ルゥルゥの結婚狂騒曲(雨過天晴編)
いよいよルゥルゥの幸せを求める戦いに決着がつく時が来た。リューリィの両親が与えた試練という名の羞恥刑も終わろうとしている。いよいよ最後の戦い、究極の水上格闘技「女尻相撲」の決勝戦が始まろうとしている。
巨大プールに設置された5m四方の浮き板。その狭い空間に立つ2人の戦士、愛する男との結婚のため勝利を胸に戦う虎亜人のルゥルゥ。方や帝国皇室の威信よりメイド長からの折檻を何としても避けたい皇太子妃ユウキ。目には見えないが、2人の間にはバチバチと火花が飛び散っている。
プールサイドには出番がなくなった美少女たちが美しい肢体を輝かせながら熱い声援を送り、観客席からは2人のナイスバディにため息が漏れる。
「ルゥルゥさん、負けるなー!」(ソフィ)
「相手が皇太子妃でも情けは無用! それが冥府魔道の掟なり!!」(ティラ)
「やっつけちゃうのだー!」(アルテナ)
「ユウキさん。勝って! 勝ってくださらないと…」(エヴァ)
「私たちに待ってるのは…」(カロリーナ)
「破滅しかない」(フラン)
仲間たちの熱い、それでいて悲壮な応援を背に受け、緊張を高める2人。審判が出て来た。浮き板の四隅の延長線上に4人の副審が立つ。さすが決勝戦だけに公正を期す体制が整っている。
「両者、背中を向けあって!」
ルゥルゥとユウキが背を向けあった。問題ないことを確認した審判が旗を上げると、どこから現れたのか音楽隊がパパラパッパラッパパッパララララーと音楽を鳴らす。音楽が止まると会場内は大きな歓声に包まれた。審判がスターターに合図を送る。
「パーーーン!」
スターターピストルが鳴り響き、「ドキッ♡丸ごと水着♡女だらけの水上悩殺武闘大会!!」最後の種目「女尻相撲」の決勝戦が始まった!
「うりゃ!」
「なんの!?」
ばちーん!と肉がぶつかり合ういい音がして、激しくお尻をくつけ合い、主導権を取るためにムニムニと右に左に動かしていく。尻の動きと呼応するように、2人の巨乳も激しく動き、プールサイドからはため息が、観客席からは大きなどよめきが沸き上がる。しかし、見ているものは知らない。尻とは反対側に動く胸の動きこそ、反動を相殺し、体を安定させる大きな役割を持つのだ。よって、どんなに激しく尻を動かしても、上半身は安定して、諸事に対応できるのだ。超絶美女の肉体による激しい鍔迫り合いに観客も大興奮だ。
「むぐぐ…、さすが救国の英雄ユウキ様…。あたいより背が低いのに力が半端ない」
「ルゥルゥ、あなたは知らないでしょうけど、わたしは数々のエッチなイベントに出場し、大勢の前で数えきれないほどの恥をかいてきた。メイド喫茶や美少女コンテスト、スケスケパンツでM字開脚、マイクロビキニでヌルヌルローションバトルに野っ原で公開下痢便などなど。そのお陰で精神力は鍛えられたわ。どう? あなたにはそんな経験はないでしょ! だから、あなたの動きには恥じらいの気持ちから来る迷いが感じられる。だけど、わたしにはそんなものは…無いのよ!!」
「一体、今までなんちゅー経験をして来たんですか? あなたは!?」(ルゥルゥ)
「アレって、自慢げに言うお話なのかしら?」(エヴァ)
「ユウキってば、この大陸でもお約束連対率の高さはかわんなかったのね。ってか、ロディニア時代より酷いんじゃない?」(カロリーナ)
「ウハハハハハ! とりゃっ、美人ヒップ捻り倒し!!」
「きゃあ!」
ユウキが力を抜いて尻を斜めに滑らせた。急に対象物が無くなったことでバランスを崩したルゥルゥの片側臀部に、ぐいと自分の尻の割れ目を食い込ませ、ブンと体を捻って胸の遠心力を利用し、回転力でルゥルゥの体を捻り倒そうとした。背中から浮き板に倒れそうになるルゥルゥ。仲間の必死な声が飛ぶ。
「ルゥルゥ、危なーい!」
「踏ん張れ、ルゥルゥーッ!」
「ま、負けるもんかぁーっ!」
「えっ!?」
背中から倒れそうになったルゥルゥは片足を後方に伸ばして(アキレス腱を伸ばす姿勢をイメージしてください)背中を弓なりに反らせて踏ん張り、何とか倒れそうになるのを防いだ。勝ちを確信していたユウキは、ルゥルゥを倒せなかったことで一瞬の隙ができる。ルゥルゥはそのスキを見逃さず反撃に出た。
「今度はこっちの番。トルネード・ビッグヒップ・スウィンーング!!」
体勢を立て直したルゥルゥは、体を横に捻ってユウキの尻めがけて襲い掛かった。大会No.1(しつこい)の爆乳と89cmのビッグヒップが同時に回転し、遠心力を衝撃力に変換してユウキの尻に叩きつけた! その瞬間「バチン!」と甲高い音がしてユウキが弾き飛ばされる。
「うわぁああーーっ!」
強大なパワーによってユウキは浮き板の端まで飛ばされた。板の端に足の指をひっかけ、腕をぐるぐる回してバランスを取り、かろうじて踏みとどまる。しかし、体の力は抜け、非常に不安定な状態だ。チャンスとばかりにルゥルゥが畳みかける。
「ここだ! ルゥルゥ・ヒップ・プレッシャー!!」
「ま、まず…」
「ユウキ! 負けたらどうなるかわかってるんだろうね!!」
「ひい…。ま、負けたら確実に殺される。こなくそ、女は度胸ーッ!」
特別観覧席から飛んだカロリーネの怒号にユウキが、いや仲間たち全員がビビり上がる。ここは絶対に交わさなければならない。猛虎の一撃が尻の前に迫る。ユウキはその場で深く屈むと膝のばね力を最大限に発揮してジャンプし、空中で1回転して反対側に着地した。
一方、ヒップ・プレッシャーを躱されたルゥルゥは、強引に体を捻って間一髪、落下水没する前にストップできた。
息を持つかせぬ激しい攻防に、観客の漢たちもバインバインと揺れるおっぱいを鑑賞するのも忘れ、息を飲んで戦いの趨勢を見守っている。
「はぁはぁはぁ。このわたしがここまで追いつめられるとは…。やるわね、ルゥルゥ」
「くっ…。絶対に決まったと思ったのに…」
「これ以上、勝負は長引かせられない。ルゥルゥ、次で決めるわ。覚悟して」
「そうはいかない。あたいの人生を賭けた一世一代の大勝負。決して負けないんだから。あたいの村に秘かに伝わる伝説の必殺技、受けてみろーッ!」
「ルゥルゥ、これで決める! 行くわよ、いいわね!!」
「その勝負、受けて立つ!!」
お互いの必殺技の応酬が始まる。長い戦いもこの一撃で決まるのだ。それを予感した他の選手たちも観客もごくりと息を飲み込み静まり返る。緊張感が最大限に高まった中、最初に動いたのはユウキだった。
ユウキは短い助走の後、くるりとルゥルゥに背を向け背面バク転し、腕の力で高く飛び上がった。露出度95%の際どい水着で躍動するナイスバディの美女に観客の漢どもは熱い溜息を吐く。しかし、当のユウキはメイド長の折檻の恐ろしさが羞恥心を何倍も上回っているので必死だ。
「たぁああーっ! 究極奥義ビューティフル・デリンジャー・ヒップクラッシュ!」
大きな掛け声とともに、美しく大きなお尻を素早く上下に動かして叩きつけるように急降下するユウキ。あの技をまともに受けたら、体格の良いルゥルゥでもただでは済まない。お尻が真っ赤に腫れ上がってしばらくの間使い物にならなくなるかも知れない。だが、ルゥルゥは逃げもせず、お尻をユウキに向けて、迎撃の姿勢を取った。
「それを待っていたの!」
ルゥルゥはぐぅーっとお尻を引いて胸を逸らし、下腹部にパワーを集中させる。ユウキの必殺技が、美尻が上下に振動しながら猛速で迫る! 美尻を見上げるルゥルゥの瞳が真っ赤に燃えた。ユウキのヒップが直撃する寸前、お尻に全エネルギーを込めて思い切りぶちかました!
「喰らえ、これぞ猛虎の突進! ネオ・タイガー・ヒップ!!」
「な、なにィ!?」
風を巻いたユウキのゴージャス・ヒップと炎を纏ったルゥルゥのタイガー・ヒップが激突する。その瞬間、「ズドォオオーーン!!」と肉と肉が打ち付けたとは思えない爆発音とともに周囲が閃光に包まれた。
「ユウキ!」(カロリーナ)
「ルゥルゥ!」(ソフィ&ティラ)
「これ、ホントに尻相撲ですの!?」(エヴァ)
神掛かり的な技の応酬に度肝を抜かれ、静まり返る会場に仲間たちの悲鳴が響き渡る。審判も司会者も唖然として爆心地を見つめる。閃光が収まった時、吹き飛ばされた人影が尻から煙を上げながらプールに落ち、「ドボン!」と水を跳ね上げてズブズブと沈んでいった。大会に参加した選手たちや観客、リューリィにアーデルベルト、カロリーネが固唾を飲んで浮き板に立つ人物を見た。
4人の審判が一斉に白旗を上げた。判定と悠然と浮き板に立つ人物とを見た司会者が魔導マイクを握り締めて絶叫した。
「し、勝者ルゥルゥーーッ! チーム・ルゥルゥ、優勝ォオオーーッ!!」
勝者の名がコールされた瞬間、会場が大歓声に包まれ、ルゥルゥコールが湧き上がった!さらに人の波がウェーブとなって勝者を称える。ルゥルゥは始めポカンとしていたが、会場全体が自分の名を呼んでくれている事で優勝したんだと理解した。歓喜の感情がルゥルゥの体内を突き抜ける。両手を高々と掲げ、ブルンと大きな胸を揺らして叫んだ!
「やった! 勝った! あのユウキ様に勝ったんだ! 嬉しい、嬉しいよーリューリィくーん!!」
浮き板の上でぴょんぴょん飛び跳ねるルゥルゥ。観客席の漢たちが歓声を上げながらある1点を見つめているのに気付かない。そう、ネオ・タイガー・ヒップとビューティフル・デリンジャー・ヒップクラッシュが激突した際に発生した摩擦熱で、着用していたマイクロビキニのパンツが焼け落ちていたのだ。つまり、下半身丸出し(ちなみにユウキ様も)。
「ルゥルゥさん、パンツパンツ、脱げてますよーっ!」
「あはっ♡ リューリィ君喜んでる。手を振っちゃお。おーい♡」
下半身丸出しのルゥルゥはリューリィに向かって手を振った。そして、皆の許に戻った時、呆れた顔で指摘され、初めて自分がヤバい姿だったことに気付き、会場全体に響き渡る大声で絶叫し、プールに飛び込んだったのだ。
「全くルゥルゥさんは…。ははっ、でもありがとう。頑張ってくれて」
リューリィはチラッと隣に座る両親を見た。2人とも目を瞑ってむっつりとした表情をしていたが、フッと小さく笑みを浮かべたことに、リューリィは気付いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
全試合試合終了後、表彰式が開催され、優勝したチーム・ルゥルゥにトロフィーと賞状、副賞が手渡された。受け取った4人は観客席に向かって笑顔で手を振った。エロ可愛い水着姿の美女&美少女にハートを射抜かれた漢どもがおめでとうをコールし、盛大な拍手が送られる。
表彰壇から降りたルゥルゥは約束通り賞金の500帝国マルクはソフィとティラに、金色に輝く魔鉱石の短剣「光輝」はアルテナに渡した。3人はにっこにこで受け取った。また、温泉宿泊券は夢破れてめそめそしているパールにプレゼントした。
「えっ!? ウソ、いいの?」
「うん。あたいたちは使う予定無いし、貰ってくれると嬉しいな」
「あ…、ありがとう~。嬉しいよぉ。この恩は絶対に忘れないから」
「いいって。気にしないで」
「ルゥルゥ」
「えっ!?」
突然声をかけられ、振り返ったルゥルゥの目の前にちょっと悔しそうな顔のユウキと仲間達が立っていた。ユウキはすっと右手を差し出した。
「負けたわ。最後の必殺技、凄い威力だった。インパクトの瞬間、内臓が飛び出そうになったもの。悔しいけどあなたの勝ちよルゥルゥ」
「ユウキ様…。ありがとう。貴女に勝てたこと、あたいの一生の誇りです」
ユウキとルゥルゥはがっちりと握手した。仲間たちがパチパチと拍手を送る。ユウキがニコッと笑うと、栄光の二つ名を彼女に与えた。
「あなたに「新・尻相撲の女傑」の二つ名を賜ります。謹んで受け取るように」
「絶対にお断りします」
「あら、皇太子妃から下賜された二つ名が気に入らないとでも?」
「イヤなものはイヤだよ。そんなの貰ったらずーっと「でかケツルゥルゥは尻相撲!」なんて言われ続けちゃうもん。エヴァリーナ様の熊殺しのように!」
「なぜ、そこで私がでてくるんですの!?」
両者笑顔で睨み合っていると、リューリィとそのご両親が近づいてきた。帝国皇室執事長の冷徹な眼差しとカルディアの女豹の鋭い眼光に気づいたユウキチームメンバーを始め、チーム・ルゥルゥのソフィ、ティラついでにアルテナまでビシッと姿勢を正し、右手をシュタッと額の横に上げて敬礼する。カロリーネがじろっとユウキを一瞥する。その視線に射すくめられ、ユウキの背中に冷たい汗が流れる。カロリーネはついと視線をルゥルゥに移すと、ふっと笑った。
「合格だよ、ルゥルゥ。あんたの覚悟見せてもらった。あたしの用意した刺客に勝つとは中々の根性の持ち主だったね。気に入ったよ」
「うむ、最後の戦いは大人げなく熱くなってしまった。リューリィのために自分より力の強い相手にも果敢に向かっていく。その意気に感動した。いいだろう、ルゥルゥさんとの結婚を認めよう」
「本当ですか! ありがとうございます。お父様、お母様! ルゥルゥさん、あなたが頑張ったお陰でボクたち夫婦になれるんだ! もう一生離さない!!」
「リューリィ君、あたい…嬉しい! 嬉しいよぉ、うわあああん!」
「あのどこか冷めたように人付き合いをしてきたリューリィがあんなに喜ぶなんて。よほどあの虎娘が好きなんだね」
「うむ。親とすれば、子が幸せになるのが一番だと改めて思い知らされたな。さて、アンスバッハ子爵には断りの謝罪に行かなければ」
「仕方ないね、親の務めだ」
涙を流して抱き合い、喜び合う息子とルゥルゥを見てアーデルベルトとカロリーネは優しく笑う。優しい空気がその場を支配した。その気配を敏感に感じたユウキは仲間と頷きあうとそっとその場を離れようとした。しかし…。
「待ちな」
「ひぃ…」
ユウキ、エヴァリーナ、フラン、カロリーナはビクッとして立ち竦む。4人の前にカルディアの女豹が立ち塞がった。女豹の眼光にビビった暗黒の魔女、熊殺し、疾風フランに自由貧乳同盟最高評議会議長はだらだらと脂汗を流しながら姿勢を正す。
「アンタたち、あたしの期待をよくも裏切ってくれたね…」
「わっ…、わたしたちは全力を尽くしました。サー!」
「ほう。全力を…ね…」
「そうであります。サー!」
「あの程度で全力とは、とんだ期待外れだね。お前たちの二つ名が泣くよ」
「…ゴクリッ」
4人は何も言い返せずごくりとつばを飲み込んだ。離れた場所の物陰から彼女らの夫が心配そうに見ているが、誰もがカルディアの女豹が恐ろしく、フォローに入ることができない。カロリーネはフッと笑みを浮かべると冷たい声で言った。
「これは、オシオキが必要だね」
「そんな…。私たちは一生懸命頑張ったのですわ!?」
「お慈悲を…、お慈悲をお願いします!」
「ダメだね。アンタら全員に帝国第1海兵隊特別遠征大隊で6か月の懲罰訓練を命じるよ」
「い…いやぁ~っ! それだけは絶対にいやぁ~!!」
ユウキたちは脱兎のごとく逃げ出した。プールサイドで足を滑らせコケながらも必死に逃げる4人の背中を見てカロリーネは呆れたように言った。
「冗談に決まっているだろ。皇太子妃や宰相家の娘さんたちにそんな事出来るわけないだろうが、全く…。でも、少々脅かし過ぎたかね。だけど、ユウキたちのお陰でリューリィは最高の嫁を得たんだ。感謝の気持ちを込めて後でお茶会にでも誘おうかね」
カロリーネはクスクスっと笑うと夫や息子たちの側に歩いて行った。ヴレーベ家の未来に思いを馳せながら。
主要人物でありながら、邪龍戦争で全くといっていいほど出番のなかったリューリィとルゥルゥに光を当てたこの話。女だらけの水泳大会という、なつかしのイベントを使ったら中編程度の長さになってしまいました。まあ、お陰でリューリィとルゥルゥは永遠の幸せをつかんだ訳で、結果オーライです。
なお、本編に時折出てきたカルディアの女豹こと、メイド長のカロリーネさんが実はリューリィのお母さんというネタは、この話を始めた時に思いついたもので、いかに作者が行き当たりばったりで作品を作っているかが分かってもらえると思います。
ちなみに、このようなイベントには必ず出演する帝国のド変態の双璧(エドモンズ三世とヴォルフ)ですが、ロディニアに遠征中のため出演できなかったと言うことで。
では、次の話でお会いしましょう(あと、2~3話ほど番外編を書いた後に、番外編の最終話としてユウキの子供たちの話を上げる予定です。期待してお待ちください)。




