第63話 カロリーナ、学園祭の準備忘れる
王国騎士との訓練の数日後、ユウキとユーリカは学園での特訓を終えて、家に帰るとダスティンに呼び止められた。
「学園祭の武術大会って、刃を潰していれば、自分の武器防具を使っていいとフィーアから聞いたが、そうなのか」
「うん。大体は学園の備品を使う人が多いみたいだけどね。貴族は自分専用の武器を持ってくるみたい」
「そうか。ユーリカ、手を見せてみろ」
ユーリカは言われた通り、ダスティンに手を見せる。ダスティンは手のひらを上に向けて、にぎにぎと揉んだりなでたりしている。
「うくくく、くすぐったいです…。きゃあ!」
急に二の腕を掴まれて悲鳴を上げる。
「ふむ…。ユウキ、お前の知り合いに魔道具作りができるヤツがいるか」
「うん、同級生の女の子がいるよ」
「よし、明日連れてこい。ユーリカ、体のサイズを測るからこっちこい」
「え、体のサイズって…。エッチな事じゃないですよね」
「違う! お前の武器と防具を作るんだ」
ユーリカが、ダスティンと一緒に店の奥に行ったので、ユウキは1人でリビングに向かった。リビングではカロリーナとマヤが、顔を突き合わせて密談していた。
「マヤさん、不味いことになりました。私ことカロリーナ、クラスで行う販売用の小物作りをすっかり忘れていました。今から作れるもので、何かアイデアはありませんか。できればお客を「あっ」と言わせられれば最高なのですが」
『ありきたりはダメなのですね。そうですね…。こんなのはどうでしょう。ユウキ様の着なくなった寝巻や下着を使って、枕かクッションを作られたらどうかと。ユウキ様のにおいが染みついた抱き枕。男共が買わないわけがありません』
「マヤさん、えげつないですね。仮にもユウキの親友たる私にそんな提案をするとは…、そのアイデア最高です。採用させてください」
『わかりました。調達は私にお任せください。ああ、ユウキ様のにおいが染みついた抱き枕をケダモノのような男が乱暴に…』
「マヤさん、カロリーナ、どん引きです」
『カロリーナ様、ユウキ様の美人コンテストで御協力いただきたいことがあります』
「急に話を変えましたね、協力しましょう。作戦参謀としてフィーアも参加させます」
「なんか、悪い話をしている顔だね。あれは、何を話してるか分からないけど、イヤな予感がする。まあいいや、お風呂に入って来よっと」
ユウキがお風呂に入ろうと服を脱いでいると、ユーリカもやってきた。一緒に入ることにして、2人は並んで体を洗い始めた。
「オヤジさん、ユーリカ専用の武器防具作ってくれるんだね」
「はい! 大会用の刃のない武器の他、実戦用も作ってくれるって言ってました」
「おお、それは良かったね。オヤジさん、きっといいもの作ってくれるよ」
「はい、楽しみです。それはそうとユウキさん、胸少し大きくなってませんか」
「あ、わかる? 最近ちょっと大きくなったみたい。でも、ユーリカにはかなわないよ」
「ユウキさんのおっぱい、どれほどのものか確かめます!」
「わあ! 急に揉まないで。どれ、ユーリカのおっぱいはどうかな…。おお! 柔らかい」
「これ、カロリーナには見せられないね~。絶体妬まれちゃう」
2人は顔を見合せて笑い合った。
「へーっくしゅ!」
『あら、カロリーナ様、風邪ですか?』
「ううん、きっと誰か、私の悪口言ってる。たぶん、乳のデカい女たちに違いない…。」
次の日、ユウキはダスティンのもとにララを連れてきた。
「こんにちは、ダスティンさん。ユウキの友達のララと言います。魔道具の水晶作りが得意です。使える魔法は炎系です」
「おう、ララか。ユウキがよくお前の事を話しているな、少し手伝ってもらいたいことがある。来てくれ」
「は~い。ユウキ、お手伝いしてくるね。何の手伝いかわからないけど」
ララがダスティンの工房から戻り、みんなで夕食を取った後、ララが帰ると言ってきた。
「今日はもう帰るわ。明日もまた来る。暫く通うことになるかも」
「ララ、良かったら手伝いが終わるまで、ここに泊まったら。ボクと一緒の部屋でよければだけど」
「え、いいの。ヤッター! 最近ユウキと話せてなかったから嬉しー。明日から頼むね、ユウキ大好き!」
「うん、ボクもララと一緒、今まで少し離れてた感じがしてたから。ララはボクの初めてのお友達だし、いっぱいお話がしたい。だから泊ってくれるととても嬉しいよ。じゃ、今日は送るね」
「あ、私も一緒に行きます」
ユウキとユーリカはララを送るため、家を出て行った。それを見たカロリーナ達3人。
「行きましたね」
「では、今のうちに…」
顔を見合わせて頷くと、2階へ上がっていくのだった。
学園差までの間、ユーリカはユウキと体力づくりと基礎訓練をこなし、騎士団の訓練所で20人抜き特訓も何回か行った。訓練ではボロボロにされたが回数を重ねるうち、何発か団員に当てることができるようになり、自分の力が上がっていることを素直に喜ぶとともに、1か月前の自信のない自分ではない、「やればできるんだ。」という「自信を持った自分」になっていることに驚きを隠せなかった。
一方、ララはユウキの部屋に寝泊まりしながら、ダスティンの手伝いをしている。「何をしているの?」とみんなに聞かれるが「ないしょ」といって誤魔化している。
作業が終わり、ユウキとお風呂に入ってお話して、一緒のベットで寝る。そんな時間が楽しくて、「こんな時間が長く続くといいな。これからもユウキとずっとお友達でいたい」と想いを強くするのだった。
そしてここに、学園祭の準備を終えた3人組がいた。
「やっと終った。ユウキの古着で作った枕とクッション。なんと、中は寝巻や下着を刻んだ布片が詰まってます! これは売れる!」
『私もコンテスト用の衣装と水着の作成が終わりました』
「おおっと!これは中々…。臨海学校の時よりエロいね」
『カロリーナ様、ダミー水着との入れ替え、頼みます』
「私も終了しました。コンテストの司会者に渡すPR文、読んでみてください」
「ぶわっふぁははははは! いい、最高!」
『プププッ! アハハハハッ!』
『はあ~、笑いました。ユウキ様の晴れ姿、私も見に行きたいですけど、無理ですか』
「マヤさんなら、見た目生きてる人と違わないから、大丈夫じゃない?」
「当日はメイド服じゃない普通の服で来てください。私たちが案内しますよ」
『本当ですか! ありがとうございます』
リビングのテーブルで顔を突き合わせて密談しているカロリーナ達を見て、ダスティンは「なんという悪い顔をしているんだ、アイツら…」と呟くのであった。