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エピソード① まずは別れのBBQ!

 番外編9から続く話です。前回は書きませんでしたが、時間軸はユウキの結婚式から2~3か月過ぎた頃です。タイトルはエドモンズ三世ですが主人公はフェーリスにしました。では、本文へどうぞ(一話一話が長いです)。

 ここ、カルディア帝国の皇太子宮では今日も今日とて賑やかな笑い声が響いていた。再会を果たしお互いの想いを伝えあったユウキとフェーリス達は和解を遂げ、すっかり昔の仲の良さを取り戻した。その後、フェーリスたちは毎日のように皇太子宮に訪れ、お茶をしているのだった。


「ミュラー様には感謝しかありません。私的とはいえ、皇帝陛下や宰相閣下、各省庁の大臣方と面会する時間が取れるよう調整していただき、大変有意義でした」

「なーに、いいって事よ。レウルス殿と話せて皇帝おやじやヴィルヘルムも色々と感じた所もあったようで、随分と喜んでいたぜ。オレとしても、あんたとずっと親交を深めたいと思ってる。友人としてな」

「私もです。ミュラー様と交友を深めることができたこと、大変嬉しく思います。ただ…」

「ただ? 何か懸念があるのか?」

「まあ。うちの国王おとうと様が、その…皇太子妃様を今だ敵視していて、帝国との友好関係構築に障害になっているのが、どうも…。はぁ…」

「ああ…。ったく、面倒臭ェヤツだな。オレのカワイイ妻を敵視するなんざぁ絶対に許せん! オレの前に現れたら、思いっきりぶん殴ってやるぜ!!」

「その際は思う存分どうぞ」

「お、王国の宰相様からお許しが出ちまった」


 すっかり気を許し、アハハと笑うミュラーとレウルス。その隣のソファではユウキとカロリーナがフィーアやフェーリスたちと談笑していた。


「あ~あ、休みももうすぐ終わり。明後日には船に乗らないといけないのかぁ」

「この国、凄く居心地が良くて、帰りたくない気分ですわ」

「あはは、ずっといてくれてもいいのよ」


 フェーリスはソファの背もたれに体を預けて心底帰りたくなさそうに顔を顰めて背伸びをした。彼女の言葉にフィーアも賛同する。ユーリカはユウキの隣でオレンジジュースを飲むカロリーナに話しかけた。


「カロリーナはどうするのです? 私たちと一緒にロディニアに帰りますか?」

「ううん、私はこの国に定住することに決めたの。何と職も得ているのよ」

「まあ!? あのカロリーナが、チビでド貧乳で色気無しバカのあなたが職を…。ユーリカ感動です」

「バカにしてんの!?」

「はい」


 この2人は相変わらずだなと、思わず笑いが出たユウキも何となく別れがたい気持ちとなっていたが、彼女たちにもロディニアでの生活がある。ユウキは少し残念に思うのだった。それまで黙っていたリースがジュースのコップを置いてフェーリスに話しかけた。


「そう言えばペチャパ…フェーリス様、果たし状貰ったって言ってましたよね、どうされるんですか?」

「私の名前に変な形容詞付けないでよ。ったく…。でもそうだった。果たし状があったんだっけ。ああ、余計に帰りたくないわぁ~」

「果たし状!? あははは! フェーリス様、どういう学校生活を送ってるのよ!」


 お腹を抱えて笑うユウキやフィーアたち。ふと見るとミュラーとレウルスも爆笑している。フェーリスは顔を赤くしてぐぬぬ…と唸った。笑い涙を拭きながらユウキが果たし状について聞いて来た。


「で、どんな内容なんですか?」

「実は王国高等学校に他国の留学生もいるのですけど、その中でアルスター公国王子のリオンっていうクソ野郎とコナハト神聖国聖女のルミエルっていうアバズレ女が何かと私に突っかかって来るんです」


「フェーリス様って随分口が悪くなったわね」

「いえ、もともとの地ですよ。だから男にモテな…いたっ、痛いですよ!」


 リースのこめかみを拳でグリグリしながら、フェーリスは続きを話した。


「私もロディニア大陸の盟主、ロディニア王国の姫ですから、やはり学校では一目置かれる訳です。3年生になって生徒会の会長選びがありまして、当然私が推薦されました。それが面白く無かったのか、リオンとルミエルも立候補し、選挙になりました」


「どうだったの?」


「当然、圧倒的多数の票を獲得した私が会長に選ばれましたよ。当然じゃないですか」

「何でも貧乳女子を糾合して組織票を頼んだのが大きかったらしいです」

「うるせーよ。何だって勝ちゃあいいのよ!」

「まるで悪役令嬢みたいですわね」


 フィーアがぼそっと呟いた。


「まあ、それ以来何かと私を敵視してくるんです。今回は2人で結束して私を潰すつもりなんでしょうね。バカの考えることは分かりません」

「へえ…。それで、果たし合いを受けるの?」

「受けないと色々悪口を言いふらされそうだから、受けざるを得ないんですけど、困ったことがあって…」


「困った事?」

「はい。リオンには公国最強の剣士クロード、ルミエルには神聖国最高の魔術師ニーノが護衛役として付いてまして、恐らくこの2人を決闘の代理人として立てて来るかと思うんです」

「なら、フェーリス様も代理人を立てればいいじゃない。誰かいないの?」

「ところが、この2人って…強すぎて、誰も協力してくれないんですよぅ~」


 大きなため息をついたフェーリス。ユーリカも珍しく顔を曇らせながら話しを引き継いだ。ユーリカの話によると、クロードの実力は本物らしく、一度夫のモーガンと親善試合をした事があった。結果は引き分けだったが、試合後にモーガンは、


「クロードは本気を出していなかった。相手が本気だったら負けていたろう」


 と語ったとの事だった。全員の視線がレウルスの隣にいるモーガンに行ったが、本人はばつの悪そうな顔をしている。

 また、魔術師のニーノもそうで、西方エルトリア王国出身のエルフで魔術の素質に優れ、大陸でその右に並ぶもの無しと評価された人物とのこと。

 なお、ニーノは年齢15歳位。年齢の割にビックバストの持ち主とのことだった。


「なーるほど、それじゃあフェーリス様には勝ち目がないわね」

「おっぱいの大きさじゃ、既に無条件降伏してますしね」

「じゃかましいわ! でもほんと帰りたくないなぁ。果たし状もそうだけど、マクシミリアン兄様の顔も見たくないし。本気でこのまま帝国に移住しようかな…」


 しょぼーんと沈んだ顔のフェーリス。何とか助けてあげたいと思ったユウキはパッと閃いた。


「フェーリス様って魔法が使えますか。魔力は持ってます?」

「え? はい。炎系が少し。握りこぶし程度の火の玉が作れる程度ですが」

「魔力があれば大丈夫ね」

「はあ…」


 なにを思いついたのか、皆が興味津々といった風にユウキを見つめて来た。ユウキは「にひひ」といたずらっ子のように笑った。フェーリスは何か嫌な胸騒ぎを覚えた。


「フェーリス様に、とっても強いわたしの眷属を貸してあげましょう」

「ま、まさか…」

「そのまさかです。はい、おいでませ♡」


 ユウキはパチンと指を鳴らす。直後、部屋の中に暗黒の魔力が満ち溢れ、漆黒の霧が渦巻き、中から2体のアンデッドが現れた。


『クッ、ククッ、クハハハハッ! フェーリスちゃんよ、また会ったにゃん♡』

『ワハハハ! ワーッハハハ! 呼ばれて飛び出て、常勝将軍只今参上!!』


 てへぺろVサインをしながら現れたのは毎度おなじみ、帝都の主婦の友ことワイトキング「エドモンズ三世」に、帝都の小学生に大人気、首無しおじちゃんことデュラハン「ヴォルフ」だった。


「や、やっぱり~! ド変態の双璧じゃない~!!」(フェーリス)

「あ~あ、こりゃ王都が大騒ぎになるわ」(ユーリカ)

「決闘、絶対に見に行こうっと」(リース)


『ロディニアか…。ヴォルフよ、いよいよ儂らの活躍の場もワールドワイドになってきたのう。ロディニアの思春期女子の秘密、暴きに暴こうではないか』

『当然。吾輩が真っ先にすべきこと、それはロリ巨乳狩りじゃぁ!!』


 高笑いする変態の双璧の前に絶望の表情を浮かべるフェーリス。ユーリカとモーガンも不安そうな顔をするが、レウルスだけはニコニコと笑っている。夫の笑顔にフィーアは気付いた。あれは何か悪い企みを思いついた顔だと。ただ、彼女にはそれが何なのか想像する事は出来なかった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 フェーリスたちが帝国を離れる日の前日の午後、ユウキの発案で皇太子宮の庭でバーベキューパーティーが開催された。別れに湿っぽいのはいらない。また笑って再会しようとの願いを込め、楽しく別れようとの思いからの提案だった。


 大型の焼き台を多数並べ、大量の炭を投入し、焼き網に高級肉や各種野菜を乗せて宮殿の使用人総出で焼き焼きしている。また、庭の一角に酒やジュースも大量に用意したドリンクバーを併設し、メイドさんが忙しそうに飲み物を来客に渡していた。


「わーははは! 今日は我が妻ユウキちゃんの友人たちとのお別れパーティだ。遠慮なく食べてくれ。小難しい事はなしだ! 無礼講で行こうぜ!!」


 うぉおおおーっ! と参加者から大きな歓声が上がり、BBQ台とドリンクバーに大勢の人が集まった。ミュラーの隣に並んだユウキも楽しそうに皆に挨拶している。


 一方、招待されたフィーア夫妻やユーリカ夫妻、フェーリスにリースは圧倒的規模のBBQに度肝を抜かれたと同時に、招かれた大勢の客人の内容にも驚いていた。


「す、凄い規模ですわね。さすが帝国皇太子夫妻」

「フィーアさん、あ、あそこ見てください」

「何かありました? ユーリカさん…って、なっななな、何ですの、アレ!?」


『ウワーハハハハ! 肉だ肉! 久々の肉はうめぇーっ!!』

「もう、メイメイちゃんったら。肉ばかり食べ過ぎだよ。少しは私にも分けてよ」

『おおっと、済まねえ。マイ・スモールバスト・エンジェル。ちと興奮しちまった』


「あ、アレって、アークデーモンですよね。なんで魔界の上級悪魔が皆に混じって肉を食べてるんですか!?」

「しかも、誰も気にしてない…。メイドさんなんか、普通にアークデーモンの皿に肉を載せながら談笑してます。何なんです、この国は…」

「おい、あっちもなんか凄いぞ」


 モーガンが指さした方を見て、再び呆気にとられるロディニア組。そこでも信じられない光景が展開されていた。


『もう! 離れてくださいませんか、カストル様に食べさせるのは私です!』

『邪魔な貧乳虫ねぇ。旦那様にはお肉よりパールを食べて欲しいわ♡』

『やめんか、淫乱悪魔!』


『はい、カストルあ~ん♡』

「カストルくぅ~ん。こっちのお肉がおいしいわよぉ~ん♡」

『クリスタ邪魔!』

「邪魔のなのはアリエルよ。このチビ貧乳! アブソリュート・ゼロでぶった斬るわよ!」


 1人の美少年に女が群がっている。しかも、悪魔に天使に美少女2人の計4人。それがギャーギャー言いながら醜く争っていて、美少年が疲れ果てた顔をしているのがとても印象的だ。


「悪魔と天使と人間の女の子が美少年を取り合って殴り合ってる!?」

「しかも、周りが誰も気にしていない。はっきり言って異常過ぎる…」


「フィーア、ユーリカ」

「あ、ユウキさん」


 手を振りながらにこやかな笑顔でやってきたのはユウキだった。


「紹介するね、彼女はこの大陸で初めてできた大切なお友達なの。彼女は帝国宰相ヴィルヘルム様のご令嬢なのよ」

「エヴァリーナと申します。お目にかかれて嬉しいですわ」


 エヴァリーナはドレスの裾をつまんで優雅に礼をした。フィーアも同様に礼を返し、ユーリカは頭を下げて敬礼する。フィーアは改めてエヴァリーナを見る。身長は160cmに少し届かない位。サラサラの金髪ロングヘアに神秘的な紫色の瞳を持った凄い美人だ。ただ、自分たちを見る目が少し険しい気がする。


「あ、あの…、何か…?」

「いえ別に。ただ、ユウキさんの友人を名乗りながら、敵対した方とはどんな人物なのかと常々思っていたものですから。気に障ったのなら謝りますわ」

「…………」

「エヴァ、やめて」

「あっ…ごめんなさいユウキさん。皆さんも。失礼なことを申し上げて済みませんでした」

「いえ、いいんです。その事は事実ですし。気になさらないでください」


 ユウキはしょぼんと項垂れるエヴァリーナの手とフィーアの手を取って握手させた。


「エヴァもフィーアもユーリカも、わたしの大切な親友だよ。ロディニアの事は、わたしにも悪いところがあった。忘れることはできないし、大切な人も大勢失くした。けど、その人たちの想いを胸に前向きに生きるって決めたの。だから、敵だ味方だなんてどうでもいい話なの。みんなで仲良く生きていければって思う。だから、エヴァもフィーアたちと仲良くして欲しいな」


「ユウキさん…。そうですわね。フィーアさんにユーリカさんとおっしゃいましたわね。改めてご挨拶申し上げます。エヴァと呼んでいただけると嬉しいですわ」

「ううん。エヴァリーナ様のお怒りも当然です。でも、それだけユウキさんを慕ってくれてるんですよね。友人として嬉しいです。私達からもお願いします。ぜひ、エヴァリーナ様とも友人になっていただけると嬉しいです」


 一時はどうなるかと思ったユウキだったが、エヴァリーナとフィーア、ユーリカが笑顔で握手するのを見て、ほっとするユウキであった。


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