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第56話 王家からの誘い

 夏休みが終わり、久しぶりの登校となった始業式の日、ユウキたちがクラスに入ると、ララが駆け寄ってきた。


「みんな、おはよう!」

「おはよう。ララはいつも元気いっぱいだね」

「おや、リア充のララさんじゃありませんか。夏休みの思い出は作れましたか? ニヒヒヒ…」

「あ~ら、1人ツンデレのカロリーナさん。おはようございます」

「ムカッ! 誰が1人ツンデレよ!」

「まあまあ…そのくらいにして。ほら、始業式始まるよ。講堂に行こう」


 ララとカロリーナのいつもと変わらないやり取りにユウキは苦笑いするとともに、何故か安心するのであった。


 始業式も無事に済んで、本格的に2学期目が始まり、いつも通り学科や剣術訓練、魔法が使える者は魔術訓練などの授業が進んでいく。久しぶりの授業は楽しく、いつものみんなで食べる昼食は幸せな気分を感じる。ただ、剣術訓練でユウキの相手はいつもヘラクリッドだった。バルバネス先生曰く、ユウキの相手はヘラクリッドしか務まらんという。


「はあ~、たまには別の誰かと訓練してみたいよ…」   

 そう呟くが、ユウキは毎日充実した学園生活を送っていた。


 ある日、4人一緒に家に着くと、マヤが一通の封筒を差し出してきた。


『みなさん宛に封書が届いていますよ』

「ん、ボクたちに? 誰からだろ」

「あら、この封蠟の印璽は、王家のものですわね。開けてみましょう」


 フィーアが封を開け、中の手紙を取り出して読み上げると、ユウキ、フィーア、カロリーナへ、ゴブリン討伐に対する感謝の式典を行うから参加するようにという、王家からの招待状であった。


「あら、ゴブリン討伐のですか。残念ですけど私はマヤさんと留守番してます」

「ゴメンねユーリカ」

「あんたの分の料理、タッパーに取ってくるから」

「カロリーナさん。それ、王家の方々の前ではやめてくださいね」


「それで、期日は…、あら、今度の休日ですね」

「え、あと3日しかないじゃん。服ってどうするの。私、普段着しか持ってないよ」

「ボクも同じ。余所行きの服がないよ」


「王宮で衣装を貸してくれます。ですから王宮までは普段着で大丈夫ですよ」

「あと、私は一度実家に帰って着替えますので、王宮の会場で会いましょう」

「そっか、フィーアは侯爵令嬢だもんね。わかった」


 招待状をもらって3日後、とうとう王家に招待される日がやってきた。2人が家の前で待っていると、豪華な馬車がやってきて、1人の立派な老紳士が下りてきた。


「ユウキ様とカロリーナ様でいらっしゃますね。私、執事長のギルバートと申します。さあ、馬車にどうぞ」

「は、はい。失礼します…」


「す、凄い内装だね。私たちが乗ってもいいのかな」

「う、うん。緊張してきた」


 2人は緊張して馬車に乗り込む。ユウキとカロリーナが並んで座り、その向かいにギルバートが座る。ギルバートはさりげなく2人を観察する。


(この2人がマクシミリアン様を覚醒させたというのか? 普通の少女たちではないか。しかし、2人とも芯が強そうだ。表情から見るに、信頼関係もしっかりしている)


「本日のご予定を説明します」

「本日はお2人とオプティムス侯爵家のフィーア様、ムスクルス男爵家のヘラクリッド様とご友人のフレッド様の5人を招待しています。まず、王宮に着いたら5人で陛下に謁見してもらいます。謁見会場には王妃様のほか、各王子、王女様が同席いたします。服装は今のままで結構です」


「謁見が終わりましたら、ご休憩の後、お召し替えを頂いて晩餐会にご出席いただきます。長丁場ですがよろしくお願いします」


「はい。よろしくお願いします」


「さあ、着きましたよ」ギルバートが馬車の扉を開け、2人に降りるように促す。

「ふあああ~」

「す、凄く大きくてきれい……」


 2人は王宮の荘厳さ、美しさに声も出ない。白い大理石の壁、腕のいい職人の手による装飾、手入れの行き届いた庭園。まるで別世界だ。

 声も出せずに、周囲を眺めている2人に、メイドが近寄り、完璧な所作で「こちらでございます」と声をかけてきた。


 ユウキとカロリーナが、メイドの案内で恐る恐る中に入る。長い廊下を進むと、こちらでお待ちくださいと控室に案内された。ユウキとカロリーナが中に入ると既にフィーア、ヘラクリッド、フレッドがいた。


「お2人とも、お待ちしていましたわ」

「フィーア! わあ、キレイなドレスだね。銀色キラキラでとっても可愛い。ヘラクリッド君も流石貴族。決める時は決めるね。それに比べてボクたちは、もろ一般市民…」


 ユウキのヘアスタイルはストレートで、可愛い花の髪飾り。大きなリボンの付いたピンクの半そでブラウスにミニスカート、全部マヤの手作りだ。カロリーナは薄緑のワンピース。フレッドもいつも通り普段着だ。


「ふふっ、皆さん自然体でいい感じです。陛下はあまり堅苦しいお方ではないので、心配はご無用ですよ」

 そうフィーアは言うが、一般市民の3人は緊張で既にがちがちだ。


 しばらく控え室で待っていると、メイドが来て「お時間です。こちらにどうぞ」と、謁見会場まで誘導してくれた。5人が会場内に入ると「この位置でお待ちください」と場所を指示された。玉座の周囲には既に王家の重鎮である貴族や騎士団の代表がおり、ユウキたちをじろじろ見ている。それだけでユウキやカロリーナ、フレッドは緊張のピークに達する。


 5人が指示された場所で待っていると「国王陛下御入室!」と声が掛かった。


「3人はヘラクリッド君のマネをしてください」とフィーアが小声で話しかけてくる。ユウキたちはヘラクリッドのマネをして、片膝を床について、右手を胸に、左手を背中側に回して臣下の礼をとる。ドレス姿のフィーアは両手を前に組み、深々と頭を下げている。


 国王陛下と王妃、王子・王女一行が入ってくる気配がした。ユウキはチラとカロリーナを見た。流石のカロリーナも緊張で顔が青ざめている。


 国王陛下が玉座に座り「皆の者。面を上げよ」と声をかけてきた。


 全員が今の体勢のまま、顔を正面に向ける。


「うむ、本日はよく来てくれた。君たちに合うのを楽しみにしていた。キングを含むゴブリンを討伐した勇者たちにな。さあ、君たちのことを教えてくれ」


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