邂逅⑦ 試練の終わり、そして…
「次はいよいよ私か…」
「フェーリス様、何があっても挫けないでくださいね」
「どーゆー意味よ!」
『次はそこのツンデレちゃんか。ふむ、なになに…』
「ごくり」
『ロディニア国王女フェーリス、17歳。一応、女』
「一応って何よ。正真正銘の女ですぅ~」
『身長158cm、体重50kg。3サイズは…、B78W56H83の超スレンダー体形のぺったん娘。日々バストアップ体操をするも効果なし。ま、無駄な事は止めとけ。疲れるだけじゃ』
「無駄って何よ! 無駄じゃないもん。苔の一念岩をも通すって知らないの?」
『岩を通す前に苔が干からびるわ。お主の乳はそれ以上大きくならんぞ。断言しても良いくらいさ。だが、安心するがよい。世の中には超ド貧乳好みの男もおるでな。ワハハッ』
「くっ…」
「プーッ、クスクスクス」
小声で笑うリースをギロッと睨むが、当の彼女はツーンと知らんぷり。フェーリスはギリギリと歯ぎしりし、フィーアたちはため息をついて呆れる。
(私たち、一体何をしてるのでしょうか…。試練と言うより性癖を暴露されて辱めを受けてるだけではないかしら)
両手を広げ、高笑いするエドモンズ三世と何かを一生懸命メモするミュラー皇太子を見て、フィーアは自分達はユウキに会いに来たはずだと思い直した。絶対にド変態アンデッドに性癖を晒され、辱めを受けるために来たハズではない。しかし、エドモンズ三世の暴走は止まらない。
『フェーリスの思春期度数は、おっと驚きの30と低いっ! なんじゃお主、恋とかしとらんのか? つまらん人生を送っとるのう』
「余計なお世話よ!」
『まあ、そのお色気マイナス1.0の貧乳では仕方ないか。プーックスクスクス』
「ギリッ…」
『でもまあ、お主のユウキに対する思いは確認できた。ずっと心の奥で温めて来たのだな。ユウキに会ったら素直にぶつけてくれると有難い。ユウキも喜ぶじゃろうて。ミュラーよ、もうよい。こ奴らを2階のヴォルフの許に連れて行くがよい。最後の小娘にはヴォルフが試練を与えるだろうて。カーッハハハハハ!』
「骸骨おじさん…。それじゃ通してくれるの」(フェーリス)
『誰が骸骨おじさんじゃ!? ほれ、さっさと行くがよい』
エドモンズ三世の試練と言う名の性癖暴露大会は終わった。ミュラーに連れられて部屋を出るフィーアたちだったが、フェーリスは何となく気になって、部屋の中を振り返った。しかし、そこにはもうエドモンズ三世の姿はなかった。
(意外といい人だったのかな。まさかね…)
「フェーリス様、どうかされました?」
「えっ? ううん、何でもない」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よかったな、お前ら。エドモンズのオッサンに認められて。オレ的にも夜のプレイの同志ができて大満足だ」
「私的にはユウキさんがそんなアブノーマルプレイをしている事にドン引きなのですけど」
「まあまあ、そう言うなって。ユウキちゃんはオレにとって可愛い嫁だし、意外と夜も積極的なんだぞ。おっと、到着したな。2階の試練の場はここだ。じゃ、入ろうか」
(ミュラー様って何というか、大らかな人ですね。人間的にも出来た方みたいですし。ユウキさんは素敵な出会いをなされたんですね。よかった…)
ガチャリと戸を開けて中に入ったフィーアたちは、またもびっくり驚いて言葉を失い、立ち尽くした。
「な、な、なんじゃこりゃーっ!!」
「バケモノ…」
「あわわ、あわわ…」
「デュラハン…ですよね。アレ」
びっくり顔のリースの視線の先には部屋の中だというのに、巨大な漆黒の首無し馬に跨った首無しの騎士がいたのだった。左腕に抱えられた兜のから覗く真っ赤な目がフィーアたちを悠然と睥睨している。首無し馬の右脇には大型の両手剣ツヴァイヘンダーが括り着けてある。フィーアたちが呆然と見ていると、突然デュラハンが名乗りを上げた。
『吾輩はヴォルフ! ラファール国第十三代国王、無敗の常勝将軍「ラファールの獅子」と呼ばれた漢! そして、吾輩を愛する嫁を探し求める永遠の旅人』
「はあ…」
「なんか、一気に緊迫感が」
「無くなったわね」
「イヤな予感がします」
『ちなみに、好みはというとだな、背は小さく、ちょっと小悪魔っぽい系の顔立ちをしたロリ顔美少女で、髪はショート。胸は当然巨乳で、アソコはツルツルでなきゃいかん。簡単に言えばだな、そう、所謂「ロリ巨乳」だ。そこの金髪の女と巨乳女はロリではないから対象外だな。そこにいるド貧乳の娘は論外、アウトオブ眼中だ!』
「あっそ、生まれて初めて貧乳で良かったと思ったわ」
「ワイトキングといい、ユウキさんの眷属って変態しかいないのかしら」
『ククッ、強がる顔が哀れよのう。貧乳に生まれた事を後悔するがよい』
「…何だと貴様、よく聞け! 女の魅力は乳の大きさではないのよ。胸が小さいのも個性のひとつ。萌えの一種! 貧乳は垂れないし、感度もいい…ハズ。だから私は貧乳に誇りを持つ。この信念に揺るぎはないの!」
『はいはい。わかった、わかった』
「ぐぬぬ…。耐えろ、折れるな私のプライド…」
勝ち誇ったように高笑いするヴォルフだったが、ふとリースに目を止めると『ぬうっ!』と唸って馬から降りた。
ガシャンガシャンと金属鎧の擦れあう音を立てて、リースの前に立ったヴォルフはじっと彼女を見つめると恭しく膝を折って礼をする。
『おおっ、何と麗しいロリ成分の入った小悪魔系の顔をした美少女! 貴殿、名は何と申す。ぜひ吾輩に教えてくれはしまいか』
「リ、リースです」
『ぬおおおーっ! 何と可愛いのだ! 背は小さく、しかも胸はしっかり膨らみかけて巨乳の素質十分でアソコもパイパン! ラピスちゃんに振られて諦めていた夢の「ロリ巨乳美少女」がいまここに降臨した!』
「ヴォルフは全然ブレねーなー」(ミュラー)
『なんてったって、エドモンズさんと2人で「変態の双璧」と呼ばれてますから。女の子の尻ばかり追っかけてる変態の中の変態です!』(アルフィーネ)
「アルフィーネさん、意外と仲間に厳しいですわね」
『ささ、我が手を取るのだ。我が嫁よ』
「………。えいっ!」
『ギャアアアアアッ!!』
リースは指をV字にして、ヴォルフの兜の目の部分にグサリと突き刺した。途端に膝立ちになり、首上の顔の部分に手を当てるポーズを取るヴォルフ(プラトーンのあのシーンを想像してください)。ゴトンと音を立てて床に転がった兜から大きな悲鳴が上がる。「死の案内人」と呼ばれる最強のアンデッド「デュラハン」(胴体)が今度はうつ伏せになってケツを突き上げてピクピクと痙攣している。一撃でヴォルフを撃沈したリースは兜をガンと踏みつけて高々と人差し指を掲げて吠えた。
「ウリィイイイイイッ!!」
「リースちゃんて、あんな子だったっけ?」
「いやぁ~、どうだったかなぁ~」
「ドン引きね」
「終わったか?」
「何気に冷静ですね、ミュラー様」
「こんなのは日常茶飯事だからな」
「異常すぎます。てか、帝国に抱いてたイメージが粉々ですわ」
「まあ、いいじゃねえか。ここの試練も合格だ」
「試練の要素、どこにありました?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ミュラーの案内でフィーアたちはいよいよ3階のユウキが待つという部屋の前にやってきた。この扉の向こうにユウキが…、大切なのに悲しい別れをした親友が生きて待っていてくれる。その事を思うとフィーア、ユーリカ、フェーリスとついでにリースの心は高鳴るのであった。
「この向こうにユウキさんが…」
扉の取っ手に手を掛けようとしたフィーアをミュラーが止めた。
「ちょっと待て」
「な、何故止めるのです。私たちはユウキさんに早くお会いしたいのです。試練は終わりました、ユウキさんに会うのを止める事は出来ないはずです」
「何も会わせないと言うんじゃねえよ。オレはお前たちが気に入ったしな。さすがユウキちゃんの友人と思ったぜ。ただ…」
「ただ? なんです?」
「ユーリカ」
「えっ、はい」
「この中にはユウキちゃんだけじゃねえ。ユーリカ、お前が会いたいと願うもう1人の女性がいる。そして、そいつはお前に謝りたいと願っている。受け入れるかどうかはお前次第だが…」
「カッ、カロリーナがいるんですか!? ほ、本当に?」
「ああ。会いてぇか?」
「もちろん、もちろんです! 私もカロリーナに会いたい。会って謝りたい!」
「そうか、じゃ開けるぜ」
ミュラーはゆっくりと扉を開けた。フィーア、ユーリカ、フェーリス、リースの4人は弾けたように中に入った。4人は部屋の奥、風で揺れるレースのカーテンの手前に佇む2人の姿を見た。神秘的な黒い髪と黒い瞳をした美しい女性とやや癖のある金髪を後ろで束ね、体の前に垂らした優しい笑顔の女性。それは、夢にまで見た懐かしい友人の姿だった。
「ユウキさん!」
「カロリーナ!」
4人の目があっという間に涙で潤む。ユウキとカロリーナの目にも涙が浮かんでいる。フィーアもユーリカもフェーリスも溢れる涙を拭いもせず、ユウキとカロリーナの胸に飛び込み、しっかりとお互いの温もりを確かめ合ったのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、妻たちが懐かしい友人と再会を果たしていた頃、レウルスとモーガンはヴァルターの案内でオーガの里を訪れ、特上のオレンジ豚を堪能し、美味い酒を飲み、大いに満足したのであった。また、里で美しい巨乳のオーグリスたちに歓待を受けてデレデレと目尻を下げたのだったが、後日、これが何故か妻たちにバレてしまい、3人は再教育と言う名の激しい折檻を受ける羽目になったのであった。
お・し・ま・い
番外編9はこれで終了です。書いてる早々フェーリスとリースが変な子になり、どうしても出したかったのでエドモンズ三世を出演させたら案の定話がgdgdに…。でもまあ、ロディニアでの友人たちと再会できてユウキの心は救われたと思います。彼女たちが再会してどんな話をしたかは、皆さんのご想像にお任せします。
では、少し先になりますが、次回の番外編もお楽しみに。




