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まだ続く!? 混乱怒涛の地下冒険

 隠し通路を見つけ、中に入ったジャン達。通路の床は幅約1mの板張りで、壁と天井は総レンガ作りで高さは約5m程あった。また、ある程度進むと壁に仕掛けられた照明が自動的に点灯して通路がほの明るくなった。さらに100mほど真っすぐ進むと通路はカーブを描き始めた。


「不思議な通路だね。どこに続いているんだろう」

「オレの錯覚かも知れませんが、何となく円の内側内側に移動しているような気がしませんか?」

「魔物の気配はないですよー」

「…………。(なんだかイヤな予感がするわ)」


 慎重に慎重を重ねながら歩みを勧めていると、足元から「カチッ!」と何かのスイッチが入った音がした。全員、足元を見る。


「何か、音がしたよね」

「…………」

「どうしたラビィ、急に黙り込んで…。テメェ、まさか!」

「…えへへ…。やっちゃいました~」


「えへへ」とテレ笑いしながらラビィはそっと右足を退けた。全員、床を注視すると足の下から小さなボタンのようなものが出てきた。次の瞬間「ガタン!」と大きな音がして、天井から壁が落ちてきて一行の背後を塞いだ。さらに、「ジャキン!」という金属音と共に落ちた壁から多数の鋭い槍が突き出た。


「一体何事?」

「うわっ!」


 急に床がベルトコンベアのように後方に向かって動き出し、徐々に速度が上がってきた。このまま運ばれては壁から突き出た槍に串刺しになってしまう。ジャン達は悲鳴を上げて前方に向かって全力で走り出した!


「ひゃああああーーっ!」

「きゃああああーーっ!」

「テメェ、ドジウサ! いいかげんにしろよーッ!」

「は、走れー!」


 ジャン達は走る! しかし、床が後方に動いているため全然前に進まない。むしろ、じわじわと壁の方に体が持っていかれる。死にたくない。その一心で腕を前後に大きく振り、前傾姿勢で足を動かすが、さっぱり前に進まない。ジャンは息を切らし始めたスピカとラビィを叱咤激励し、ジェスは何とか打開策を探る。が、何も思い付かない。


「きゃああ! たっ、たすけてー!」

「ひぇえええっ! 死ぬ、死んでしまう。専業主婦になる前に死ぬのいやぁー!」

「がんばれ、とにかく走れー!!」


 槍の突き出た壁までの距離、残り約10m。体力が尽きたスピカが脱落し始めた。


「も、もう、ダメ…」

「諦めちゃダメだ! ボクの手を握って!」


 ジャンはスピカの手を握って引っ張った。スピカは苦しそうな表情ながらも何とか足を動かし続ける。諦めるなといったものの、ジャンの足ももう限界だ。走りながら打開策はないかと後方の壁を見る。そして気づいた。


(打開策あった! 上手くいけば助かる。よし、やるぞ。どうせ失敗してもしなくても死ぬんだ。なら、少しでも助かる可能性があればそれに賭ける!)


「ジェス、スピカを頼むよ!」

「きゃあ!」


 スピカをジェスに預けたジャンは足を止め、壁に向かってグラディウスを抜いた。壁までの距離は5mも無い。ジャンは大きく深呼吸すると壁側に頭を向けて床に体を投げ出して腹ばいになった。ジェス、ラビィ、スピカの3人は、ジャンが取った突拍子もない行動に驚いて立ち止まった。


「ジャン様、何を!?」

「キャアアアッ! 危ない、ジャン様ぁ-ッ!!」


 ジャンの目の前に壁から突き出た槍の鋭い穂先が迫る。ジャンは両手でグラディウスを持ち、体の前方(壁側)に向けて構え、精神を集中させた。


(よく狙えよボク。失敗したら終わりだ、集中、集中…ここだ!)


 ジャンの左右と頭上スレスレに槍の穂先が通り抜ける。目の前に壁と動く床の境界(隙間)が見えた。ジャンは腕に全ての力を込めて隙間にグラディウスを突き刺した。異音を立ててグラディウスが隙間の奥に飲み込まれる!


 ギャギャギャ…!


 グラディウスが3分の2程飲み込まれたところで、何かに引っ掛かり、金属が壊れたような耳障りな音がした後、ガクンと揺れて床が急停止した。


「ジャン様!」


 3人は慌てて壁に駆け寄ると、足を持って槍の隙間からジャンを引きずり出した。床に突っ伏していたジャンは顔を上げて「はぁ~」と大きく息をつき、体を起こした。


「みんな、無事?」

「それはこっちのセリフです。肝が冷えましたぜ」

「ははは、ゴメンね。咄嗟に思い付いたから説明する時間が無くて」


「もう、ジャン様。心配したんですからね!」

「あ、ありがとうジャン。助けてくれて」


 立ち上がったジャンにラビィとスピカが抱き着いた。二人の背中に手を回しながら照れるジャンに、ジェスが何故あんな事をしたのかと聞いてきたので、ジャンは壁が落ちてから床が動き出したこと、壁と床の隙間に床を走らせる何らかの機構があるのではないかと考えたこと、そこを壊せば止まるのではないかと咄嗟に思い付いたこと等を説明した。


「なるほど…。咄嗟にそこまで思い付くなんて凄いです。オレは何とか前に行こうとばかり考えていたから、壁に向かうなんて発想はなかった。流石です」

「一か八かの賭けだったけど、成功して良かったよ」


 照れ笑いするジャンの笑顔がカッコよくて、スピカは頬が熱くなるのを感じた。ぽーっと見つめるスピカに気づいたジャンが声を掛けて来たので、恥ずかしさを隠すため、慌てて壁の方を向いた。壁と床の間にグラディウスが突き刺さっている。よく見ると歪んでしまって二度と使い物にはならなさそうだ。


「剣、ダメになっちゃったわね。随分気に入ってたんでしょう?」

「いいさ。みんなが無事なら、剣の1本位なんてことないよ」

「…………。(キザなセリフ…だけど、彼が言うと凄くカッコいい…。ステキ…)」

「どうしたの、スピカ」

「い、いえ。何でもないわ」


 心臓のドキドキが止まらない。一体どうしたのかと自分でもわからくなったスピカであった。


「そう。じゃあみんな、先に進もう。ラビィ、まだまだ危険な罠があるかも知れない。罠の探知と解除は任せたよ。期待しているからね」

「はいっ! ラビィに全てお任せください!」


「安心して任せられねぇからジャン様は念押ししたんだよ。このバカ!」

「酷いっす! ジェスさんも役立たずだったじゃないですか!」

「う、うるせぇ!」


 二人のやり取りが面白くてジャンは笑ってしまった。軽口を叩ける余裕があるならまだ大丈夫だ。このメンバーとなら、どんな苦難も乗り越えていけるだろう。ジャンは絶対に全員と一緒に地上に戻るのだと固く心に誓うのであった。


 カチッ!


「あれ? また何か踏んだような…」(ラビィ)

「て、テメェ、言った側からまた油断しやがったな。このカス!」(ジェス)

「バカは死んでも治らない」(スピカ)


「み、みんな、避けろーッ!」


 前方から大きな石がごろごろと幾つも飛び跳ねながら転がってきた。当たったら確実に死ぬ。石を必死に躱しながら、先ほどの思いを撤回したくなったジャンであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 こちらは大墳墓の奥深く進むリシャール達。ムーンシャドウ先生の部屋を出た後も、大勢のスケルトンが両腕を前に出し、左右に振りながらムーンウォークで踊っていたり、モヒカン頭でパンクファッションのスケルトン達がギターやサックス、ドラムスを大音響で鳴らしながら、激しく踊り歌っていたり等々、扉を開けるごとにワケワカラン光景が展開されていたのだった。


「いつまで続くんだこれ。もしかしてずっとなのか? 聖域どころかジャン達の行方の手掛かりも見つけられん」

「まさか。でも、ここのスケルトン達、凄まじく自由ですね」

「悪意も全然感じないわね。なぜかしら」

「お兄様、お義姉様、扉も残り僅かです。頑張りましょう。リム、扉を開けてくださいな」


 心優しき美少女王女シェリーがみんなを励まし、残り少なくなった扉の1枚を開けた。シェリーを先頭にリシャール達が中に入ると、2m四方の机を挟んで半袖半ズボンの子供スケルトンとトゲトゲジャケットに長ズボン姿の子供スケルトンがカードゲームをしていた。さらに、入り口反対側では大勢のギャラリースケルトンがワーワーと騒いでいる。


『セイントドラゴン召喚! 対戦相手が召喚した場のカード全てを対象に、バフを全て無効化し、シールド値を60%減少させる!』

『なんだって! そんな隠し玉を持っていたのか!!』

『ははは! オレ様の勝ちだ。セイントドラゴンのホーリーブレス、攻撃値5000!!』


『くそ! だが、まだだ。このゲームでは1度だけ相手の攻撃ターン中に自分デッキからカードが引ける。今こそそれを使う!』

『無駄だ! お前はもう負けている!』

『キター!! ボクの全身全霊を賭けたこの1枚、ビッグバストマジシャンレディー召喚』

『なにっ!』

『ビッグバストマジシャンレディーの能力、それは相手から掛けられた技(デバフを含む)を全て無効化し、攻撃を1.5倍にして相手自身に跳ね返すんだ。その名も巨乳式空間磁力メッキ! ビッグバストで跳ね返せ―!!』

『ぬわぁああああーーっ!』


「………。ハッ、すっかり見入ってしまった…」(リシャール)

「結構面白かったですね。遊びたくなっちゃう」(アンジェリカ)


「カードの名に巨乳を付ける意味が分からない。貧乳だっていいじゃない」(リム)

「ここも特に手掛かりはなさそうね。出ましょう」(スバル)


 カードゲームの部屋を出たリシャール達は、次の扉を開けて中に入った。そこは台形状の岩山が点在する広大な荒地だった。荒涼とした風景に目を奪われていると、荒地の一角に片目の前に透明な板を掛け、肩パッドのみの姿をしたスケルトン1体に武闘着を着たスケルトンが対峙しているのが見えた。武闘着スケルトンの足元にはバトルで倒されたと思われるスケルトンが数体転がっている。とりあえず、そこに近づいてみることにした。


『ホーッホッホッホ。無駄な足掻きはおやめなさい。あなたでは私に指1本触れられませんよ。そこに無様に転がっている仲間達と同じ目に合うのが関の山です』

『うるせぇ! そんなこと、やって見なきゃわかんねぇだろ!』

『無駄です。私の戦闘力は10万です。それに対してあなたの戦闘力は850。はっきり言ってゴミ以下…。私は敢えて言いましょう。カスであると!』

『やかましい! 受けてみろ、オラの必殺技。おチンポお股にハ~メ~ハ~メ~破ぁーッ!!』


「サイッテーなネーミングだな」(アンジェリカ)

「エッチです!」(シェリー)


 武闘着が両手を腰溜めにして気を集中させ、闘気エネルギーの球を作り出し、肩パッドに向けて打ち出した。


『ふん、こんなものですか』

『なにっ!』


 肩パッドは表情を変えず、闘気球を片腕で弾き飛ばした。闘気球は凄い速度でテーブル状の岩山に突き刺さり、大爆発を起こして岩山を消し飛ばした。唖然とする武闘着スケルトン。


『フフフ…。次はこっちから行きますよ。受けてみなさい、赤い彗星と呼ばれた私の技を! ウララララララララララアーッ!!』

『オララララ…ガッ、グッ、ウワァーッ!!』


 多数のパンチを躱しきれず、吹っ飛ぶ武闘着。両者の力の差は歴然としている。いつの間にか両者の戦いに引き込まれ、固唾を飲んで見つめるアンジェリカ達。肩パッドが悠然と武闘着に近づいて行く。


『勝負は決しました。次で最後です。これで、この世界は私のモノになるのです!』

『そ…そうは行かねぇ…。オラが、オラがオメェを倒す…』


 武闘着がよろよろと立ち上がった。そしてバッ!と両手を広げて上に向かって伸ばした。


『フン、今更何をしても無駄です』

『世界中の巨乳でエッチなお姉さん。オラのアソコに元気を分けてくれ!』


 武闘着が叫ぶと妖しいエネルギーの流れが生まれ、伸ばした手の上に集まり始めた。


「な、なんなの。ヤダ、ち、力が抜ける…」(スバル)

「ふにゃぁ。なんだかお胸が変な感じ。はう、感じちゃう。なぜ…」(シェリー)

「こ、これは。メイメイと真逆の技か…。ド変態め~」(アンジェリカ)

「あたし、何ともないけど」(リム)


『な、何事です!?』

『これがオラの最大最強の技、元気珍々玉だ! オラの全開スケベ力、受けてみろ! 珍宝爆裂波!!』


『ぬうっ! こっ、この威力…、うぉわああああっ!』


 武闘着は元気珍々玉を肩パッドに叩きつけた。珍々玉は肩パッドに直撃し、凄まじい大爆発を起こし、キノコ雲が立ち昇った。爆風と衝撃波は全方位に広がり、周辺の岩山も粉々に破壊した。当然、至近距離で傍観していたアンジェリカ達にも容赦なく襲いかかった。


『ぎゃあああ!』

「おわあっ!」

「きゃーっ!」


 爆煙が風に流され視界が開ける。激しい戦闘の果てに地形まで変わったその地には、物音ひとつ立てる者も無くシンと静まり返っていた。全てが終わり、戦いの果てに残った者達は…。


 爆心地とその傍に真っ黒こげになり、ブスブスと煙を上げて倒れ、ピクリとも動かない2体のスケルトン。その側に呆然と立つ5人の男女。全員爆風で髪はボサボサ、リシャールはハーフプレートに守られた部分は無事だったが、そこ以外の服は千切れ飛び、パンツ一丁の素っ裸にハーフプレートを着けただけの格好になった。その姿はどこか未開の土着民族か、ただの頭おかしい変人にしか見えない。そのリシャールはゲホゲホと咳き込みながら、妻と妹、仲間達の安否を確認するため振り向き、衝撃的な光景に動きを止め、目を見開いた。


「げほっ、げほっ…。ったく、なんなんだよ。みんな、大丈夫…か…」


 彼の目に入ったのは、衣服から下着まで爆風で全て奪い去られ、おっぱいもお股も丸出しで隠そうともせず、呆然と立ち竦んでいるアンジェリカ始め4人の女子達だった。彼女らもまた、リシャールと視線を合わせる。お互い無言のまま、しばし間が空き…。


「おわぁあああっ!」


 圧倒的巨乳(1人を除く)の迫力&お色気に、股間が一気に膨張して固まり、股間を押さえて前屈みになったリシャールに、意識を取り戻し、羞恥心で真っ赤になったシェリーの往復ビンタが炸裂した。他の女性陣は慌てて腕でおっぱいとお股を押さえ、大きな悲鳴を上げた。


「お兄様のエッチィ~、見ちゃダメぇ~っ!」(シェリー)

「きゃああああっ!」(アンジェ)

「いやぁああん♡(見て、もっと見て!)」(スバル)

「わぁ!って、隠す面積も小さいのよ。悲しい」(リム)


 強烈なビンタを受け、意識が闇に沈む間、リシャールは垣間見えた妹の大きく揺れる巨乳を見て「よくぞ育った」と感慨深い気持ちになるのであった。

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