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エピソード⑤ エドモンズ三世VS巨乳魔導士

 変態デュラハン ヴォルフの疾風斬によって戦闘不能にされたクロードを抱きかかえて後退したリオンに変わり、コナハト神聖国の天才魔術師ニーナがタスカローザの丘に進み出てきた。


「次はあたしが相手よ。デュラハン、あなたがいくら強かろうが、あたしの神聖魔法で消し去ってあげるわ」

『ふむ、気の強そうな巨乳ちゃんか…。吾輩のヴォルテックス・ランスで服を切り刻んで全裸にして巨乳鑑賞をしたいところだが、お主の相手は吾輩ではない』


「このドスケベ野郎…。じゃあ、あたしの相手は誰なの? フェーリス様が直々にお相手してくださるのかしら」

「いや、私じゃなくてコイツ」


 フェーリスが指さしたのは、首無し馬(黒大丸)を引いていた、ぼろ布を纏った骸骨。それがカタカタと体を左右に揺らせて歩いて来る。あまりにも頼りない姿にルミエルとニーナはお腹を抱えて笑い出してしまった。


「ぷぷっ、ナニコレ!? ニーナが戦う相手が今にも倒れそうな骸骨って。あーはははは、本気で言ってるのかしら。おかしくって涙が出ちゃう!」

「あひゃひゃ、笑い過ぎて腹痛い。神聖国一の天才魔術師の相手が、こんな墓場から抜け出たような骸骨ですって!? 冗談キツイわ、顔だけにしてよね。ぷーっくすくすくす」


「…………。(この骸骨の本性を知ったら笑ってはいられなくなるわよ。恥ずかしくて、死んだ方がマシだと思うんだから)」

「フェーリス様、ニーナって娘、あのド変態の性癖に耐えられますかね…」

『吾輩、今からワクワクが止まらんのだけんど』


 リースの呟きを聞いたレオンは、骸骨になにか不気味なものを感じ、思わずルミエルに注意した。


「ルミエル殿、油断するな。この骸骨何があるかわからんぞ!」

「大丈夫ですよ、リオン様。コイツただの古びたスケルトンですよ。今、ニーナがあのデュラハン共々消し去りますので、お待ちくださいな。ニーナ、やっておしまい!」

「アラホラサッサーです。ルミエル様! 不浄なるアンデッドよ、この世から消え去れ! ターン・アンデッド!!」


 手にした魔術師の杖を頭上でくるんと回し、古びた骸骨に杖を向けた。杖の宝珠が白く眩しく輝き骸骨を包み込んで、爆発的に周囲に広がり、光の泡となって空に舞い上がった。その光景にニーナは勝ち誇ったように笑みを浮かべた。しかし、その笑みは直ぐに凍り付いた。


「な、なんで…」

「うそでしょ。ニーナの魔法が効かないなんて、そんな訳あるはずが…」


 骸骨はカタカタと頭蓋骨と肩甲骨を震わせて笑っている。ニーナはわなわなと震えると魔術師の杖を振って炎の竜巻を生み出した。


「ファイアストーム!」


 炎の渦が骸骨を包み込み、高熱が骨をあっという間に焼き尽くした。炎が消えると骸骨のいた場所には僅かな灰だけが残っていた。


「あはははっ! 焼滅したわ。ざまあ無いわね!」

「大した事なかったわね。でも、変ね。フェーリスとリースって子、全然焦ってない。どうして?」


 ニーナが燃え尽きた骸骨の灰をじゃりっと踏み付けた途端、風も無いのに灰が突然舞い上がり、たちまち青白い炎となって燃え上った。


「な、何が起こったの!?」


 狼狽するニーナの耳に、不気味な高笑いが聞こえてくる。


『ワハハハハハハ! ワハハハハハハ! ウワーッハハハハッ!!』

『ワハハハ、そうよこれこれ、気が強系美少女のびっくり顔。これが見たかったんじゃよ』


「なに…、なんなの?」

「見て、ニーナ!」


 驚愕するルミエルとニーナの前に現れたのは、先程までのボロを纏った骸骨ではなく、高貴な青色に染め上げられたチュニックと灰色のズボン、黒のマントを着衣して、金色に輝く王冠を頭に載せたアンデッド(骸骨には変わらない)だった。


『ワハハハハハハ! さて、いい加減自己紹介しようかの。そこの巨乳ちゃんたちよーく聞け。儂は死霊の王ワイトキングじゃ。名はエドモンズ三世。よろしくな』


「ワ、ワイトキングですって!? アンデットの中でも極めて凶悪な魔物という…」

「フェーリス、あなたなんて化け物を使役しているの。信じられないわ!」

「あー、いやー、なんていうか。まあ、なりゆき?」


『ククク…。儂はフェーリスちゃんの友人なのじゃ。困っている友を助けるためにわざわざカルディア帝国からやって来たのじゃ。ニーナと言ったな、ククク。儂を楽しませてくれるんじゃろうな』

「くっ…」


「フェーリス様、なんかゲスい感じがしてきたのは気のせいでしょうか」

「奇遇ねリースちゃん。私もそう思ってた。ニーナさん、絶対エロい目に遭って泣かされるわよ」


『ワイトキングの恐ろしさ、身をもって知れ! 極大暗黒魔法ヘル・インセクト!!』


 エドモンズ三世の宝珠が妖しく輝いて、無数の小さな虫が飛び出て来た。むぉ~んという耳障りな音とともにニーナに襲い掛かる…。というか、体中にたかり始め、あっという間にニーナの首から下は小さな虫に覆われてしまった。


「ふ、ふぎゃあああん! 気持ち悪い、助けてーッ」(ニーナ)

「うわ、えげつない」(フェー&リース)


 うぞうぞと人型に虫が蠢くの見てて気持ち悪くなる。フェーリスはニーナがちょっと気の毒になった。しかし、この魔法が解けた時、ちょっとどころではなく気の毒になるのだった。

 エドモンズ三世がパチンと指を鳴らした。その音を合図に虫が一斉に消え、現れたのはぐすぐす泣く全裸のニーナだった。「えっ!?」っと驚くフェーリスたち。自分の姿に気付いたニーナが絶叫し、エドモンズ三世とヴォルフとリオンは歓声を上げる。


「キャアアアーーッ! なんでぇーっ!!」

『イーッヤッホーゥ! ナイスバスト! ナイスお股!!』


 なんと、極大暗黒魔法で呼び出された虫はニーナの服を食べ尽くし、ついでに全ての体毛と陰毛までキレイに平らげて行ったのだ。そのニーナはというと、バインと自己主張する見事な巨乳と先端の桜色の乳輪乳頭にツルツルになったあそこをさらけ出している。

 ナイスな体にエドモンズ三世やヴォルフは歓喜し、リオンはアソコを極限まで硬くしてクロードを地面に落として半身の体勢になってしまった。ちなみに、自分に無いモノを見せつけられたフェーリスは鬼の形相で、ギリッと歯を食いしばる。


「な、なんてことしてくれるのよ~! バカバカ、エッチ、スケベ!」

『ムフフ。どうじゃな、ワイトキングの恐ろしさ、思い知ったか。ホレ、得意の魔法で反撃して来んかい』


「ワイトキングの恐ろしさって女の子を全裸にすることなの!? このドスケベ。アンデッドのイメージ間違ってた!」(ルミエル)

「反撃できる訳無いでしょ! ふぇえええん!」


 涙目のニーナはというと、胸を隠してしゃがみ込み、身動きが取れない状態だ。魔法を放つには杖を振らねばならない。その時に胸もアソコも丸見えになってしまう。気は強く性格は悪いが根は純情なニーナは、そんな事とても耐えられない。しかも、自分のマントを脱いでニーナに着せようとしたルミエルは、ヴォルフの槍とリオンの通せんぼで止められている。


『良いぞ良いぞ、そのぐぬぬ顔…。感動で尾てい骨が笑っておる』

「マジ救い難いわね」(フェーリス)

「エッチだ…」(リース)


『来ぬなら儂から行くぞ。喰らうがよい、我が超絶秘奥義』

「ひいッ…」

『ワイト・サーチッ!!』


 エドモンズ三世の眼窩がビカッと光った。ニーナは恐怖で目を瞑った。しかし、体には何の変化も感じない。恐る恐る目を開けると、エドモンズ三世がカラカラと笑っており、その少し後ろではフェーリスが「ご愁傷様」と憐みの表情で自分を見つめていた。


「い、一体何が…」

『ファーッハッハッハーッ! ワイト・サーチは儂固有のスキル(?)。女子限定であらゆるものを見通すのじゃ。3サイズから恥ずかしい思い出、誰にも言えない秘め事や思春期レベルまで何でも覗き見できるのじゃ。さて、ニーナとやら、お主の全てを見てやるぞ~。おお、見える見える…』


「きゃあああーっ、やめてぇー」


「あーあ、可哀そうに」(リース)

「あなたたち、可哀そうと思うなら、見てないで止めさせてよ!」(ルミエル)

「いやぁ~。実は私も既に洗礼を受けてるのよね、ワイト・サーチの。知り合いの前で色々暴露されちゃって、あんときはマジ死にたくなったわよ」(フェーリス)

「嫌ぁああああっ!」(ニーナ)


『ニーナ・ステア、15歳。西方エルトリア国出身の女エルフ。身長156cm、体重48kg、B89、W58、H84。胸のサイズはFカップ。むひょひょ、年齢にしてはいい体しておるわい。乳の形も良いし、張りも良く、乳輪も目立たず乳首共々美しい。おっぱい比べで勝負だったら、フェーリスちゃんの圧倒的敗北&無条件降伏だったな。ワーハッハッハ!』


「ぷっ、くすくすくす」(リース)

「笑うな!」(フェーリス)


『ふむふむ。交換留学生として神聖国の学校に入学し、ここで魔法の才能が開花した。そんで、周りからちやほやされ始め、天狗になって威張り散らすようになって同級生女子から嫌われるっと。同じクラスにずっと好きだった男がいて、「今の私ならいける!」とばかりに上から目線で告白するも「そんな偉そうな態度の女は嫌だ」とあえなく轟沈。速攻で振られて陰で笑いものになる…か』


「きゃぁあああーっ! どうしてそれを。や、やめてー!」

「あちゃー、これは恥ずかしい」(フェー&リース)


『この大バカモンが! 思春期の女子はな、ツンとデレを微妙なバランスを持って活かさんといかんのじゃ! 男はな、普段ツンツン冷たい女子が時折見せるデレた態度にキュンと来るものなのじゃ! それが巨乳美少女なら尚更じゃ。キュンと来たところにぎゅっと胸を押し付ければ、そこで男は落ちるのじゃ! よく勉強して精進せい!』


「へー、そうなんだ。アンデッドの癖に詳しいわね。参考になるわ」(ルミエル)

『あ、最後の「ぎゅっ」はフェーちゃんは無理だったわな。ワハハ、済まん済まん』

「ぶっ飛ばすわよ!」(フェーリス)


『続けるぞ。えーと、趣味は季節の花のドライフラワー作り。理由は1人でできるから。気の許せる友人は部屋で飼ってる小鳥のピーちゃん。ドライフラワーの香りに包まれながら、空に浮かぶ雲や窓辺の鉢植えの花を見て、心に思い浮かんだポエムをピーちゃんに聞かせるのが唯一の楽しみ…って。哀れじゃ。おじさん、悲しくて涙が出そう』


「きゃあああっ! あ、あたしの秘密がぁ~!」

「うわぁ…」

「ポエマー。本当にいたんだ、そんな人。しかも、聞かせる相手が小鳥って…」

「ふぇえええん! もうやめてぇ~。わああん、ぐすぐす…」


『ホッホッホ。いい感じに湿ってきたぞい』

「どこが…って、何が?」


『さーて、次は全漢のリビドーを刺激する、ニーナちゅわんの性癖暴露コーナーッ!』

『ウォオオオオオーーーッ』

「いやぁ~っ!」


 ヴォルフとリオンが腕を上げて吠える。既に果たし合いの「は」の字も無くなった。ニーナの裸にリビドーを全開にするクズを冷たい目で見るルミエル含む女性陣。


『生粋のポエマー、ニーナちゃんの夢は白馬の王子様に優しく抱かれて愛撫されることじゃ。ベッドの上で王子様を夢想しては、自ら体の敏感な部分を刺激しては歓喜に打ち震えるのが毎夜の楽しみ。エッロ! 意外とエロに貪欲じゃ! ニーナ、いやらしい子!!』

「ごくり…」(ヴォルフ&リオン)

「やめてぇ~っ、してない、してないからぁ~」


『おっぱいの先、桜色の蕾に触れた途端、ビクンと歓喜に震える自分の体。蕾への刺激を堪能したあとは、十分に潤んだ秘裂の中の出っ張りに指が…』

「はい、そこまで!」

『ガハッ!?』


 めそめそ泣くニーナに、両手を伸ばして覆いかぶさるようなポーズで興奮しながら性癖を暴くエドモンズ三世。その顔面にフェーリスの強烈なパンチが炸裂し、衝撃でエドモンズ三世の下顎骨が顎関節から外れてズレた。


『ア…アガ…アガガ!…ウゴ、ウゴゴ!(何するんじゃ! いい所じゃったのに!)』

「何言ってるか分かんないわよ! もうお終い。勝負あり、私の勝ち」

『アグ! アガガ…アガアガ、アガガウゴ(ちょっと! 治してくんない。このアゴ)』

「はいはい。リースちゃん、ゴメン治してあげて」

『ア…アガ…(た、頼む)』

「仕方ないですねえ。しかし、凄い馬鹿力ですね。あ~あ、完全に顎の関節が壊れてる…」


 フェーリスはしゃがんだまま大泣きするニーナの側に寄ると、自身のマントを脱いでニーナの体を包み、肩を抱いて立たせた。少し離れた場所ではリースがエドモンズ三世の顎を治そうと悪戦苦闘しており、ルミエルはニーナ救援を邪魔したヴォルフとリオンに往復ビンタを食らわせている。


「ニーナ、立って。勝負は終わり。あのド変態は成敗したから大丈夫よ」

「うう、ぐすぐす。ふぇええん。死にたいよう…」

「泣かない、泣かない。ねえニーナ、友達が欲しいなら私がなってあげる。友達になりましょうよ。いがみ合うよりよっぽどいいわ。それに、私も王宮じゃ話せる相手もいなくて寂しいのよ。話し相手になってくれると嬉しい」

「ふぇ? 友達に、なってくれるんですか?」

「もちろんよ。それに私も小鳥大好きなの。ピーちゃん見せて。あと、魔法が苦手だから、教えてくれると嬉しいな」

「は、はい~。あたしも嬉しいです。ほんとに嬉しいです。うわぁあああん(大泣き)」


 エドモンズ三世の顎を治しながら様子を見ていたリースは、フェーリスの優しさに心が温かくなった。


(やっぱりフェーリス様は優しい。それに、人としての器の大きさも凄い。どこか、ミュラー様に通じるものがあります。フェーリス様がこの国の王様になってくれれば、帝国の様に活気があって楽しい国になるのかなぁ)


『ギャアアアアアーーッ! アガ、アガガーッ(目が、目がぁーっ)!!』

「あっ、ごめんなさーい」


 リースがぼんやりと考え事をしたため、手元が疎かになった。関節を嵌めようとした手がズレてガチッ!と嫌な音がして、下顎骨の関節部が眼窩に深々と突き刺さって折れてしまった。エドモンズ三世が大きな悲鳴を上げて両手を上向きにしてワナワナと痙攣したように震え、目の前で起こった惨劇にリオンとルミエルはガクブルするのだった。



※ その後、折れた下顎骨は手先が器用なリオンの手によってテープで直して、無事頭骨に嵌め込まれました。

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