ倒れてもおかしくない。


「強い。派手さはないけど、動きが早いし、技が的確に急所を責めている」

「ユウキさん…」


「長柄武器に対する戦い方のお手本みたい。それに、何というか、戦い方が実にイヤな感じがする。何かこう、人を見極めるような…」

「そうですね。私もそんな感じがします。戦いたくない相手です」


 ユウキとユーリカがそんな話をしていると、力尽きたアルがリングに膝をつき、審判がマルムトの勝利を告げる。


「うぬ、アル殿は敗退したのですかな。なんと不甲斐ない」

「あら、ヘラクリッドさん」

「ユーリカ殿、1回戦勝利、お見事です。わしも圧倒的勝利を収めましたぞ」


「ヘラクリッド君、アルの相手、かなり強かったよ。ボクでも勝てるかどうか」

「なんと!マルムト様がそんな実力者とは聞いたことがありませんでしたぞ」

「え、そうなの?」


 アルがリングから降りてきた。


「負けちまった。情けない…」

 落ち込んでいるアルにララや、ヘラクリッドが励ましの言葉をかける。ユウキはそんな様子を微笑ましく見るが、どうにもマルムトの事が気になっていた。


 2回戦開始のアナウンスがあった。


「あっと、行かなきゃ。ユウキさん、行ってきますね」

「うん、ボクも行く。ユーリカを応援しなきゃね」

「ありがとうございます。ユウキさんが見てくれていると思うと勇気100倍ですよ」

「大げさだなあ」


 ユーリカの相手は上級生男子だったが、またもや瞬殺で片を付け、準々決勝に進んだ。ついでにヘラクリッドも勝ち進んだ。


「さあ、次は準々決勝だね。次もガンバロウ!」

「はい!」

ユーリカは、応援してくれる友人達のためにも、次も頑張ろうと、気合いを入れるのだった。

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