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ルゥルゥの結婚狂騒曲(風雲竜虎編)

 ついにゲームが開始された。女の意地をかけたデスゲーム。競技は背番号順で行われる。初めに1番から5番の選手がスタート地点に並んだ。4番のアリエルは余裕綽々だが、その他の選手は皆緊張した顔をしている。スターターが所定位置に着き、スターターピストルを構えた。選手たちは前傾姿勢をとる。


 パーン!!


 ぽよよん♡浮き板渡りが始まった。最初の5人は一斉に駆け出し、助走をつけて浮き板に足を乗せた。途端に左右に不安定に動く浮き板。女の子たちは2枚、3枚と進むうちにバランスを崩して悲鳴を上げながらプールに落ち、ドボンドボンと水しぶきを上げる。


「きゃああ~っ!」

「ああん、だめぇ~っ!」


「おおーっと、早くも1、2、5番が脱落したぁーっ! 3番はバランスを取りながら進んでいるが危ないぞ! おおーっと、4番がすごい勢いで浮き板を走り抜けているーっ!」


 司会は絶叫しながら中継をする。アリエルは曲がりなりにも古代魔法文明が創り出した大天使。運動神経は並の人間よりずば抜けて高い。その能力をいかんなく発揮し、浮き板に足を着地させ、揺れる直前に足を上げて次に踏み出すことで体を安定させ、高速で突き抜けている。


「いいわよ、アリエル! もうすぐゴールよ!」

「初っ端から言いタイムが出そう。がんばれアリエルーッ!」


 仲間の応援が聞こえ。最高のタイムを目指しアリエルは速度を上げる。観客席からどよめきが、他のチームの参加者から「ウソでしょ」といった驚きの声が上がる。ゴールまで後数枚。アリエルは最高のタイムでの勝ちを確信した。しかし、そこに慢心が生まれる。濡れた浮き板を蹴りだした瞬間、足裏と浮き板の間に水の膜が出来、摩擦係数を0にしてつるんと足を滑らせた!


「わぁ!? ガボボオッ!!」


 アリエルは高々と水しぶきを上げて頭からプールに突っ込み、底に頭を打った。観客が大笑いする中、ぷか~っと大の字になって浮き上がる。その脇を3番の選手が「よっ、はっ」と声を上げて通り過ぎ、無事にゴールしたのだった。


「アリエルのバカー! 何やってんのよ!!」


 醜態をさらしたアリエルに仲間たちの罵声が飛んだ。


 このように最初から波乱の幕開けとなりながらゲームは着々と進む。不安定な浮き板は手強く、スレンダー美少女が浮き板に尻を打って股を全開にしながら轟沈し、巨乳女子はおっぱいを揺らしながらプールにダイブする。そして、ついにチーム・ルゥルゥの番が来た。体をグッと伸ばし、形の良い胸を強調したアルテナがスタート地点に着く。成熟しかけた体の美少女の登場に観客のボルテージは最高潮。凄まじい応援の声が飛んで来る。


「アルテナ様、頑張れー!」


 熱い応援(仲間より観客)を受けてアルテナがスタートした。途端に会場からどよめきの声が上がる。運動神経の良いアルテナは不安定に揺れる浮き板も何のその。苦戦する他の参加者を尻目に尻尾で上手くバランスを取りながら颯爽とコースを駆け抜けた。


「やったのだー!」


 ゴール地点で背伸びして観客席に手を振るアルテナ。しなやかな体にぴったりフィットしたワンピース水着の胸の小山がグッと強調され、みずみずしいエロスにその手の性癖を持つ漢どもが絶叫にも似た歓声を上げる。


「さすがアルテナ様。ありがたや、ありがたや…」(ルゥルゥ)

「今のところ暫定1位ですね。このままイケればよいけど」(ソフィ)

「あの胸よ…。あの年でアレはない。ユウキ様二世か? 憎々しい」(ティラ)


 第1ゲーム「ぽよよん♡浮き板渡り」が終了した。結局完走したのは1/3程度だった。そしてタイムアタックの結果が発表される。


「1位はビューティー・レディースのフランーッ! タイムは驚異の28秒3んーッ!!」


 ビキニ姿のフランはクールな表情のまま、会場に向かって手を振った。チームのユウキやカロリーナがニヤリとルゥルゥたちを見て笑った。その顔があまりに憎たらしくて悔しくて仕方ない。ちなみに2位はアルテナ、3位はミウ。ゼッケン3番の子は4位だった。


「ごめんね、ルゥルゥ」

「勝負は始まったばかり。次勝てばいいんです」

「冥府魔道に生きる者なれば六道死生順逆の境は本より覚悟!」

「みんな…。アルテナ様も頑張ってくれてありがとう。次は必ず勝とう! この勝負、絶対にあのおっぱい魔女には負けないんだから!!」

「ユウキ様よりデカパイのアンタがそれを言うかww」


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 2ゲーム目の準備ができ、司会者が魔道マイクを手にして選手たちの前に立った。


「それでは、2つ目のゲームを始めます! 次なるゲームは「どっきん♡うっふん♡スプーンリレー」ですッ! 全チーム横並びで一斉スタート。走る距離はプール幅35m。スプーンにピン球を乗せて次の走者の元まで運びます。運んでいる際にピン球を落としたらその位置からやり直し。アンカーまでピン球を送っていき、アンカーがゴールした順番で順位を決めます! 隣の走者を妨害するのも当然あり! 水着がはだけておっぱいポロリなんてことがあっちゃったりして、うほほほ! さあ、選手はプールに入ってください!」


「まずいわね。このゲーム、巨乳女子が多いチームが圧倒的有利だわ」(ユウキ)

「なぜですの? 水中移動は体格差の影響は無いと思いますけど」(エヴァ)


「水の中を動くということは、体の正面に水圧と造波抵抗を受けるということ。巨乳の子は胸がバルバス・バウ(球状艦首)の役割を果たし、水面で体が波をつくるよりも前方にあらかじめ巨乳波を生じ、水面で体が水を掻き分けて生じる波は、巨乳バルバス・バウによって生じた波とは逆位相となり、それぞれの山と谷が打ち消しあうことで波を小さくして、進みやすくなるの。でも、貧乳の子はそれが無いからもろに体に造波抵抗を受ける」

「と、いうことは…」


「うちのチームは貧乳が3人。しかもカロリーナとフランはフラット係数が高い。巨乳が複数いるルゥルゥやパール、アルヘナちゃんチームに比べ不利だわ」(ユウキ)

「何言ってるのかわかんないけど、バカにされているのはわかったわ」(カロリーナ)

「いいもん。この貧乳で巨乳を爆砕するんだ!」(フラン)


「む。向こうはユウキ様やパールがアンカーみたいだね。じゃあ、こっちは軍人で体力に勝るティラとソフィが先鋒次鋒ね。3番目をアルテナ様、アンカーはあたいが行くよ」

「任せなさい! 他の参加者なんてぶっちぎりよ!」

「アンゼリッテとアルヘナちゃんは安パイ」

「今度も頑張るのだ!」


 最初の走者が口にくわえたスプーンに球を乗せた。「パーン」とスタートの合図が鳴り、最初の走者が走り出す。しかし、26名が一斉にスタートしたものだから、発生した波が複雑に動き、走者の体に当たって体を揺らし、進み難さを増幅する。このため、しょっぱなから球を落として右往左往する選手やこの機に乗じて妨害行為をする選手が続出。そこかしこで「きゃあ」とか「いやぁ~ん♡」といった悲鳴が上がり、観客の漢たちは大きな歓声を上げ、水着美少女の肢体をこの目に焼き付けようと瞳孔を極限まで開く。そんな状況でも、選手たちは何とか前進してチームの仲間のもとに到達しピン球を渡そうと奮闘努力している。


「むぐぐ。思った以上に水の抵抗が凄い…」(ティラ)

「やだもう。ブラがズレちゃうお♡」(カロリーナ)

「大したことないわね」(クリスタ&フローラ)


 ユウキの言葉通り貧乳選手が苦しむ中、巨乳選手は波の抵抗なんのそのグイグイとコースを前進していく。巨乳女子の優越感に浸る目が憎たらしい。


「ソフィ、ごめん。何とか挽回して」

「任せて。我に秘策有りよ」


 遅れを取ったチーム・ルゥルゥの第1走者ティラは真ん中くらいの順位でピン球を次の走者ティラに渡した。先頭は既にプールの真ん中付近まで進んでいる。ピン球スプーンをくわえたソフィは進行方向に向かって体を横にして進み始めた!


「貧乳シスターズ秘奥義、蟹歩戦術クラブ・ウォーク!」


 水の抵抗など無いかのように、高速前進して前にいる走者をどんどん抜いていくソフィにルゥルゥは歓喜の、ユウキは驚愕の声を上げた。


「すごい、すごいよティラ! そのままイケー!!」(ルゥルゥ)

「してやられたわ~。あの方法だと水の抵抗を最小限にでき、体の両側を流れる波が摩擦抵抗を減らして推進力を増幅させる。あれは貧乳にしかできない技だ。さすがソフィさん。帝国兵は伊達ではない」(ユウキ)


「アルテナ様!」

「まかっせなさいなのだ!」


 先頭から10位以内まで順位を上げたソフィはアルテナにピン球を渡した。巨乳系であっても背の低いアルテナでは胸が水中に沈み、バルバス・バウの効果は得られない。そこでアルテナはひょいとかわいいお尻を浮かせると、犬かきで泳ぎ始めた。対岸に向かうアルテナを見てティラはニヤッと笑った。


「ルールには泳いじゃダメと書かれてない(司会者・審判に確認済み)。要はピン球を落とさなきゃ良いのよ。狼系亜人のアルテナ様は犬かきが得意。これはイケる!」


 アルテナはパールやクリスタ、クリスティーネとフローラが作った貯金を使い果たし、息も絶え絶えに苦労しているアンゼリッテやアルヘナを抜いて、たちまちトップに躍り出た! 動くたびに激しく上下する形の良いお尻に観客の漢たちは絶叫する。


「はぁはぁ。ルゥルゥ、頼むのだ」

「よく頑張った、アルテナ様!」


 アルテナからピン球を受け取ったルゥルゥはティラとソフィが待つゴール目指して前進を始めた。アンカーまでたどり着いていない選手たちを避け、ピン球を落とさないように慎重にかつ速度を上げる。今大会No.1のビッグバストは最大の効果を上げて波を消し、造波抵抗はほとんど感じない。ゴールまで後10m。ルゥルゥは勝利を確信した。


「そうはイカの塩辛よ!」

「だ、だれ!?」


 いつの間にかルゥルゥの背後にユウキが接近していた。


「ユウキ様!?」

「ルゥルゥ、あなたを勝たせるわけにはいかない!」

「むぐぐ…、そんなにメイド長が怖いの!?」

「当り前じゃない! あなたを優勝させると公開尻叩きの刑が待ってるのよ!」

「絶対に負けん! リューリィ君と結婚するんだ!」

「結婚すると、アレがお姑さんになるんだよ!」

「うっ…。でっでも、リューリィ君がいれば大丈夫だもん!!」

「全力で叩きのめす!」

「負けるかぁー!」


 ルゥルゥとユウキ、2人の巨乳美女は並走して体を押し合いへし合い、激しい鍔迫り合いをしながらゴールを目指す。体をぶつけ合うたびに上下左右に揺れに揺れまくる巨乳に観客の漢たちは総立ち(どこが?)になり、悲鳴にも似た歓声を上げる。ゴールまでの距離は残り3m。体をくっ付け合い、水しぶきを上げながらルゥルゥとユウキは勝利めがけてラストスパートした。さらに背後から他の選手たちも勝利目指して必死の形相で迫ってくる。たかが「どっきん♡うっふん♡スプーンリレー」にそこまで必死にならなくてもと思うが、競技に参加している当事者たちは、それぞれの思惑を達成させるため必死だ。


「ゴォオオオオーール!!」


 勝敗は決まった。会場が静まり返る中、司会者が順位を発表する。


「1位はチーム・ルゥルゥ! 2位はゴージャス・レディース! 3位…」


 見た目には同着だったが、写真判定の結果が会場に映し出される。その瞬間、会場が大きなどよめきに包まれた。映像にはルゥルゥのおっぱいの先が僅かに先着していた状況が映し出されていたのだった。


「やったー!」

「負けた…。ひぃ!?」


 歓喜に喜ぶチーム・ルゥルゥのメンバーと恐ろしい顔で睨みつけるメイド長を見て震え上がるゴージャス・レディースのメンバー。しかし、優勝の道はまだ遠い。女戦士たちは次の戦いに向けて気合を入れるのであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 3番目のゲームは障害物競走。ウォータースライダーが設置されている流れるプールに移動して、はしご上りやスライダーによる上下運動、着替え(コスプレ)、粉の中の飴をくわえることなど、与えられたポイントを全て通過しなければならない。各チーム全員参加の一斉スタート。ゴールまで到達した選手の合計タイムで順位を決する、根性が試されるゲームだ。


 ゲーム開始早々。我先にと争うように障害物に向かう参加者たち。「お淑やかさ」とか「かわいらしさ」とかいう女の子の本質は投げ捨て、ただ勝利を目指して競い戦うアマゾネス。それは正に勝つためには手段を択ばず、相手を蹴落とすために髪を振り乱して戦に赴く戦闘民族そのもの。この悪鬼さながらの姿を見たらゴブリンだって恐怖にかられ、逃げ出すに違いない。

 また、アマゾネスたちの飛び散る汗、弾ける肢体、魅惑的に動く胸に感動した観客たちは声を涸らさんばかりに大きな声援を送り、故意かはたまた偶然か、たまに発生するポロリで露わになったぴちぴちのおっぱいやお尻に絶叫するのであった。


「痛た! 痛いって、もう! これ、あたいの結婚物語だったよね。なんでこんな話になってるのーッ!? ヤダよもう。あん、ブラ持ってかないでーッ!」


 他の参加者に揉みくちゃにされながら叫ぶルゥルゥの声は、女たちの怒号と観客の大歓声にかき消されてしまっていた。

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