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大宴会!!

 集会場を貸して貰い安堵したイザヴェル王国御一行様は、早速買い出してきた食材を使って夕食の準備を始めた。スバルとプルメリアにナナミも集会場に来て手伝ってくれている。男性陣は食器をテーブルに並べた後は、女性陣に調理を任せ、邪魔をしないように待機中である。


「プリムさんて料理を作る手際がいいですね。それに、レパートリーも多いし味付けもお上手だし。すげーな凄いです!」

「そんなことないわ。いつもスバルとナナミのご飯の準備をしてるし、村の共同作業なんかで食事当番になることが多いから自然に覚えて行ったのよ」

「なるほどな。おっと、鍋の方はいい感じで煮立ったな。ナナミちゃん、煮物のアクを取って、味見してくれるか」

「はいはーい、お任せあれ。どれどれ味見を…。んー少し味薄いかな。アンジェリカさん、わたし味の調整していいですかー」

「任せるよ。ナナミちゃん、その年で料理ができるのは凄いな」

「むふー、プリムお姉ちゃんに、いーっぱい教わってますから!」


「むむ…。年長者として負けてられないわね」(スバル&シェリー)


「あたし達、完全に蚊帳の外ですね…」(ラビィ)

「野戦メシしか作れないんだもん。仕方ないじゃない…てか、あんた専業主婦志望なのに、料理できないなんて全然ダメじゃん」(リム)

「料理できますぅ~。目玉焼き位は作れますぅ~」

「やっぱりダメじゃんか。ほら、あたしがじゃがいも剥くから、アンタは玉ねぎを切って!」

「くぅ~、さらっと流された。玉ねぎが沁みて涙が出ちゃう。女の子だモン!」


「女3人寄ると姦しいって、ホントだな」


 台所でわいわい騒ぎながら料理を作っている女性達眺めてリシャールがボソッと呟き、ジェスがうんうんと頷いている。ジャンはというと女性達の中に混じって、一生懸命かいがいしく働くナナミをじっと眺めていた。その視線に気づいたリシャールとスバル(男)が冷やかしてきた。


「なんだ、ジャン。お前、ナナミちゃんが気になるのか?」

「ホントかよ。がさつで生意気なヤツですよ。ジャン様は物好きだなぁ」

「い…いや、そんなんじゃないよ!」


「照れるな、照れるな。まあ、確かに素朴な感じで可愛いよな、ナナミちゃん。スピカよりずっといいんじゃないか?」

「スピカと比べたら、ナナミちゃんが可哀想だよ…」


「スピカって誰ですか?」(スバル)

「スピカってのはスバル(女)の妹で、そりゃあ強烈な奴だったぞ」(リシャール)

「あんな最悪なメスガキ、見たことありませんぜ」(ジェス)


 リシャールとジェスはスピカから受けた数々の試練とそのお陰で体験した訳わからん冒険を話して聞かせると、スバル(男)は腹を抱えて笑い出した。ジャンは大笑いするスバルから視線をナナミに移すと、自分を見ていたナナミと目が合った。慌てて目を逸らすナナミとジャンに気付いたプルメリアはちょっと複雑な感情を抱くのであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「料理できたよー」


 スバル(女)とリム、ラビィが出来上がった料理を食堂のテーブルに運んできた。男達も手伝って美味しそうな料理を並べていると、そのタイミングで集会場の玄関がガラっと開いて、数人の男女が入ってきた。


「おーい、スバル-!」

「は-い!」


 名前を呼ばれたスバル(女・元聖女)が玄関に出ると、入ってきた若者達は驚いた顔をして目をぱちくりしている。


「あの、スバルはいますか?」

「わたしがスバルよ♡」

「えっ!? 冗談だろ」

「うふっ、ホ・ン・ト♡」

「えーっ、スバル、女になっちゃったの!? 凄い美人だし、元の姿と似ても似つかない」

「しかも、胸がスイカみてぇにデケェ。男の夢と欲望が満載じゃねえか、揉ませろスバル!」

「え~、やだぁ~ん♡」

「ミッキー! ウォーレン!」

「す、すみません、冗談です」


 女性二人の鋭い視線にあわあわと縮こまる男性二人。いたずら成功に悪い笑顔の元聖女。そこに奥から本物のスバルが出てきた。


「なにしてるんすか、スバル様」

「いやぁ~、名前を呼ばれたから出てみただけ。そしたら、何故かスバル君が女体化したと勘違いされてさあ」

「んなわけねーだろ!」


「スバル、この人は?」

「ああ、この人もスバルって言うんだ。ほら、聖王国にオレと同名の聖女様がいただろ、それがこの方だよ」

「元聖女ね。スバルよ、よっろしくぅ~」


「よろしくお願いします!」(ミッキー&ウォーレン)

「元聖女~? 胸は重そうなのに、性格は軽そうね」(シトリ&シルディ)


「ところで、お前ら何の用だ?」

「何の用だはご挨拶ね。村長からスバルのところにお客様が来て、ここに泊るって聞いたから、歓迎会しようと思ってきたのよ」

「差し入れの料理と酒もいっぱい持ってきたぞ」


「ほう、それは有難い」


 玄関前の騒ぎを聞きつけてリシャール始め皆が集まってきた。


「オレはイザヴェル王国王子のリシャール。こちらは妻のアンジェリカ」

「初めまして。私はアレシアの出身なので、皆さんとは同郷になりますね」

「シェリーです。皆さん、スバル様のご友人ですか? お会いできて嬉しく思います♡」

「ジャンです。よろしく」


 ここらでは見ないような弩級美男美女にドギマギしながらミッキー達も自己紹介した。しかも、アンジェリカとシェリーは美女の上に巨乳。服の上からでもはっきりわかる見事な双丘にミッキーとウォーレンは目尻を下げ、シトリとシルディの貧乳女子はそんな男達に嫉妬と怒りを覚え、敗北感に打ちひしがれるのであった。


「二人ともスゲェパイオツ…。プリムも村一にデカいがそれ以上かも…」

「くっ…。超絶美人で巨乳な上、抜群のスタイル。こんな存在いていい訳ない!」


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「なんだ、お前らも来ていたのか」

「村長!?」


 続いて現れたのは村長のレオンだった。レオンはデカい酒瓶を両手に持ち、凄みのある顔で笑った。笑うと意外と人懐こい感じがして、シェリーは思わず笑顔で訊ねた。


「あら、村長様はどうしてここに?」

「シェリー様に村長様と呼ばれると少しこそばゆいですな。いえ、家に良い地酒がありましたので皆様と…と思いまして」


 レオンは酒瓶を掲げて笑った。地酒という言葉に興味をひかれたリシャールは皆を手招きして中に入るように言った。


「そりゃあいい! 皆上がってくれ」

「おお、有難い。では失礼します」

「おじゃましま~す」


 村長に続いてミッキー達も集会場に上がって食堂に入った。準備をしていたプルメリアとナナミも仲の良い訪問者の登場に喜んだ。シトリとシルディは持ってきた大皿料理をテーブルにドン!と置いた。シトリが持ってきたのは大盛りの地鶏の唐揚げで、この手が大好きなシェリーとジャンがおおっと声を上げ、シルディ持参の極太ビッグソーセージの山盛りにスバル(女)とアンジェリカは何かを想像して顔を赤らめた。


 料理も出そろい、各自椅子に座り、酒や飲み物も行き渡ったことからリシャールが乾杯の音頭を取って宴会が始まった。


 プルメリアやアンジェリカ、シェリーが作った料理は絶品だし、地酒も濃厚で芳醇な香りで実に美味い。男達はガツガツ料理を食べ、グイグイ酒を飲み、話をしては笑い合う。一方、女性たちはというと…。


「見た目によらず大食漢…。それでいてあのスタイル。栄養がお胸に全集中ですか、妬ましい…」


 大好物の唐揚げを笑顔でバクバク食べるシェリーを眺め、貧乳女子グループ4人が妬ましそうな視線を送っている。


「あたしも一杯食べるのに、付くのはお腹の脂肪のみ…」(ラビィ)

「そう、何故か胸は成長せず、お腹周りだけが大きくなる…」(シルディ)

「最近、ナナミちゃんにも負けてきた。悲しい」(シトリ)

「まあまあ。折角の料理がマズくなるから、暗い話はヤメヤメ」(リム)


 スモールバスト・カルテットは酒がなみなみ入ったグラスをカチン!と合わせると、無言でグイッと酒をあおった。その隣でフォークを極太ビッグソーセージに突き刺し、色っぽく口に咥えてもぐもぐするアンジェリカとスバル。時折顔を見合わせて頬を赤らめる。


「そんなに悩まし気に咥えられたら、食べにくいじゃない」(プリム)

「だって…」(アンジェ)

「ねぇ…」(スバル)

「もう…、想像しちゃうから止めてよ…」(プリム)

「あらぁ~、プリムちゃんわぁ、なにを想像しちゃったのかなぁ~♡」(スバル)

「なっ、何でもない!」(プリム)

「プリムのえっち♡」(アンジェ)


「………。(お姉ちゃんの想像したのって、アレだよね…)」

「どうしたの、ナナミちゃん。ボーっとして」

「えっ!? な、何でもないです!」

「そう? それはそうと、このシチュー美味しいね。ナナミちゃんが作ったんでしょ」

「ホントですか!? 実は自信作なの。えへへ、褒められて嬉しいな」

「…可愛い」

「え…ええ!?」

「あ、いや、何でもない。お代わり貰おうかな」

「は、はい。どうぞ(今、可愛いって…)」


 お代わりをもらったジャンは、何となく頬を赤らめてシチューを食べているナナミを見て、なぜあんなことを口走ってしまったのか考えていた。


(そうだよ、スピカが余りにも強烈すぎたんだ。だから、普通の子のナナミちゃんが可愛いなって思っただけさ。きっとそうさ)


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「リシャール様は、先の戦争で連合軍の総大将を務められましたな。あの時のイザヴェル軍の勇猛さとリシャール様の的確な指揮ぶり、凛々しいお姿は、今でも目に焼き付いております」

村長レオン殿は、戦争に出征されたのか?」


「いかにも。私は元レードン軍の軍人で部隊長まで務め退役しました。その後、故郷のこの村に戻って村長をしていたのですが、戦争が始まるという事でスバルーバル連合諸王国軍にレードンも兵を出すことになったのです。しかし、レードンは小国が故に軍の兵数も少ない。このため、退役軍人や冒険者から希望者を徴募したのです」

「なるほど…。スバルーバル連合諸王国軍は、戦の最終局面で重要な役割を果たしてくれた。諸王国軍の勇猛果敢な戦いぶりがあってこそ、連合国軍が勝利を得たと思っている。ありがとう」

「そう言っていただけると、戦いで命を落とした兵達も喜びます」


 リシャールとレオンはグラスをカチンと当てて酒を飲んだ。黙って話を聞いていたスバル(男)、ミッキー、ウォーレンはレオンの過去を知って驚いていた。


「村長って、出征していたのか?」(スバル)

「そうみたいだな。そういえば、しばらく姿が見えない時期があったな」(ウォーレン)

「オレ、てっきり持病のイボ痔が悪化して寝込んでたと思ってたぜ」(ミッキー)


「違うわ! 誰がイボ痔だ、バカモンが!」

「おわぁ、聞いてたのか!?」

「隣でしゃべられたら聞こえるだろうが! いいか、言っておくがオレはイボ痔でも何でもない! オレの尻穴は最高に調子良くイカしてるんだ。知らねーのか!!」


「知らねーよ! オヤジの肛門がイカしてるかどーかなんて知りたくもねーよ!」

「貴様、ミッキー。今年のお前の麦刈り割り当ては手当据え置きで面積1.5倍だからな!」

「横暴だぞ、クソオヤジ!」

「ウルセェ! この村じゃオレが正義だ!」


「わははははは! 面白いな、君達!」


 リシャールは大声を上げて笑い出し、シェリーは唐揚げを喉に詰まらせ、咽ながら涙目になって笑っていた。その姿をポカンとした表情で見るスバル(男)達。彼らは貴族というものは下々の、それも農民等は下賤の者として積極的に関わることはしないと聞いていた(主にプルメリア情報)。しかし、彼らは王族でありながら、快く自分達を迎え入れ、交流を図ってくれる。いつしか、王族(貴族)と平民という垣根を超えた友情が彼らの中に芽生えて来るのを覚えるのだった。

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