エヴァリーナのロディニア追憶の旅⑫
ロディニア王宮の大会議室(貴賓室は狭いので移動した)は、一種異様な雰囲気に包まれていた。会議机や椅子は全て片付けられ、エドモンズ三世によって床に4つの大きな魔方陣が描かれている。エヴァリーナたちは不安そうな顔をしながら魔方陣を見つめていた。
『よし、完成ぢゃ!』
「あの、エドモンズ様。これは…?」
『従魔召喚の魔方陣じゃ。この本は古代魔法文明が残した召喚魔法について書かれたと思われるものじゃ。文字が読めないので推察じゃがな、アッハッハー!』
「だ、大丈夫なの?」(ユーリカ)
「絶対に大丈夫じゃないと思います…」(エヴァリーナ)
『問題ない。儂はこれでアークデーモンを呼び出したと言ったJARO』
「で、これは何を呼び出す魔方陣なの?」(フェーリス)
『知らん!』
「そんな無責任な…」(フィーア)
「やっぱり。あ~あ、結局いつも通りの展開になるのですわ」(エヴァリーナ)
『言ったじゃろ、この本の文字は読めないって。適当なページを開いて、そこに書かれていた魔方陣を転記しただけじゃ』
「フェーリス様、危険です。止めた方がいいのではないですか?」
「いや、ここまで来たら後には引けないわ。ね、リース&ニーナさん」
リースとニーナはこくりと頷いた。もう後には引けない。突き進むだけだ。フェーリスも覚悟を決めた。エドモンズ三世はよしよしと頷くと最初に誰が行くか聞いた。最初に手を上げたのはニーナ。
『最初はニーナか。お主の魔力の強さは天性のものじゃ。その魔力量ならきっと、良い結果になるじゃろうて。好きな魔方陣に乗って魔力を通してみよ。魔方陣が反応すれば従魔となる者が飛び出て来るはずじゃ』
「わかった。よし、い、行くわよ…」
ニーナは、自分から見て一番左端の魔方陣に乗った。エドモンズ三世とヴォルフを除く全員が固唾を飲んで見守る中、精神を集中させて魔方陣に魔力を通した。ニーナの魔力に魔方陣が反応して透明で淡い緑色に輝き始め、全員から「おお~」という驚きの声が出た。
魔力の高まりとともに足元の魔法陣が強く輝きだし、ニーナを中心に光の柱がそそり立つ! 余りの眩しさにその場の全員が腕で目を覆った。時間にして数秒程度であったが、その場の全員にはとても長く感じた。光の柱が収まると同時にニーナは魔法陣の外に出た。その瞬間、陣の中心から何かが飛び出てきた。
『あっれー、ここどこー。おかしいなー、お花畑にいたはずなのにー』
出てきたのは、スレンダー(貧乳)系の体を肩出しハイレグレオタードのような衣装で覆った淡緑色の髪色をした超絶美少女。ニーナを始め、その場の全員が唖然とした表情でその姿を見ている。それもそのはず、美少女の姿こそ人間と変わらないが、身長は30cm位で、背中に身長と同じくらいの大きさの、美しく虹色に輝く透明な4枚の羽が生えていたからだ。
美少女は「?」と不思議そうな顔でニーナを見下ろしている。しかし、召喚魔法の力によって、自分が妖精界からこの場所に呼び出されたと知った。
『君がボクを呼んだの?』
ボクっ子美少女がニーナに向かって聞いてきた。ニーナはまだポカンとしている。
『おーい、大丈夫ー? 君がボクを呼んだんでしょー』
「ハッ! う、うん。そうよ。わたしが呼んだの(たぶん)。わたしはニーナ。あなたは?」
『ボクはリルル。妖精族のリルルだよ』
「妖精。人跡未踏の深い森に住むといわれる幻獣。まさか、本当に存在していたとは…」
「オレも長い間冒険者してきたが、聞くのも見るのは初めてだ」
「妖精って、おとぎ話の中の存在とばかりと思ってました。何て可愛らしいのかしら」
レウルス、レオンハルトがまじまじとリルルを見つめ、エヴァリーナ始め女性陣はリルルの可愛らしさに「ほう…」とため息をついた。
『ふむ、その魔法陣は妖精を呼ぶものじゃったか。それにしても、フェアリーとはまた希少な種族じゃな。そやつは風を司るニンフの仲間じゃ。ニーナの炎系とは相性も良い。よかったの』
「ドスケベ骸骨…。うん、ありがとう! わたし、一目でリルルが好きになっちゃった。リルル、わたしとお友達になってくれる?」
『いいよ! ニーナ、優しそうだし!』
リルルがニーナの周りを飛び回り、ストンと肩に腰かけて、にこーっと笑った。ニーナも笑顔を返す。その後、エドモンズ三世によって無事従魔契約が終了し、ニーナはリルルという可愛らしい従魔を得たのだった。ちなみに、リルルは花の蜜が大好物ということで、ルピナスがアルラウネの蜜を大瓶にたっぷり詰めてプレゼントした(カトレアはおっぱいが小さいので蜜が出ません)。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次に従魔召喚を行うのはリース。彼女は一番右端の魔法陣に乗って魔力を高める。と言っても、リースは兄と異なり魔法が苦手で魔力も小さい。なので、上手くいくかどうか不安だったが、魔法陣はしっかり反応してくれた。
(わ! いけるかな!?)
魔法陣が地味な淡灰色に光り、次の瞬間リースの前に何かが飛び出してきた!
『………………。』
現れ出たのは、身長165cm位、年齢18~20歳位の素っ裸の女性。肌は白くてきめ細やか。髪の毛はブラウン色で癖が無いロングで背中の中程まである。なにより顔が整っていてリースやフェーリスにも負けない美少女だ。しかし、男たち&双璧の視線はある一点に集中している。その場所とはバスト&秘部。
バストは貧乳でも巨乳でもないCサイズの美乳で、乳輪乳頭もピンク色で美しい。股の部分の毛も無くつるつるだった。ただ、女性はガン見されても何の反応も無い。
「エドモンズさん、この女の人…」
『ふーむ。中々面白いものがで出来たワイ』
リースが自分の外套を女性の体に着せた。何の反応もないことに不安になって、エドモンズ三世に聞いてきた。
『リースっちが乗ったのは不死者召喚の魔方陣じゃったか。そやつは不死体じゃ。しかも、その中でもかなり高位の存在。儂やヴォルフ程でははないが、かなりの力を持っておる』
「じ…じゃあ、マヤさんみたいなってこと?」
『そうじゃ。かつてユウキの世話係として、ユウキの幸せを願って戦い、消滅したアンデッド。それと同等の存在よ』
その言葉にリースは歓喜の表情になると、右手の拳を握りしめて高々と振り上げた!
「や…やったー! 最高、最高よ! 大好きだったマヤさんみたいなお姉さんがいたらいいなといつも思っていたの。エドモンズさん、ありがとう! えーと、あなたの名前を教えて?」
『………………』
アンデッドの女性は感情の乏しい瞳でリースを見つめるだけ。何度問いかけても反応はなく、リースは困惑してしまって、エドモンズ三世に助けを求めた。
『今のそやつは何の感情もない人形のような存在だ。リースちゃん、お主が愛情を注ぎ、家族同様に接すればやがて心が宿るだろう。その時こそ、リースちゃんとこ奴は真の主従関係になると思うぞ。まずは、リースちゃんが名前を付けてあげるのじゃ。全てはそこから始まる』
「なんか、エドモンズさんが真面目な話をすると違和感が凄いわね」(ユーリカ)
「天変地異が起こらなきゃいいですけど」(フィーア)
「素はとても優しいお方なんですのよ。なんだかんだ言いながら、ユウキさんもエドモンズ様を大層慕っていますから」(エヴァリーナ)
「でも、あの女の人いいなー。私にも出てくれないかな」(フェーリス)
「名前…名前か…。う~ん、う~ん。どうしよう…。そうだ、アリスってどうかな」
「アリスですか?」
「うん。豊穣の女神アリステア様からお前をいただいて「アリス」。いいと思うんだけど。ねえ、あなたはどう?」
『アリス…』
アンデッドの女性は気に入ったのか、無表情ながらこくんと小さく頷いた。リースは満面の笑みを浮かべて、アリス、アリスと何度も名前を連呼する。釣られてリルルも飛んできてアリスの頭をぺしぺしと叩いて話しかける…が無反応なので、直ぐに興味を失ってニーナの元に戻った。
『よかったの、リースっち。後で儂にアリスを預けよ。暗黒魔法を教授してやろうではないか。儂が見たところ、アリスは掃除洗濯料理の腕は完璧、近接戦闘能力も高く魔力もある。暗黒魔法を覚えれば無敵じゃ。リースちゃんに近寄る不埒な男共を成敗してくれるだろうて(あと、アストラルボディを幽界に置いて、絶対不死化してやろうかの)』
「暗黒魔法は魅力的だけど、アリスにエッチな事はしないでくださいね!」
『絶対にせんわ!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「さて、いよいよ私の番か。鬼が出るか蛇が出るか、ドキドキしちゃうわね。ニーナさんやリースちゃんのような素敵な従魔が出ることを期待して…。えいっ!」
フェーリスは魔法陣に飛び乗って魔力を通すと、魔法陣から濃紫色の光の柱が立ち昇り、柱の中から何かが飛び出してきた! そして、現れ出た者の正体にその場の全員が度肝を抜かれ、漢たちは感嘆の声を上げ、女たちは唸る。
現れ出たのは、フェーリスより頭ひとつ背が高い女性。浅黒い肌に黄金のティアラで飾った少し癖のある美しい黒髪をした超絶美人。長いまつ毛に切れ長の目、神秘的な紫の瞳、整った鼻に形の良い唇は見る者全てを虜にしてしまいそうだ。さらに、体も一級品で100cmは超えようかという爆乳、締まった細腰、張りがあって形の良い美尻といった「ぼっきゅんぼん」のナイスバディを広く胸元が開いたハイレグカットのレオタードで包んでいる。ちなみに、足はお約束の黒のハイヒール。
『あら? ここはどこかしら。あ、いい男みっけ♡』
超絶美人はレウルスとレオンハルトを見つけてフッと投げキッスをした。二人の漢はキッスの際にバルン!と揺れた爆乳に目が釘付けとなり、あっという間に表情が緩んだ。そのだらしない顔にヤキモチを焼いたエヴァリーナは必殺のオシオキアイテム「シルバー・ショック」に手を伸ばす。
「ちょっと! コイツなんなの、エドモンズさん!」
『儂に言われてもな。フェーリスちゃんが呼び出した従魔じゃよ』
『わたし、従魔として呼び出されたの? ああん、仕方ないわねぇ。わたしはルーナ。闇属性の精霊よん♡ わたしのご主人様はだあれ?』
「私よ…」
『ああん! 男じゃないんだぁ。ざ・ん・ね・ん♡ そっちの男の人たちがご主人様だったら良かったのにな。わたしの体でたっぷり楽しませてあげられるのにぃ♡ いやん、体が疼いちゃう♡』
「悪かったわね、私で」
『いやぁ~ん、怒らないでぇ。よろしくね、ご主人様ぁ。ん?…』
くねくねと身を捩らせたルーナは、急に真面目な顔になるとフェーリスに身を寄せてじいっと見つめて来た。前屈みになり、下を向いた爆乳の谷間がこれでもかという迫力で迫り、フェーリスの嫉妬心を極限まで燃え上がらせる。一方、漢たちはつつつ…とフェーリスの背後に回って谷間をガン見して堪能し始めた。
「あなた!!」
エヴァリーナとフィーア、怒りのシルバー・ショックがレオンハルトとレウルスの頭に直撃し、二人の漢はもんどりうって床を転がった。そんな男共の痴態を無視してルーナはフェーリスを見つめ続ける。
『へえ…。なかなか面白い娘ねぇ。魔力量そのものは低いけど、僅かながら闇系統にも適性があるわぁ。生者だから闇魔法は使えないけど、わたしと縁を結ぶには最高かもね。でも…』
「なにかあるの?」
『あなた、お年頃なのにお胸が絶望的に小さいわぁ。わたしと一緒にいると圧倒的差がありすぎて可哀そう』
「ぶふっ…」(リース)
「…だめ、笑っちゃ…くくっ」(ニーナ)
屈辱で顔を赤くしてプルプル震えるフェーリスだったが、結局、従魔契約は結んだのだった。
『これまた強烈なヤツが現れたのう。フェーちゃんの屈辱メーターが振り切れとる』
『爆乳・淫乱はポイント高いが、熟女ではなぁ。吾輩の性癖には刺さらんな』
「精霊のイメージってあんなでしたっけ? 思ってたのと違うな」(フィーア)
「ニーナちゃん、リースちゃんといい感じに来たのに、一気に落ちましたね。しかし、あの胸。わたしとどっちが大きいかしら」(ユーリカ)
「対抗しないで下さいな」(エヴァリーナ)




