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第58話 国王との会談①

 ユウキは、晩餐会場の壁に寄りかかって、1人壁の花になってまわりを見ていた。


(フィーアは相変わらず大変そう。カロリーナとフレッド君は同年代の子たちと楽しそうに話してる…。ボクには誰も近寄ってこないし、つまんないな)


 実はユウキに話しかけたい男性はたくさんいるのだが、あまりの美少女ぶりにみんな牽制し合って近寄れないのだ。ユウキはそれに気づかない。ぼんやり会場を見ていたユウキにメイドが近づいてきて「ユウキ様、こちらに…」と声をかけてきた。


「はい?」とユウキが間の抜けた返事をし、メイドの案内で会場を出た。しばらく廊下を進んで突き当りの扉の前で「こちらです。どうぞお入りください」と扉を開いた。

 ユウキが1人で中に入ると、ギルバートがいて中から扉を閉め、鍵をかける。


「あ、あの…。ギルバートさん?」


 ギルバートはユウキの声を無視して奥の扉を開き、ユウキを中に招き入れると、また、内側から鍵をかけた。部屋の中はロウソクの照明があるが薄暗くて良く見えなかったが、段々目が慣れて部屋の様子が見えてきた。部屋の中央にはテーブルがあって、その奥に1人の男性が座ってユウキを見ている事に気づいた。


「こ、国王様…ですか?」

 ユウキが小声で尋ねる。


「そうだ、こんな所に案内して悪かったな。まあ、座れ」

 ギルバートが引いてくれた椅子に座ると、国王マグナスが口を開いた。


「よく来てくれた。ゴブリンキングを倒した勇者と話をしてみたくてな。マクシミリアンから聞いてはいたが、びっくりしたぞ。こんなかわいいお嬢さんだったとはな」


「え、いえ、そんな…」


 ギルバートがお茶を出してくれる。一口飲むと緊張でカラカラだった喉が潤い、気持ちも落ち着いてきた。


「お前たち学生がゴブリンの群れを討伐したのは称賛に値する。しかし、私が本当に感謝したいのはマクシミリアンの事だ」


「マクシミリアン様の事、ですか?」


「そうだ。マクシミリアンは小さいころから生き物が好きな優しい子でな。周りにも人一倍気を遣うことができる、親の贔屓目で見てもよくできた子だ。ただ、優しすぎる性格が災いして、争いを極端に嫌う臆病な性格になってしまったのだ。勝つという気構えに欠け、守れるものも守れない。そんな性格のまま成長してしまった」


「だが、君たちと出会い、戦う経験を得たことによって、奴は自分の殻を脱ぎ捨てて、大きく成長したようだ。表情にも自信が満ちるようになった。マクシミリアンをこのように変えてくれたのは君たちだ。ユウキよ、礼を言うぞ」


「そ、そんな、恐れ多いです。マクシミリアン様は勇気のあるかたです。ボ…わ、私たちでなくても、きっと精神的にご成長されたと思います」

「そうかな…。まあいい、私はマクシミリアンを次の王にと考えている」

「!」


「あ、あの、そんな大事な事、私なんかに話してもいいんですか。それに王様には第1王子のレウルス様がいるのでは?」

「うむ。ここには我々3人しかいない。外部から話を聞かれる心配もない。安心せよ。私はな、ユウキとじっくりと話をしてみたいのだ」


「…………」


「レウルスは庶子なのだ。王妃と結婚する前にできた子でな。まあ、若気の至りってやつだ。はっははは!」

「はあ…」

「ただ、レウルスは頭が良く、文官として資質がある。だから、貴族の世継ぎの姫に婿に出し、外から王家を支えてもらおうと考えている。レウルスも了解している。それに奴はマクシミリアンやフェーリスとも仲がいいしな。問題ない」

「だから、マクシミリアンが人間的に成長したのは何よりも喜ばしいことなのだ」


「ただ…、心配事もある」

「心配事ですか?」

「うむ、末弟マルムトだ」


「マルムトは目的のためならどんな非情な事でも成しうる性格をしている。自分の身内でも、障害と認めたら簡単に処分するだろう。特に人望高いマクシミリアンを憎んでいる。謁見場も敵意を持った目でマクシミリアン様を睨みつけていたしな」


「マルムトはレウルスやマクシミリアン、このわたしでさえ排斥し、この王国を大昔のような王家独裁国家として大陸に覇を唱えることを夢見ている。今の平和の世を破壊しようと考えている」


「そんな、そんな事できるんですか?」

「さあな。しかし、奴はできると考えている。既に、仲間集めもしているしな」


「そこまで分かっているなら、なぜ、何もしないのですか」

「王家の内紛は国民の信頼を失墜させる。反王家派の台頭を招き、マルムトに口実を与えることになる。我々にできることは、マルムトの活動を妨害することだけだ」


「なあ、ユウキ」

「はい」


「いずれ、どのくらい先になるかわからんが、きっとマルムトは動く。動けばマクシミリアンやフェーリスが危険にさらされる。マクシミリアン達がマルムトに対抗するとき、側にいて手を差し伸べてくれないか」


「……国王様」

 ユウキは少し考えてから、マグナスの目を見てハッキリと言った。


「私もマクシミリアン様に助けてもらいました。大切な友達だと言ってもらえました。フェーリス様にお友達になりましょうと言っていただきました。私は昔、大切な人を守れなかった。自分に力がないばかりに死なせてしまった。だから、自分に約束したんです。私を大切に思ってくれる人たちを必ず守るんだって。だから、お力になれるかどうかわからないけど、その時が来たらマクシミリアン様とフェーリス様のお力になりたいと思います」


「そうか…。それを聞いて安心したぞ、よろしくな。ユウキたちには王宮にいつでも入れるようにしてやる。いつでも遊びにこい」

「ありがとうございます」


「うむ、そうだな。ユウキ、お前マクシミリアンの嫁になれ!」


「へ? え、ええ、いやいやいやいや、ま、まままままだ早いっていうか、それ以前にボク一般市民ですよ。ダメです。ごめんなさい~~~」

 ユウキは慌てて素を出してしまうが、気が付かない。


「ははは、冗談だ冗談だ、慌てた顔もかわいいな」

 ユウキは顔を真っ赤にしてお茶を手に取ると、ごくごく飲んで心を落ち着かせた。


「さて、私の話はここまでにしよう。そろそろお前の事を教えてもらおうか」

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